突然ですが、商品名=ブランドなのでしょうか?それとも商品名は、ブランドに非ずなのでしょうか?なかなかパッと答えられないですよね。
イメージとして、ブランドという言葉は、商品名よりももっと優雅で、人から憧れを持たれるような存在という感じでしょうか?これはおそらく「ブランド」という言葉の登場回数が多い高級ファッションブランドのイメージがそうさせるのかもしれません。
でも、コーポレートブランドとかファッション業界以外にもブランドという言葉を見聞きすることが多いわけで、業界特殊な言葉ではありません。
それでは経営戦略上も重要と言われている「ブランド」とはどういうものなのでしょうか?5つテーマでざっくりその概念をつかみましょう!
商品名=ブランド?
答えは、✖です。図で表すと、こんな感じでしょうか。
つまり、商品名のすべてがブランドではありません。
ルイヴィトンはブランドです。ソニーもブランドです。一方で、IKEAの各商品に付けられている名前は、ブランドではありません。デルコンピューターがラインナップをカテゴライズするめにつけている名前もブランドではありません。
何が基準なのでしょうか?
ブランドとは、「記号 × ブランディング」と定義されます。これに当てはまらないものはブランドではありません。
これだけでは分からないので、更に説明をします。
記号というのは、企業、商品、サービス等を定義するために用いられるアルファベットであったり、日本語であったり、マークであったりを指します。
続いて、ブランディングとは、記号にパーソナリティやストーリー等を吹き込み、消費者に記号を認知させ、記号と消費者との間に感情的なつながり(絆)を作りだすことです。その絆が深まることで信頼が生まれ、あのブランドを纏いたい、あのブランドでなくてはならないという信頼につながっていきます。
この二つが掛け合わさることによって、ブランドは誕生することになります。
具体的に考えてみましょう!
ルイヴィトンは感情的なつながりを作りだしているといえます。高級ブランドを持てる喜び、優越感、それだけでなく、時代に流されず長く使える商品品質。こうした信頼がまさに高級ファッションブランドと言われる所以です。
一方、IKEAの商品名はどうでしょうか?ソファーの商品名ランズクローナに何か感情的なものは発生するでしょうか?おそらくないと思います。ほとんどの方がIKEAが提供しているソファーというイメージであり、IKEAとの感情的なつながりはあるにしても、ソファーと直接的な感情はありません。コンセプトやストーリーがソファーについて発信がされているわけでもないからです。ということで、ランズクローナは商品名であり、ブランドではありません。
商品名=ブランドではないってこと少し分かりましたか?
登録商標=ブランド?
先ほどの例が分かると理解がしやすいと思います。商標取得しているからすべてブランドではありません。
ブランドの起源が一説では焼き印をして、自身と他者の所有を区別するというところから始まっているため、商標の機能である自他識別機能とリンクしているのかもしれませんが、ブランドは起源時よりもその概念が発展していますので、現在においては、すべての登録商標がブランドではない状況にあります。
ブランドはB2Cにだけ存在するのか?
答えは✖です。B2Bにも存在します。B2Cよりも実用性や合理性を基に購買がされるが故に、ブランドが入り込む余地は幾分狭いですが、存在します。
ちなみにこういった調査結果があります。下記googleの調査によると、企業担当が購買にあたって、商品の差をしっかりと見極めて購買することができているか?という質問に対する結果です。
出典:From promotion to Emotion
実に86%の方が購買にあたって、商品の差の見極めをしていないことが分かります。結局のところ、企業ブランドによる信頼などによって購買を行っているという事実です。
また、この調査ではこんな結果もあります。感情的なつながりは、B2BブランドのほうがB2Cブランドより高いという結果です。
出典:From promotion to Emotion
B2B企業だからブランドは不要という考え方は今や昔ということですね。2つの調査結果から、「良いものを作れば必ずしも売れる」ではないことも分かってきます。
ブランドは大量につくればいいのか?
ブランドが溢れていては、受け取るユーザーも感情のつながりを作りにくいものです。一つのブランドを浸透させるのに10年はかかるとも言われているので、体系立てて戦略的な投資をしていく必要があります。
そのため、次のような体系図を頭に浮かべながら、どういったブランド体系が自社に似合うのかを確認する必要があります。
どんなときにブランドは作るのか?
はじめにすべての商品がブランドに非ずと書きました。商品を開発すると必ずネーミングをしたくなるものです。開発者にとって非常に思い入れがあるから当然です。
しかしながら、過去の商品とあまり差がなかったり、マーケットのカニバリが発生したり、技術的差があまりなかったりする場合には、新しいブランドを立ち上げるよりも、既存のブランドへの統合やリブランディングを行うことのほうが、ブランディングの効率性も投資効果もあると考えます。
各社において、ブランドを考案するか否かのフロー図を整理し運用することで、商品名なのか、ブランドなのか分からないようなネーミングが乱立しないようにしていくことが重要です。
また、シチュエーションに合わせてそのネーミングの難易度をコントロールすることも非常に重要です。
以上5つの観点からブランドとは何かを確認してみました。
知財の方でなぜこんなネーミングをわざわざつけるの?とか疑問を持ちながら調査出願をしている人は多いのではないでしょうか?皆さんで一度ブランドとは何か?を確認し、ネーミングをしていくことがスマートなブランド構築につながるかもしれません。
著:営業本部 寺地 裕樹