~前回のお話~
https://brandtoday.media/2019/09/25/domain-yuka-series6/
URSで偽サイトの撃退に成功したはずのテラチック株式会社。喜びも束の間、別のドメインで再び侵害サイトが立ち上がってしまいました。
颯希?大変なの!侵害サイトが別のドメインで立ち上がっちゃったよ~!
・・・やっぱり。嫌な予感的中しちゃった。
え!予想してたの?なんで復活してるのこれ?!
URSはホスティング会社や登録者へブランドの不正侵害を訴えて、コンテンツをシャットダウンすることを要求する制度でしょう。この間、お姉ちゃんは侵害サイトは無事にシャットダウンされて、問題は解決したって言ってたけど、その話、続きがあったんだと思う。
どういうこと?
もしかして前回と今回の侵害サイト、コンテンツ一緒じゃない?
え?う、うん。今回も前回もWebサイトの中身は一緒だよ!
やっぱり。たぶんね、terachic.shopとterachic.storeでWebサイトを運用して侵害している人って同一人物じゃないかな。
え?
今回の話の続き、下の図の感じだと思う…。
なんてこと!逃げ得なんて絶対許せないよ!何か手はないの?
この場合、UDRP(ユーディーアールピー)が有効かな!
UDRP?
Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy、略してUDRP。統一ドメイン名紛争処理方針のことだよ。
それってこの間のURSとどう違うの?
URSは結果として得られるものが「コンテンツのシャットダウン」だったでしょう?UDRPの最終目的は、「ドメインの権利奪還」なの。
ドメインの権利を私たちが奪い返すってこと?
そう。UDRPのざっくりとした流れは以下の図の通りだよ。
URSと違って、紛争処理パネリストって人がいるんだね。
うん。パネルによる審理によって裁定が行われるの。
UDRPのメリットはドメインの奪還だけ?
もうひとつ大きな特徴があるよ。申立てが悪意によるものであると裁定が下されたときは、裁定部分が世界知的所有権機関、通称WIPO(ワイポ)に公表されるんだよ。これにより一定の抑止力を期待することができるんだよ。
なるほど。もしUDRPを申請したい場合は何が必要になるの?
UDRPの申請のためにはURSと一緒の3つの要件(※)を満たす必要があるよ!
※3つの要件はこちら
<6話目>緊急事態発生!侵害サイトにどう対応する?https://brandtoday.media/2019/09/25/domain-yuka-series6/
満たすべき条件が一緒なんて、URSとUDRPは似ているんだね。
もともとドメイン侵害の問題って、仲裁や裁判で解決してきたんだけど、膨大な時間や費用がかかっていたから、決して使いやすいものではなかったんだって。だから裁判よりも低予算、短期間、簡便な手続きで行うことができるUDRPが導入されたの。
ふむふむ。UDRPが最初に誕生したんだね。
うん。その後、新gTLDの誕生により侵害が増加するリスクがさらに高まったから、その対策としてURSが採択されたんだよ。URSはUDRPよりもさらに低予算、短期間、簡便な手続きを可能にしたんだよ。
そんな経緯があったんだね!
URS、UDRPどっちを申請するかはドメインの重要度、侵害内容、予算、所要時間、得られる結果などを考えて、判断していくのがいいんじゃないかな。
ありがとう!それじゃ今回も部のみんなに共有をしてどうするか検討してみるよ!
****
颯希、この間はUDRPのことを教えてくれてありがとう!結局UDRPも申請をすることにしたよ。
よかった。無事奪還できるといいね。
うん!うちの会社の売上にも影響する可能性があるし、早く解決しなきゃね!
そうだね。でもお姉ちゃん、今回のような侵害は売上減少だけではなくて、他にも影響を及ぼす可能性あるんだよ。
ん?
第三者の侵害によって、お姉ちゃんの会社の信用度が下がることだってあるんだから。
え?なんで??侵害を受けた側なら、被害者でしょう?どうして会社の信頼度に影響しちゃうの?
