いいネーミングってなんだろう?(後編)

こんにちは「nomyne byGMO」の開発を担当しているGMOブライツコンサルテイングの山下です。

nomyne byGMO」はネーミング検索エンジンです。

会社名や商品名・サービス名など、ネーミングをするときに「似た名前はないかどうか?」を日本の会社名・日本の商標・米国の商標などから検索できるサービスです。

このサービスの運営を開始して1年近くがたちますが、「よいネーミングをどうしてつけたらいいのか?」というご質問を少なからず受けています。

サービスとしては「ネーミング検索」でありまして、そもそものネーミングのアイデア自体を生み出すツールではありません。

なので「よいネーミングをどうしてつけたらいいのか?」というご質問にはなかなかお答えするのが難しかったのですが、日夜「名前」とにらめっこしながらシステムを開発している経験から、「ネーミングってこうなのではないか」と思うところを門外漢ながら、前後編の二回にわけて、書かせていただこうと思います。

今回は後編になります。
(前編はこちら)

ネーミングを分析する

つまるところ、「かっこいい製品をだして」「それが世界中で売れて」「お金が儲かって」「従業員がすごくいい環境でスタイリッシュで働く」みたいな会社が「よいブランド」と思われがちなのです。

しかし、これは「身も蓋もない」議論であり、「結果として成功した製品=よいネーミング」と言い切ってしまうと夢がありません。

もちろん、結果としてのビジネスは重要ですが、やはりネーミングの時点でもっと考えられることはないのか?ということで、ネーミングを「普遍的↔限定的」「機能的↔印象的」で、世界的に有名なブランド、日本のベンチャーブランドをプロットしてみました。

このプロットの四象限別(ゾーン)に、分析をすすめてみましょう。

①機能的かつ普遍的な音

機能的というのは、その名前自体が何らかの機能や品質を明示的に、もしくは暗に示唆しているということです。

また、普遍的な音とは、言語を問わず認識&発音しやすいということです。

昨今で代表的なものでは「box」「LINE」などです。

古くには「Microsoft」があり、日本の最近のベンチャーでは「PreferedNetworks」「MoneyForward」がここに該当します。

このゾーンの特徴は、グローバルにサービスの認知促進がしやすいということです。

また、文字列としても「短い」もしくは「入力しやすい」「覚えやすい」という特徴があります。

従って、インターネット時代の速攻型ブランドとしては、いきなりになりますが、このゾーンを積極的に狙うべきだと思います。

ただ、普通名詞をつなげただけだと音として冗長になるリスクがあります。

②印象的かつ普遍的な音

印象的というのは、その名前自体が何らかの機能や品質を明示的にも、暗にも示唆していないということです。

昨今で代表的なものでは「Uber」「Slack」などです。

古くには「SONY」「Apple」「NIKE」があり、日本の最近のベンチャーでは、あまり見受けられません。

このゾーンの特徴としては、強い商品力がなければ、「ただの名前」で終わってしまうことです。音として普遍的であるということは、ある意味「特徴がない」というデメリットがあります。ただ、このゾーンでブランド力を獲得し始めると、「非常に強いブランド構築」が可能になります。

③印象的かつ限定的な音

限定的な音、とは今や世界的な言語である英語以外の響きを持っているか、母音が多いなど母国語話者以外には読みづらいという特徴を持つものです。

昨今で代表的なものでは「SAMSUNG」「Google」。

古くには「HONDA」「CocaCola」「Rakuten」などが入ります。

このゾーンの特徴としては、このタイプのネーミングはある意味とてもクラシカルであるということです。

「SAMSUNG」や「HONDA」などは、非常にドメスティックな響きを持っていますが、世界的な認知度を得たことにより、普遍性を獲得しました。

また多くのファッションブランド「ルイヴィトン」や「マクドナルド」なども、このゾーンに入ります。いわばブランド界の「王道」と呼べるかもしれません。

ただ、デメリットとしては特徴的な音のために、普遍性を獲得しにくいこと。固有名詞の音として認識されますので、いったん悪いイメージが付けば言葉が一人歩きしてしまいかねません。

最近の例では「GITAI」などがそうです。有名なSFマンガ「攻殻機動隊」を知っている人にはピンときますが、そうでない人にはおそらく意味がわからないでしょう。

またグローバル展開も難しく、今やもっとも玄人好みするネーミングと言えるかもしれません。

④印象的かつ機能的な音

最後のゾーンは、「ローカル速攻型」です。

「いきなりステーキ」「お名前.com」など、ほぼローカルの人にしか判別不可能な名前です。

このゾーンの特徴はいわずもがな、地域やコミュニティを限定して、速攻で認知度を広げるための作戦です。

ただし、グローバル展開が非常に難しいというデメリットもあります。

グローバルをあまり意識しないビジネスでは、十分にアリのネーミング戦略だと思います。

ブランドのドラマツルギー

ブランドはよく「物語」だと言われますが、ネーミング=名前自体も同様に「物語」を持っています。

このゾーン分析で言えば、ゾーンを越えていく力を「名前の物語」として捉えられることができるかもしれません。

たとえば「HONDA」。東南アジアではスクーターのことを「HONDA」と言います。

有名なところで言えば「Google」。検索することを「ググる」と言います。

このように、非常に普遍性・機能性の低い名前が、普遍性と機能性を獲得する「ネーミング出世物語」は、消費者にとっても、またそこに働く社員にとっても非常にわかりやすい「ドラマ」になるかもしれません。

個人的には「GITAI」に実は期待しています。上記のとおり、非常に限定的なコミュニティにしか響かないネーミングですが、いつの日かこの名前が「宇宙空間ロボット」を指す普遍名詞になれば、ものすごいブランドのドラマとして語り継がれるでしょう。

【補足】音について

文字列の普遍性を考える上では、文字列の短さももちろんですが、音の短さにも十分留意すう必要があると思います。

厳密な音韻論ではないのですが、英語発音での2音節がベストで、4音節になると相当難しいということで、ネーミングの参考にしてもらえればと思います。

名前英語的音節分解音節数備考
Facebook【フェイス】【ブック】2日本語では【フェ】【イ】【ス】【ブッ】【ク】と5音節だが、英語では違う。
PreferedNetworks【プリ】【ファード】【ネット】【ワークス】4日本語でも長いが、英語でも長い。
GITAI【ギ】【タイ】2十分に普遍性を獲得する余地あり
mercari【メ】【ル】【カ】【リ】もしくは【メー】【キャリ】4日本語では短く感じるが、英語では冗長になってしまう場合がある。

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