アメリカの商標制度「使用宣誓オーディットプログラム」とは?回避方法も徹底解説!

前回の記事ではアメリカにおける使用宣誓の基本的な制度についてお伝えをしました。
今回はオーディットプログラムに焦点を当てて、より詳しくアメリカの使用宣誓についてお伝えしたいと思います。

オーディットプログラムとは?

使用証拠が提出されていない商品・役務や疑義のある証拠について、審査官が追加の使用証拠を提出するよう求める局通知をランダムに発行する制度です。
このプログラムは2012年からパイロットプログラムとして試験的に行われており、2017年3月21日の商標規則改正により2017年11月から正式導入がされています。

オーディットプログラムの対象は?

登録から5年目や更新時の使用宣誓を提出する商標すべてですが、特にマドプロ経由や日本の登録商標を基礎とした出願については登録前に使用証拠を提出していないため、局通知が発行される可能性が高いようです。
また、ランダムとはいえ、特に以下の商標が対象となります。

(1)1区分につき4個以上の商品・役務を指定している場合
(2)2区分以上を指定し、2個以上の商品・役務を指定している場合

アメリカではこの個数の数え方が非常に厄介です。
例えばアメリカでよくあるnamelyを使った以下の表現では指定商品が何個含まれているでしょうか。

25類:Clothing, namely shirts, shorts, pants, coats and hats

正解は「shirts」、「shorts」、「pants」、「coats」、「hats」の5つです。
厳密な使用主義を採用しているアメリカでは指定商品・役務の考え方も細分化されています。出願時に指定商品・役務について明確化を求める局通知も多数発生しますね。
単純にカンマまたはセミコロンのみでは指定商品・役務を区切ることができません。指定商品・役務を文章として正確に読み込み、分解して、その1つ1つに対して使用証拠を提出する必要があります。

さらに、当然のことながら使用証拠として適さない証拠が提出された場合にもオーディットプログラムの対象となります。
例えば提出した証拠から対象商標が確認できない、何に使用しているのか確認できない証拠などです。

オーディットプログラムの回避方法

答えは簡単です。

「使用宣誓時に使用していない商品・役務は削除して、1つ1つの商品・役務に対して使用証拠を提出すること」です。
使用「宣誓」ですから、仮にオーディットプログラムに引っかからなくても、虚偽の宣誓をした場合には罰せられる可能性があります。
そういった観点からも使用宣誓は使用している商品・役務のみにすべきです。
なお、同じ内容の商品・役務が2つの異なる表現で登録されている場合や、1つの証拠で複数の商品・役務の使用を証明できる場合がありますが、その場合には、1つの使用証拠でかまいません。

オーディットプログラムの趣旨

なぜこのオーディットプログラムが導入されるに至ったのか、それはアメリカが厳密な使用主義を採用しているからにほかなりません。
商標の権利は、商取引上で使用されている、または特別な事情により一時的に使用ができない商品・役務に対してのみ維持されるものであるとオーディットプログラムの趣旨に記載されています。
厳しいように思いますが、「商標は本当に使用したい人が持つべきだ」という原理に基づいており、ある意味、平等な考えであると思います。
ここ最近では某模倣品大国から出願された商標について、偽造した使用証拠が提出される事例が多発しており、そういった背景からもこの制度が強化されていると考えます。
デジタル加工が誰でも簡単にできるようになっていることも背景にあるのでしょう。
最近さらに厳格化されていることについてはまた次回お伝えします。

もしもオーディットプログラムの対象になったら

オーディットプログラムの対象となり、審査官から局通知が発行された場合には局通知発行から6か月以内または法定期限日(グレースピリオドを含まない)のどちらか遅いほうが応答期限日となります。
応答期限までに以下いずれかの方針を選び、何らかの対応をする必要があります。

①追加の使用証拠を提出する
②使用証拠の提出ができない場合には指定商品・役務を削除する

なお、この局通知に対応できない場合には商標権自体が取り消されますのでご注意ください。

次回は最近追加された使用証拠の要件や使用証拠の適否についてお伝えします。

       

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〈ライタープロフィール〉
坂本 佳織 (さかもと かおり)
GMOブライツコンサルティング株式会社

商標部

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