こんにちは!申思です。
少子高齢社会で日本の消費が減少していく中、成長著しい中国へECを活用して商品販売を検討されていませんか?
その際、中国でも商標を登録しておくと、安心して事業展開できます。
今回は、中国で商標登録を検討されている方に向けて、商標出願の拒絶事例をご紹介し、ネーミングを考える際に考慮すべきポイントを解説します。
中国で商標出願が拒絶される原因
中国では、商標出願が拒絶される原因として主に以下の3つが挙げられます。
1. 先行商標と類似性が高い
2. 識別力を欠く
3. 禁止条項に違反(商標法第10条)
2. の【識別力を欠く】という原因は、大手企業でも陥り安い落し穴であり、中国国内出願の約70%が当該問題によって拒絶されているそうです。
今回は、事例とともに商標出願審査を通すポイントをお伝えします。
事例1: アジアNO.1「テンセント(騰訊)」の場合
中国最大のSNSプラットフォームであるWechatは、「ミニプログラム(小程序)」というインストール不要の軽量アプリを2017年1月にリリースをしました。約200万のミニプログラムが開発され、ゲームやツールなど、200を超える多様なカテゴリが存在しています。2018年には4億ユーザーを突破しており、大ヒットをしています。
しかしながら、商標登録に関しては順調とは言えない状況のようです。
開発者である騰訊(テンセント)社は「ミニプログラム(小程序)」に対して、全45区分に対して商標出願を行っていますが、いまだに一部の区分が出願拒絶されています。
騰訊(テンセント)が出願した商標は、中国語で”ミニプログラム”を意味する「小程序」です。
当該商標の拒絶理由は、「一般の状況下では、ユーザがこの3つの漢字を商標として識別しにくいため、商標の識別力を欠くものである」というものでした。
事例2: 急成長モバイルキャッシングアプリ「ジエベイ(借唄)」の場合
アリババ社の傘下であるアントフィナンシャルが提供する「借唄(ジエベイ)」はわずか3分でプラットホームアプリ内からキャッシングを利用できるサービスです。こちらのサービスは、若年層を取り込み、急成長をしています。
「借唄(ジエベイ)」の文字列は2015年から商標出願されていますが、その殆どが拒絶されています。出願拒絶理由は、テンセント社と同様「識別力を欠く」とされています。
「借唄」は中国語で口語的に使用される言葉で、意味は「借りればいい」を表します。消費者が当該商標からサービスの提供先を識別できないことが拒絶のポイントとなっています。
出典:中国国家知識産権局 中国商標網
同様に、京東社の代表格である「JD」の商標出願も出願が拒絶されています。
出典:中国国家知識産権局 中国商標網
「識別力を欠く」の判断基準と審査を通すためのポイント
「識別力を欠く」の判断基準は、【中国商標法】の第11条に基づいています。
内容:
以下に掲げる標章は、商標として登録することができない。
(一)その商品の単なる普通名称、図形、型番にすぎないもの。
(二)商品の品質、主要原材料、効能、用途、重量、数量及びその他の特徴を直接表示するにすぎないもの。
(三)その他の識別力を欠くもの。
前項に掲げる標章が、使用により識別力を有し、かつ容易に識別可能なものとなった場合には、商標として登録することができる。
この条項に基づき、商標出願審査を通すために、以下2つのポイントが有効と考えられます。
① 商標自体が強い識別力を持つ。
② 宣伝やエビデンスの提出により、「一般的に、ユーザが商品及びサービスの提供先を容易に識別できる」と証明する。
まとめ
エビデンス提出の際には、煩雑な手続きと大量の資料準備が必要となり、労力とコストの投入は避けれません。したがって、ネーミングの際に識別力の強い商標をデザインするのは重要な課題となります。
弊社は、中国に限らず世界のあらゆる国々の商標手続きに対応しております。
グローバル展開をお考えでしたら、是非ご相談ください。
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〈ライタープロフィール〉
申 思(しん し)
GMOブライツコンサルティング株式会社
情報部
2014年に入社。社内のシステム開発や受託開発のディレクターに就き、ベトナムのホーチミンにある開発支社の役員を二年担当して、現在中国の瀋陽に滞在しております。中国の知的財産権に関する情報を収集しながら、勉強中です。