HONDA、メールアドレスのドメインネームとしてブランドTLD「@jp.honda」利用開始!【ブランドTLD・新GTLD】

HONDA、メールアドレスのドメインをブランドTLD「@jp.honda」に移行

本田技研工業株式会社(Honda Motor Co., Ltd.)は2020年3月16日より、電子メールアドレスのドメインネームをブランドTLDを用いた「@jp.honda」に変更しました。これまでは、組織によって異なりますが、主に「@***.honda.co.jp」の形式を使っていました。

これにより、日本ではキヤノン株式会社(Canon Inc.)の「@mail.canon」、東レ株式会社の(Toray Industries, Inc.)の「@mail.toray」に加わって、メールアドレスのドメインネームにブランドTLDを採用した企業がもう一社増えました。

※ ブランドTLDとは? 
一般名称とは異なり、特定の企業が自社名または所有するブランド名にて申請したTLD(Top-Level Domain)のこと。
※ Brand Today 企画:ドメインを楽しく学ぼう!ウェブ小説・結花シリーズ
<2話>ICANNって何者?ドメイン取得との関係は?レジストリ、レジストラって?話題の新GTLDについても紹介!ブランド名や企業名とブランドTLDのお話他

キヤノンの場合、すでに2018年8月20日より、メールアドレスのドメインネームを既存の「@canon.co.jp」から「@mail.canon」に移行しました。最初は社員用のメールアドレスから切り替えはじめ、順次にグループ会社やお問い合わせ用などB2C用のメールアドレスに適用していくとしています。
キヤノン社、「@mail.canon」メール利用開始で更なるブランド価値向上へ

本田技研工業の場合、キヤノンのように多くのウェブサイトをブランドTLDに切り替えている企業ではないという点で、新しい動きのように感じます。「@mail.ブランドTLD」ではなく、「@jp.honda」を採用しているのも、今後2文字のccTLD(国別コードトップレベルドメイン)を利用し「@ccTLD.honda」の形式など、海外拠点のメールアドレスに適用していくのではないかと、ブランドTLD担当としては想像力を働かせる部分です。

グローバル・コーポレートサイトとして機能する「global.honda」

現在、同社は「global.honda」を含め、活用中のブランドTLDドメインネームは2件のみです。そのうち「global.honda」は、2017年11月に登録され、2018年5月からグローバルサイトとして運用開始しました。同サイトは、グローバルマーケットで英語をメインとするコーポレートサイトの役割をしています。

HONDAのグローバル・コーポレートサイト
global.honda

「global.honda」サイト内のヘッダーメニューには〈World Links〉というメニューがあり、リージョン別・国別に異なるウェブサイトの情報を載せています。また、〈News Room〉というメニューにて、世界の進出国での最新プレスリリースをまとめて英語のみ提供しています。

何より、同サイト内の各メニュ―のURLに対して、既存のサイトなどレガシードメインへの転送を一切使わず、「https://global.honda/…/…」のように、全てのページをブランドTLDサイト内の階層構造を利用しているのも特徴的です。ちなみに、「www.honda.com」は米国でのオフィシャル・ウェブサイトとして使われています。

米国拠点のオフィシャル・ウェブサイト
www.honda.com

同社が運用しているブランドTLDサイトの数は限られていますが、徹底的にグローバル・コーポレートサイトとして構成され、豊かなサイトを作り上げています。単一グローバルサイトの運用、そしてそのサイトにブランドTLDを用いることで、グローバルマーケットでのブランディング活動をより一層効果的に実施している事例だと思います。

もう一つの活用中のブランドTLDサイトは、「ke.honda」です。「ke」はケニアのccTLDで、新興国向けウェブ支援の一環としてケニアのサイトを作ったそうです。「global.honda」の〈World Links〉メニューの〈Africa & the Middle East〉のリストにあるケニアのウェブサイトが「ke.honda/en/motorcycles」になっているのを確認できます。同社のブランドTLDサイトとしては「global.honda」とともに唯一運用されているサイトになります。

