海外ブランドをネットで購入しようとしたとき、「これって本物だよね?」と不安になった経験はありませんか?
海外ブランドが日本に入ってくる場合、大きくわけて2つのパターンがあります。正規販売代理店を通じて販売される「国内正規品」と、代理店を通さずに海外から直接購入や輸入をした「並行輸入品」です。正規ルートで販売されているものは間違いなく本物ですが、並行輸入品の場合、正規品と模倣品が入り混じっているのが実情。
大幅値引きをされた商品を「セールになっている!」「アウトレット品だ」と正規販売代理店以外から購入し、実際にふたを開けてみたら偽物の粗悪品だった、という被害の声もよく耳にします。
今回は海外ブランドがどのようにマネをされているのか、日本でも大人気の高級ダウンブランド「カナダグース」を例にみていきたいと思います。
カナダグースは防寒性の高い商品を製造する高級アパレル。もともとは南極や北極で活動する冒険家や観測隊用の衣料を提供していました。日本でその人気に火が付いたのは2012年頃。現在では定番の人気モデルは、秋口の早い段階から品薄状態になっています。
人気高級ブランドだけに模倣品が多いのも事実。ネットでは「カナダグース 偽物」や「カナダグース 偽物見分けかた」などといった記事も多数目にします。
ではカナダグースの偽物はどのように出回っているのか、模倣品の大半を製造しているといっても過言ではない中国を例に見ていきましょう。
ブランド権利者と侵害者。火花を散らす商標周りの攻防戦!
直近でも多数のハウスマーク商標が25類(被服の区分)で冒認出願されていました。ここで2段併記されている「加拿大鹅」はカナダグースの漢字です(「加拿大」=カナダ 「鹅」=グース)
25類のメイン区分は本家ががっちり押さえているに決まっているのに、めげずに出してみる侵害者たちが多数。
これはブランド名に「羽绒」つまり「羽毛」とつけた商標。ちょっとだけ工夫をしています。
このほかにも、過去多数の「canadagoose」の第三者商標が出願され、そして拒絶されていました。カナダグース側もしっかり監視をし、異議をかけているようです。
しかしどうにかして権利をとりたい侵害者はあの手この手で攻めてこようとします。
漢字の順番を入れ替えてみたり
鹅(ガチョウ)を雁(野生のガチョウ)にしてみたり。
中にはこのような商標も直近で出願されていました。
直近すぎて、まだ商標の詳細データを見ることができないのですが、「加拿大鹅远征」で25類で出願されています。なぜだろう、と「远征」(遠征)を調べてみると……
なんと、ありました。カナダグースの商品の中に「expedition」つまり「遠征」という名前がついたものが。
英語で表せば、「canada goose expedition」。審査でどうなるかわかりませんが、絶対に第三者に権利化されたくない商標ですね。
このようにメイン区分周りでばっちばちの火花を散らした攻防戦が行われているのがおわかりいただけるかと思います。
そうくるか!中国侵害者たちの模倣品戦略
次に中国ではどのような模倣品が出回っているのか見てみましょう。
以下にあげるのは、中国ショッピングサイトアリババにて、「加拿大鹅」でヒットする商品たちです。
タイトルには「カナダグース」とは入っていませんが、ブランドを連想させるような漢字を使用し、先ほど第三者商標でご紹介した「expedition」という商品名を使用しているのがわかります。
カナダグースの一番の特徴であるロゴを拡大してみてみると…
モザイクが……入っています。これは怪しいですね。
ちなみに価格は12,000円程度。本物の10分の1程度です。
出品タイトルは「カナダでとても有名なダウン」的な文言が入っています。そしてヘッダー部分にカナダグースのロゴを使用したQRコード。これはもう、明らかに意識をしていますよね。
大量に買えば買うほど安くなる価格設定になっており、6,000個まとめ買いすれば1枚あたり1,500円程度で購入できます、とされています。
ちなみにロゴを拡大するとこんな感じです。真っ白……
他の画像のロゴはカナダ大陸が分断されてしまっています……
そして商品紹介の動画をみると
女性がミシンで一枚ずつ作っている姿が映し出されていました。
お次はこちら。商品のロゴにご注目ください。
堂々とさらしているのですが、もはや「canada goose」ですらない!「fassion class」となっています。
最後はこちら。こちらもロゴを拡大してみましょう。
ん……?「snow master」??
アリババ上の出品情報を見てみると
「品牌 雪地主人(snow master」)となっていました。
気になって商標データベースを調べてみると
やはりありました。独自の権利まで取得して模倣してくる第三者。その本気、自社ブランド立ち上げにでも使ってほしいものです。
このようにカナダグースを真似た商品が大量にショッピングサイト上には出回っていました。このような明らかな偽物は購入時に見分けがつくとは思いますが、ショッピングサイト上の画像には正規品画像を使用し、実際には模倣品を送ってくるというケースもあるので注意が必要です。
ちなみに「canada goose」でのアリババ検索結果は37件。「加拿大鹅」での検索結果は1,165件。「canada goose」ではブランド権者がしっかりと模倣品対策を行っていることがわかりますが、漢字名では上記のように様々な変化球で出品してきているため、手を焼いているであろうことが想像できるかと思います。
模倣品が出たときはドメインにもご注意を!
最後にカナダグースのドメイン周りを少しみてみましょう。模倣品が出回っている場合、往々にしてドメイン侵害をされているケースがあります。
下記サイトが正規代理店かそれとも第三者かはわかりませんが、「カナダグースのアウトレット店」を名乗るサイトがいくつも存在していました。
いかがだったでしょうか。
少し見てみただけでも、多くの侵害者たちがあの手この手でカナダグースの偽物を販売しようとしているのがおわかりいただけたかと思います。
お金をためて念願の海外ブランド品を購入したにも関わらず、手元に届いたのが偽物だった時の悲しさは計り知れません。
やはり正規販売代理店で購入いただくのが一番安心かと思います。
模倣品でお悩みの企業様。1つ模倣品が出てきた場合、その裏には商標権侵害やドメイン侵害など様々な権利侵害が潜んでいる可能性があります。お困りの際にはぜひ一度ご相談ください!
またこんなブランドを調べてほしい、などといったリクエストがあれば是非コメント欄にお願いいたします。
〈ライタープロフィール〉
村上 加苗 (むらかみ かなえ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業部/関西営業アシスタント
2011年入社。営業マンとして6年ほど勤務した後、出産を機に営業アシスタントへと転向。現在は年間300以上のブランド調査をしています。侵害者目線からの商標、ドメインなどといった侵害発見を得意としています。趣味はお酒、ダイビング、漫画。