新型コロナウイルスの影響により、テイクアウトやデリバリーを始めた飲食店様は多いかと思います。
お弁当販売やドリンクテイクアウトなど、今まではやっていなかった新たなサービスを始めるということは、商標の範囲についても見直しが必要である可能性があるということ。
「いま持っている商標で権利は足りているだろうか?」「新たに権利化する必要はあるのか」
などとご不安に感じている飲食店様向けに、今回は飲食店業界において必要となりうる区分についてご紹介していきたいと思います。
店内での飲食物提供は43類
ではデリバリー弁当は何類?テイクアウトは何類?
世の中のすべての商品やサービスは、45の商標区分に分類されます。その中で飲食店経営に関わるメイン区分は、おおよそこの辺りになります。
上記区分表を、牛丼屋さんを例としてご説明します。
- 店内での牛丼の提供 43類
- 牛丼のテイクアウト 30類
- 牛皿のテイクアウト・牛丼の具などの冷凍食品 29類
- フランチャイズ展開 35類
- 持ち帰り用のオリジナルドリンク(アルコール除く) 32類
このように提供するサービスや商品内容によって、必要な区分が変わってきます。特に29類と30類は食べ物に関する商品区分であり、近しい分類なので注意が必要です。
さて話をコロナショックによりデリバリーなどを始めた飲食店様に戻します。
多くの店舗が実施し始めているデリバリー弁当。これは本来店内で提供する商品を家まで届けるサービスのため、店内提供に付随すると考えられ43類に該当します。これは自分で宅配しても、Uber Eatsなどに登録して配達してもらっても同様です。
では飲食店がお弁当を作り販売するケースはどうでしょうか。
この場合はテイクアウトになり、29類や30類といった商品商標が必要になってきます。先にもお伝えしたように、販売する商品によって必要区分が変わってきますので、自身の販売している商品が何類に該当するか一度確認いただくことをお勧めいたします。
ECサイトで商品を販売する場合の必要区分は?
最近では収益を増やすため、飲食店のEC化という動きも出てきております。
調理済の惣菜や、もつ鍋セットなどを真空パックに入れ「カラーミ―ショップ」や「BASE」などといった、ネットショップを作れるサイトに登録し、日本各地に販売をするという方法です。
この場合は個別の商品販売になりますので、43類ではカバーされず、販売する商品内容にあった商品区分の商標を権利化していく必要があります。
例えば「カラーミ―ショップ」内にあるチキン販売サイト。
肉の販売のみを行っておりますので、このような場合は、29類の権利化をしていきます。
立ち上げたサイト内で、何をどのように販売するかによって必要区分が異なってきますので、サイト立ち上げ時、そして販売商品を増やすごとに権利の見直しをしていく必要があります。
レシピを有料で販売する場合の必要区分は?
他には飲食店がレシピを有料で販売する、という動きも出てきております。この場合には何類を権利化したらいいのでしょうか。ここでポイントになってくるのは、なんのレシピを販売するかではなく、どのようにレシピを販売するか、になります。
例えばスーパーなどで見かける、食材近くに置いてある「レシピカード」。これは一般の買い物客には無償配布ですが、飲食店側がスーパーへ有料で販売しているため16類(料理のレシピを記載したカード状の印刷物)に該当します。
一方ネットにてレシピを有償公開する場合、これは43類に該当します。
このように、どのような販売方法をとるかによって必要区分が変わってくるため、注意が必要です。
商標を権利化しないと、自分たちのブランド名を独占できないだけではなく、他社の権利を侵害してしまう、というリスクもあります。
新たなサービスを開始する際には、今回の必要区分のことを思い出していただき、自社の権利範囲の見直しをしていただければと思います。
「自分たちのサービスだったら何類が必要になるのだろうか」「ロゴと文字があるのだがどのように権利化すればいいのだろうか」など気になる点がございましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。
〈ライタープロフィール〉
村上 加苗 (むらかみ かなえ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業部/関西営業アシスタント
2011年入社。営業マンとして6年ほど勤務した後、出産を機に営業アシスタントへと転向。現在は年間300以上のブランド調査をしています。侵害者目線からの商標、ドメインなどといった侵害発見を得意としています。趣味はお酒、ダイビング、漫画。