メタバース・NFTの盛り上がりをドメインから考察。NFTマーケットプレイスのブランド権侵害の実態とは?

前回特集をした『メタバース・NFTの興隆にみる商標上の対応の必要性とは?』では、メタバースやNFTがどのようなものか?と商標が実際どのように出願がされているかを具体的にお伝えしました。

今回は第二弾で、ドメインネームの側面から盛り上がりを確認し、実際に出品がされているNFTマーケットでのブランド侵害の実例と侵害対応などを確認していくことができればと思います。

メタバース・NFTを含むドメインの推移

ワールドカップやオリンピックなど世界的な祭典が行われる時には、それに関連する文字列を含んだドメイン登録が増えるという流れがありますが、今回のトレンドキーワードについてはどのような状況なのでしょうか?

以下に掲載した表は、『meta』を含む文字列のドメイン登録推移です。

2021年10月28日にfacebook社は『meta』に社名を変更しましたが、社名変更後の『meta』を含むドメインネームは急激な伸びを示しています。如何にfacebook社が影響力のある企業で、社名変更の一件で世の中に『メタバース』というキーワードが浸透したかを確認することができるのではないでしょうか。

続いてみてみましょう。『nft』という言葉を含むドメインネームの登録推移は次の通りです。

海外NFTマーケットとして一番有名な『OpenSea』が2021年3月に出資獲得をしたころから、徐々にこのキーワードが話題となり、ドメインの登録件数が増えています。その後、少しこのキーワードは落ち着きを見せましたが、Adam by GMOやNFTの流行語大賞ノミネートをうけ、ドメイン登録件数は一段階上がった感があります。

このように見てくると、市場の盛り上がりとドメイン登録の伸びは比例することがわかります。

メタバース・NFTドメインの具体例

具体的にどのようなドメインが取られているかを確認してみましょう。例えば、meta-citroen.com、meta-peugeot.com、meta-tesla.net などは、直近7日間で取得されています。

有名ブランドの『meta』+ブランド名.TLDは狙われており、非常に多く取得のパターンが取得されてしまっています。読者の皆様も是非『meta』+ブランド名.comなどで、whois検索をいただくとよいかと思います。

取得されたドメインは実際にどのようなサイトになっているかというと、サイト運営のパターンは主に3種類です。②、③はブランド侵害のリスクが少しありますので、警告などの検討をしていくことをお勧めします。

①パーキングサイト

②アダルトサイト

③カジノサイト

NFTマーケットの状況は?

次にNFTマーケットプレイスの状況を見ていきましょう。

NFTマーケットプレイスは非常に多くありますが、海外で有名なNFTマーケットプレイスは、『OpenSea』や『Rarible』などが有名です。『OpenSea』は言わずとしれた世界で最大のNFTマーケットプレイスです。『Rarible』は、アート作品が中心のNFTマーケットプレイスです。

有名な企業であれば、何かしらの検索結果が出てくるので、是非アクセスをしてブランドの状況を確認してみましょう。例えばどのようなものがあるのかを列挙してみます。

①アシックス

出典:opensea.io

アシックス社は、NFTの領域では日本で先進的な取り組みをしている企業といえます。上記アカウントも公式サイトであり、実際にNFTシューズの販売もしています。

②スポンジボブ

出典:opensea.io

本アカウントは公式ではありません。他人が元の著作物を改変して、NFT著作物を公表しています。こうしたケースのアカウント、NFT著作物は非常に多くブランドの侵害は生じています。

③ポケモン?ドラえもん?

出典:rarible.com

日本の有名キャラクターブランドを混ぜたようなアカウントです。実際にNFTトレーディングカードの出品もしています。

簡単に検索をするだけで、こうした検索結果を見つけることができます。それくらい怪しい結果に溢れています。

ブランド侵害に対しての対応策は?

『OpenSea』『Rarible』は、ブランド権侵害(主に、商標権侵害・著作権侵害)の申し立てをすることが可能です。

出典:opensea.io

サイトにそれぞれ報告のフォームがありますので、法的根拠を添えて申請をしていくことで、ブランド権侵害をしているアカウントやNFTのクリーンアップをしていくことになります。

とはいえ、メタバースやNFTという概念がいまいちわからないという方も多いかと思います。そういった不安をお持ちの方は、ブランド権侵害の排除にあたって、ブランド毀損リスクへのサポートサービスである『エンフォース1』のご利用を検討いただくとよいかと思います。

さいごに

インターネットの世界は非常に速いスピードで進化をしています。次から次に新しい概念が生まれてきては変わるため、知財担当としては最新の情報についていくだけでも大変だと感じます。(今回の記事には書くことはできませんでしたが、NFTドメインという概念も海外では当たり前になってきています。)

しかしながら、ビジネスがこうした現場で生じている以上、無視をすることはできません。まずは概念をインストールいただき、各社の実態を把握し、ブランドに対する適切なアクションを取っていただくことを願っています。


寺地 裕樹(Yuki_Terachi)/ GMOブライツコンサルティング株式会社 営業本部 本部長 / 国内最大手情報セキュリティ企業にてSEとして従事後、GMOブライツコンサルティングに参加。法律とITとブランドのバックグランドを活かし、お客様のブランドセキュリティ向上に努めています。/ 保有資格:行政書士、知財検定2級、ITパスポート