海外で人気の日本食。寿司やてんぷら、すき焼きといった「the 日本食」というものから「たこ焼き」や「焼き鳥」「うどん」などその人気の幅はどんどんと広がっています。
特に中国では今何度目かの日本食ブームが起こっており、日本食レストランに食事に行くだけではなく、日本食作りに挑戦する家庭も増えているのだとか。それに伴い日本食材を取り扱うスーパーも増えているようです。
アリババでも日本の調味料がずらり。
しかし残念ながら人気があるということは真似をされるリスクも高まっているということ。今回はそんな日本食材について、中国でどのような侵害が起こっているのかを調査してみました。
そっくりなパッケージで微妙に違う商品名 上海心演商贸有限公司
調べていくと、怪しい動きをしている企業がいくつか見つかりました。まずは複数ブランドに渡り類似品を作っている上海心演商贸有限公司をみていきましょう。
彼らの商品情報を見ていくと、どこかで見たことがあるような商品が……
しかしよく見ると、ロゴや商品名が日本のブランドとは異なります。
例えばこのさしみタマリ、一見、盛田株式会社のさしみタマリかな?と思うのですが、よく見るとブランド名が「熘熘」となっています。
こちらが正規品。比べていただければ、偽物のラベルがほぼ同じであることがおわかりいただけるかと思います。
第三者が使用している「熘熘」というブランドを中国DBで調べてみると
ありました。権利者名は商品を販売している会社名。区分は30類で醤油や調味料を指定しています。
このほかにも、黒霧島にそっくりな「雾鸟」や、
エスビー食品の七味唐辛子にそっくりなパッケージですが、ブランドロゴが「梅印」になっているものなどがありました。
そしてどちらも同一権利、上海心演商贸有限公司によって商標登録されています。
この上海心演商贸有限公司は他にも日本の酒造メーカーの商標や、調味料の類似商標を複数出願していました。日本ブランドの著名性にフリーライドし、自社商品を販売しようとする様がおわかりいただけるかと思います。
日本のメーカーを連想させるようなブランド名を使用 上海腾仑食品有限公司
続いて日本の調味料の代表格の一つ、味噌を百度(中国の検索エンジン)で見ていると気になる商品を見つけました。
マルコメは中国で「一休味噌」としても認識されているようなのですが、その検索一覧の中に「一休屋」というブランド名の付いた商品が。
パッケージはマルコメのものとそっくり。気になって「一休屋」を中国DBで調べてみると、
やはり商標登録されていました。マルコメが「一休味噌」として認識されている中国において、「一休屋」というブランドのついた味噌(それもパッケージがそっくり!)が販売されていれば、本物かと誤認混同されてしまう恐れは十分にあります。
この商標の権利者である上海腾仑食品有限公司とはどのような会社なのか、調べてみると以下のような販売サイトがヒットしました。
彼らの取り扱い商品を見ていくと、先ほどご紹介した上海心演商贸有限公司と同じように、日本ブランドに似ているものの、他の商標を使用した商品が多数出品されていました。
オタフクソースを連想させるお好みソース
エスビー食品を連想させるカレールーとわさび
このように、現在中国では全体パッケージを模し、その中の一部に自社商標をいれるというような模倣行為が増えている傾向があるようです。
狙われている日本の食品メーカー商標
最後に食品分野において商標がどのように狙われることが多いのか、複数の侵害商標を出願している苏州赤坂贸易有限公司を例にみてみましょう。
苏州赤坂贸易有限公司は、マルコメ関連の「類似群の穴を狙った」30類商標を複数保有しています。
中国においては、たとえ同一商標であったとしても、類似群が違えば同一区分においても権利化できてしまいます。今回のケースで見てみると、指定されている指定商品はシリアルやシリアルを使用したスナックなど。全く関係のない商品ですが、第三者が上記の商標を使用してシリアルを販売していたら、やはり気持ちがいいものではありません。
同一区分内は近しい商品が多かったりするため、第三者が権利化されるのはできる限り防ぎたいもの。中国の出願をする場合には、この類似群の防衛も見越して指定商品を選定していくことが重要になってきます。
他にも苏州赤坂贸易有限公司は、五木食品のキャラクターを権利化していました。
区分は29類、30類、35類。
この上記3区分は、飲食業や食べ物を扱う企業が狙われやすい区分でもあります。
35類はフランチャイズや広告宣伝として、29類と30類はどちらも食べ物の区分であるため、「いつかその企業が展開してくるかもしれない」「模倣品を作った場合、近しい商品分野のため消費者が誤認しやすい」という点から第三者に狙われてしまうのです。
いかがだったでしょうか。
今回は「日本食」を例にとって見ていきましたが、少しでも人気がでたり、売れると思った商品に対し、模倣業者があの手この手とブランド侵害をしようとしてくる様子がおわかりいただけたかと思います。
侵害に対して対策をするのは容易ではないかもしれません。いくらやっても「イタチごっこになってしまうから」と対策を迷っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし対策をしなければ、「侵害しやすいブランド」として模倣業者は次々と集まってきてしまいます。
優先順位をつけ、適切に権利化を行い、監視をし続ける。弊社では豊富な経験を元に、様々なご提案しておりますので、お困りごとがございましたら是非お声がけください。
〈ライタープロフィール〉
村上 加苗 (むらかみ かなえ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業部/関西営業アシスタント
2011年入社。営業マンとして6年ほど勤務した後、出産を機に営業アシスタントへと転向。現在は年間300以上のブランド調査をしています。侵害者目線からの商標、ドメインなどといった侵害発見を得意としています。趣味はお酒、ダイビング、漫画。