~前回のお話~
https://brandtoday.media/2019/10/02/domain-yuka-series7/
前回の侵害事件は、テラチック株式会社に大きなインパクトを与えました。トップダウンで、「ドメイン侵害の対策を行うこと」と指示があったコーポレートブランド戦略部はドメインのホワイトリストの作成に追われています。
***
ひえ~。予想はしていたけどホワイトリストを作成するのって大変ですね!
情報を集めるのに骨が折れるわ…。
ふう…このPC事業部の分をまとめれば…できました!完成です!
お疲れ様~!
こうやって見ると、支社や事業部単位で結構取っているんですね。知らないドメインばっかりです…。
どれどれ…本当!結構な数ね。海外は支社や営業所が勝手に取っちゃった感じね。これは問題だわ。
海外の支社のドメインがバラバラなのが目立ちますね。アメリカはterachic-us.com、イギリスはterachic.co.uk、韓国はkoreaterachic.co.krかあ…。
えー!こんなにバラつきあるの!!?
全然統一感ないですね…。
全体の数は… 使用ドメインではなくて保護ドメインも結構あるから、結構多いわね。
使用ドメイン?保護ドメイン?
そう!
それって一体なんですか?
使用ドメインは、実際にWebやメールで使用しているドメインのことよ。例えば、newgenic.comっていうドメインWebで使用していたら、newgenic.comは使用ドメインってこと。
ふむふむ。
保護ドメインは、実際にWebサイトやメールで使用するドメインに準じて取得するドメインのことなの。この場合、newgenic.netとかnew-genic.comとかTLDや登録文字列のバージョンを変えたものが保護ドメインね。
え!Webサイトやメールで使用しないのに、ドメインを取得するんですか?
お金もかかるのにどうして?
それは、第三者の悪用によるブランド棄損を防ぐためよ。newgenic.comってドメインを使用したとして、悪意のある第三者がnewgenic.netで侵害サイトを作成しちゃったら、大変だもの。
なるほど!第三者の悪用によるブランド毀損を防ぐために、実際に使用するものとは別に、あらかじめ大事なTLDや登録文字列は抑えておくってことですね!
そうそう!
ふむふむ…。ってあれ?なんで PC事業部は今回悪用されたnewgenic.shopってドメインを取得していなかったんですか?
ルールがあってないようなものだったから、事業部も判断できなかったんだろうなあ…。
なるほど…。確かに事業部によって保護ドメインらしきものを取得できていたり、できていなかったりバラバラです。
デジタルカメラ事業部は独自ドメインの取得が多いなあ。このキャンペーンサイト、独自ドメインでやる必要あったのかしら。保護ドメインも全然取ってないし、今から取ったらコストはどのくらいかかるのかしら…。
新山さん、保護ドメインって一体どこまで取ればいいんですか?gTLD、新gTLD、ccTLDって全部合わせるととんでもない数になっちゃいますよね?コスト莫大ですよね?
その通り。はっきりいってキリがないわ。だから優先順位をつけることが大切なのよ。
優先順位…ですか?
そう、例えばnewgenic.comを実際にWebサイトで利用するドメインとして取得をするとするでしょ。
はい!
この場合、.infoは一般的によく用いられるgTLDだから、保護ドメインとして取得必須にするとかね。
ふむふむ。
新gTLDと各国のccTLDも同じような感じで優先順位をつけていくの。 下に図を描いてみたわ。
なるほど、事業内容や事業展開からgTLDを検討するんですね。
プラス、登録文字列の観点も必要ね。会社名であるterachicや商品名であるnewgenicと完全一致する登録文字列は取得優先度を高くして、terachic-とかハイフンがつくようなものは優先度を少し低くするとかね。
確かにある程度方針があれば、保護ドメインの取得判断ができやすいですね!
新島さん、質問です!方針を決めて、取得の優先度が低かったドメインは、そのまま放置しちゃうんですか?
いいえ、放置はしないわ。
取得もせず、放置もせず…?何をすればいいんでしょうか?
ズバリ、定期的な監視 よ!
監視?
取得しないドメインでも、悪用されたら困るものってあるわよね。そういったドメインは、文字通り監視をするの。
なるほど。確かに、監視をしておけば万が一、第三者によって悪用されたときに、侵害に対するアクションの判断も早くできそうです!
そういうこと!つまりドメインの取得から監視まで適切なフローを回していくことで、第三者からの悪用から自社ブランド資産を守ることに繋がるということよ。
理解しました!新島さん、私思ったんですけど、いま教えていただいたことって、やっぱりドキュメント化が必要なんじゃないでしょうか?海外支社や営業所、各事業部によってドメイン取得や活用にバラつきが出るのは、方針がないからだと思うんです。
確かに、ここ数年で海外進出も拡大したし、ガバナンスを効かせるためにはルールを作って、浸透させる必要があるのかも…。
それに、ルールを作るのってきっとコーポレートブランド戦略部のためにもなると思うんです。この前みたいに侵害が発生したら、きっとうちの部に問い合わせが来ますよね?私たちの仕事をスムーズにするのにも、ドメインルールはきっと重宝しますよ!
わかったわ。ドメインルールの作成を桐山部長に打診してみましょう。通った場合、他の部も巻き込む大きなプロジェクトになると思うけど、一緒に頑張りましょう!
はい!よろしくお願いします!
***
結花の提案で、ドメインルール策定の一大プロジェクトが立ち上がる可能性が出てきたコーポレートブランド戦略部。プロジェクトは無事スタートするのでしょうか…?
9話目はこちらからチェック
https://brandtoday.media/2019/11/19/domain-yuka-series9/
登場人物は下をチェックしてね!
https://brandtoday.media/2019/08/27/domain-yuka-series-bangaihen/
〈ライタープロフィール〉
千葉 やよい(ちば やよい)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/ドメイン担当
2012年に入社。 BRANTECT、商標コンサルタントを担当したのちドメインコンサルタントに就きました。ガイドラインや、ドメイン関連記事を作成しています。ドメインについては現在進行形で勉強中!初心者様にも分かりやすい記事作りを心がけています。趣味はゲーム、アニメ、散歩。