HONDAのケニア向けウェブサイト
ke.honda/en/motorcycles

グローバル企業のブランドTLDのメールアドレス活用動向

ちなみに、ブランドTLDを取得・運用しているグローバル企業の中でも、メールアドレスのドメインネームにブランドTLDを採用している企業はまだ少ない方です。

2020年2月末時点で、MXレコード(Mail eXchange record:メール送受信に必要な情報の一つ)を設定しているブランドTLDは162件、そのうちメールアドレスのドメインネームとして利用可能性の高い「mail」「email」「mailing」「contacto」などの文字列をホストネームとして登録しているブランドTLDは21件に過ぎないです。

現在、メールアドレスのドメインネームとしてブランドTLDを活用している企業は、フランスの総合スーパーマーケットチェーンE.Leclercの「mailing.leclerc」と「@cartecarburant.leclerc」、イギリスのエンジニアリング会社The Weir Groupの「mail.weir」、ルクセンブルクの乳製品会社Fage International S.A.の「mail.fage」、ドイツの大手スーパーマーケットチェーンLidl(リドル)とKaufland(カウフランド)を運営するSchwarz Gruppeの「mail.schwarz」、インドの日用品・食品メーカーDabur India Limitedの「mail.dabur」などを挙げられます。

E.Leclercの場合、社員用のメールアドレス以外に、自社サービスブランドのメールアドレスにブランドTLDを適用しているのも目立ちます。「@cartecarburant.leclerc」は、ガソリンスタンドや自動車整備センターなどでの支払いに使える燃料カードサービスブランドである〈Carte Carburant〉のメールアドレスに使われています。

E.Leclercのサービスブランドサイト
cartecarburant.leclerc

その他に、ブランドTLDを利用しグローバルサイト「global.weir」を運用しているThe Weir Groupの場合、「@mail.weir」をグローバルサイトの各種コンタクトポイント用のメールアドレスとして活用しています。例えば、「investor-relations@mail.weir」(投資・広報用)、「media@mail.weir」(広報用)、「contact-us@mail.weir」(広報・お問合せ用)、「oilandgasspares@mail.weir」(事業・広報用)などが使われています。

これらのメールアドレスは、特にUnique Siteと呼ばれる、ドメインネームとサイトのURLが一致するブランドTLDサイトとメールアドレスを連携しているのもグローバル企業の特徴の一つです。

ブランドTLDへウェブサイトの移行がほぼ完了しているThe Weir Group
global.weir

ブランドTLDと企業のブランディング活動の連係

このような傾向から見ると、グローバルサイト「global.honda」の展開と、日本本社のメールアドレス「@jp.honda」の展開は少し違う事例になりますが、今後日本及び海外拠点のサイトのブランドTLDへの移行、またはメールアドレスの海外拠点への適用も考えられるのではないかと思います。

しかし、企業のグローバルサイトの移行やメールアドレスのドメインネームの移行は決して簡単なことではありません。システムとの調整や広報も含め、企業全体のブランド戦略の下で段階的に行っていくものです。だからこそ、このような動きは企業のブランド戦略を伺える機会にもなります。ですので、これからの動向も長いスパンで見ていきたいと思います。

【第45号】ブランドTLD Monthly Report(2019年9月)
「テーマ:ブランドTLDへの移行パターン分析」
 1) ブランド戦略の一環でブランドTLDを考える
 2) 運用フェーズ別で見るブランドTLD
 3) ブランドTLDへの移行パターン分類
 4) ブランドTLD移行時のチェックポイント
ブランド戦略レポートのお問い合わせはこちらから www.brightsconsulting.com/contact


<ライタープロフィール>
鄭 美羅(Mila Jung)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/New gTLD Consultant
consul@brights.jp
2017年11月に入社、IT・メディアコンサルタントとしての経歴を活かして、ドメイン分野を学びながら新gTLD、特にBrand TLDを専門にレポートを提供。新gTLD分野に興味津津。「これ、面白いっす」と色々発見中。趣味は散歩(ひたすら歩く)、写真(めちゃくちゃ撮る)、カフェ(ただぼっとしている)、そして世界の観察と分析(?!)。


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