今回は、侵害されていることにすぐ気づけたからよかったけど、もし悪用に気づけずに、ずっと侵害されている状態が続いていたとしたら?お客さんはどうしてテラチック株式会社は対応しないんだろう?って不審に思うよね。
…!!
もし侵害サイトが偽物を売っていたら?本物の商品の売上が下がるのももちろん怖いけど、お客さんが知らずに粗悪品を購入してしまったら、クレームになるよね。
確かに…!
もし個人情報やクレジット情報が抜きとるフィッシングサイトが出現したら?テラチック株式会社のではないから関係ないです!とは言えないんじゃないかな。
ひええ~!でも100%侵害を防ぐことってできないでしょう?
残念ながら、完全に防ぐことは難しいよ。だから、企業としてここまで対応していますって自信を持って表明できることが大事なんじゃないかな。侵害をされる前にできること、侵害をされたときにするべきことが適切にできていれば、被害は最小限に抑えられるんじゃないかな。
ふむふむ…
今回の件だけど、侵害されているってなんで分かったんだっけ?
えっとね、Twitterで話題になっていたんだよ。newgenic.shopとnewgenic.storeってうちの会社のものなの?って。
なるほど。じゃあどうしてお姉ちゃんたちはその.shopとstoreが自分たちのものじゃないってどうして分かったの?
それは、わたしたちが今回立ち上げたWebサイトはnewgenic.terachic.comを使用していたからだよ。新規でドメインを取ってないんだもん。第三者が取得したのは明らかでしょ?
ふむふむ…。じゃあさ、terachic.com.cnはどう?この中国のドメインってお姉ちゃんの会社が持っているの?
それは……どうかな?terachicの文字列で中国ならうちが持っているかも。工場もあるし、商品も販売しているし。
じゃあ、terachic.ukはどう?イギリスのドメインだよ。
イギリス!?イギリスは工場はなかったけど、確か商品は売っていたはず…。うちで取ってるかもしれないし、取ってないかもしれない。
お姉ちゃん、まずここがポイントなんだよ!
え?どういうこと?
自分の会社がどんなドメインを持っているのか、分かっていることが大事なんだよ。
どうして自分たちの保有しているドメインを把握しておくことが大事なの?
だって、このWebサイトはテラチック株式会社のですか?ってお客さんから問い合わせがあった場合、解決するスピードが全然違ってくるもの。
そっか!自分たちが保有しているドメインが何かわからない場合、関係している可能性のあるすべての部署に問い合わせしなくちゃいけなくなるんだね。
部署によっては回答のスピードも違ってきそうだよね?
うん、それはかなりありそう。
残念ながら、回答や公表の遅れがネットでの炎上、ユーザ離れ、ブランド毀損に繋がってしまうこともあるんだよ。
そっか…じゃあ早急に確認するためには何が必要なの?
それはずばり、 ホワイトリスト!自社保有ドメインの管理のためには、警戒する必要のない対象の一覧表だよ!
確かにホワイトリストがあれば、チェックがすぐにできるね! 早急なチェックのためにはホワイトリストが必要な理由が理解できたよ。
OK!今日はここまでにしておこう。今回もまとめておいたから、確認しておいてね。
8話目はこちらからチェック
https://brandtoday.media/2019/10/25/domain-yuka-series8/
登場人物は下をチェックしてね!
https://brandtoday.media/2019/08/27/domain-yuka-series-bangaihen/
〈ライタープロフィール〉
千葉 やよい(ちば やよい)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/ドメイン担当
2012年に入社。 BRANTECT、商標コンサルタントを担当したのちドメインコンサルタントに就きました。ガイドラインや、ドメイン関連記事を作成しています。ドメインについては現在進行形で勉強中!初心者様にも分かりやすい記事作りを心がけています。趣味はゲーム、アニメ、散歩。