「ドメイン担当か・・・」
結花はため息交じりにつぶやきました。
今日は金曜日。各々の花金を過ごす社員たちはウキウキと会社をあとにしましたが、結花は大好きなウィンドウショッピングをする気も起きず、トボトボと帰宅しました。
西宮結花(にしみや ゆか)は電機メーカーTerachic Corporationのコーポレートブランド戦略部に所属する入社3年目の新米社員です。
実は今日、急にドメイン担当を兼務することを部長から告げられたのです。
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西宮さん、急に呼び出して申し訳なかったね。実はね、新島さんが来月の末からアメリカ支社へ転勤することが決定してね。それで…申し訳ないんだけど新島さんが対応してくれている兼務の業務を西宮さんに引き継いで欲しいんだ。
(新島さん、アメリカに行ってしまうんだ…。(涙)) わかりました。私でよければ頑張ります。それで、兼務の業務って…?
ありがとう!うん、兼務の業務なんだけどドメイン担当なんだ。
ド…ドメイン担当?
そう、西宮さんよくインターネットをやってるって聞いたし、適任だと思ってね!
あの…それはネットショッピングが趣味なだけで…技術的なものはなにも…
デジタルネイティブ世代が部署にいて本当に助かったよ!僕はそういうのはどうも疎くてね。いやー、本当にありがとう!!
部、部長…!?
それじゃ、よろしくね〜♪ バタン(会議室のドアが閉まる音)
…!
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帰宅をしても結花の不安は消えません。
どうしよう。ドメインのことなんて何も知らないよ…。困ったなあ。よし、まずは気分転換だ。気晴らしにネットショッピングでもしよう ! ポチポチ…(携帯をいじる音)
お姉ちゃん入るよ~!あ、またネットショッピングしてる!本当好きだねえ。別に勝手だけど、無駄遣いしないようにしなよ!
余計なお世話~!高校生は勉強しなさい!私は今気分転換中なの。あーあ、なんで私がドメイン担当なんだろう…。ああ、思い出してきちゃった。
ドメインって、ドメインネームのこと?お姉ちゃんドメインネーム担当になったの?すごいね!さすがコーポレートブランド戦略部って感じ!
…!!颯希(さつき)、もしかしてドメインに詳しいの?!
え、うん。まあまあ知ってるよ。
颯希先生!お願いします!私にドメインを教えてください~!
えー。やだー。めんどくさい。
今度パンケーキ奢ってあげるから!
…!悪くない!よし、交渉成立!早速始めるよ〜!
お願いします!
さてお姉ちゃん、まずドメインって聞いて何を思い浮かべる?
う~ん、ウェブサイトのURLのこと?あ、でもネットショッピングで購入したときに、【決済完了のメールを自動配信しているから、ドメインを受信できるように設定をお願いします】って画面に表示されるから、メールアドレスもドメインになるのかな?
うんうん、なんとなーくはイメージできてるんだね。そうだなあ、お姉ちゃんブラウザーに【183.79.135.206】を直接入力してみて。
長い数列だね。183.79.135.206と…。えい!あ!Yahooのウェブサイトに繋がった!
いまお姉ちゃんが入力した数列は、IPアドレスっていって、簡単に言うと、コンピュータが理解できるように数字でかかれたインターネット上の住所なの。でもお姉ちゃん、Yahooのウェブサイトを見たいって思ったときに、さっきの数字の羅列がパッと頭に思い浮かぶ?
無理無理!さっき入力したけどもう忘れてるし、数字の羅列を聞いただけでは、それがYahooのウェブサイトに繋ぐためのものなんて分からないよ。
そう、人間にとって数字の羅列を覚えるのはとーっても難しいの。そこで登場するのがドメインだよ。ドメインはIPアドレスを人間にとって分かりやすくしたものになるの。例えば、さっきのYahooのウェブサイトのドメインは【www.yahoo.co.jp】だよ。どう?数字の羅列より分かりやすいし、覚えやすくない?
うん!単なる数字の羅列より断然覚えやすいし、ドメインを見ただけでなんとなく内容が分かる~!
今話したことを、下の図にまとめてみたよ~。
ちょ、ちょっと待って。IPアドレスとドメインについてはなんとなくわかったけど、この図の真ん中の四角の物体はなに?
これはね、Domain Name System、略してDNSと呼ばれるものだよ。人間が使うドメインからコンピュータが理解できるIPアドレスを検索する役割を担ってるの。人間とコンピュータの翻訳係ってところかなあ。ドメインとIPアドレスを紐づけることを【名前解決】って言うよ。
へえ…わたしたちがドメインを入力するとすぐにサイトが表示されると思っていたけど、裏ではこんなことが行われていたんだねえ。
DNSに関しては、内容はもっと深くあるんだけど、今回はここまでで大丈夫だよ。 じゃあ次はドメインの構成について話すよ。お姉ちゃんの名刺を1枚貸してもらえる?
はい、どうぞ
ありがと。ふむふむ、なるほど。お姉ちゃんの会社のウェブサイトドメインを使ってドメイン構成を見てみよう。
図を見てみて。一番右の黄色で着色した【com】の部分は、トップレベルドメイン、通称TLDと呼ぶよ。お姉ちゃんの会社のウェブサイトドメインは【com】ドメインを使っているね。【com】は“commercial”(商用の)の略で、企業や商用サービスで使用されることを想定して用意されているよ。
ふ~ん。目的が想定して用意されているのね。
TLDはざっくりと2種類に分類されるんだけど、【com】はgeneric Top-Level Domain(一般トップレベルドメイン:通称、gTLD)に分けられるよ。gTLDの大きな特徴は、世界中の誰でも取得ができることなの。【com】は商用サービスを想定して作られたものだけど、取得するのには事実上制限がないんだよ。
ふむふむ、なるほどね。TLDは他に何に分類されるの?
TLDはもうひとつ、country code Top-Level Domain(国コードトップレベルドメイン)に分類されるよ。これは通称、ccTLDって呼ばれているよ。㏄TLDは、特定の国や地域別に定められているのが特徴だね。日本だったら【jp】、韓国だったら【kr】という具合だよ。ccTLDは、各々のポリシーのもとで管理されているから、取得するために必要な条件も異なってくるの。例えば、【co.jp】は日本のccTLDのひとつなんだけど、これは日本で登記された会社しか取得ができないんだよ。ちなみに【co.jp】の【co】は民間企業を表しているよ。
なるほど…ん?でも【co.jp】は日本企業を意味しているんだよね?それだったら、うちの会社のウェブサイトドメインは【terachic.co.jp】のほうがいいんじゃないの?みんなに日本企業であることをアピールしやすいよね?
おお!いいところに気がついたね。確かに【co.jp】を使用するのは日本企業であることのアピールに繋がるね。でも、お姉ちゃんの会社って、世界各国に支社を持つグローバルカンパニーだよね?きっと戦略に基づいて、【com】ドメインを使用していると思うよ。
IPアドレスを人間が分かりやすくしたものがドメインなのに、戦略が必要なの?謎すぎる…。
ドメインは単なるインターネット上の識別子ではないんだなあ~。ま、これについては、追々話していくよ。
了解です!
話を戻すよ。下の図は、お姉ちゃんの会社メールアドレスだよ。TLDの左側に位置するところ、下の図の黄色で着色した【co】の部分はセカンドレベルドメイン、通称SLDと呼ばれるものだよ。SLDの定義や使用方法は、そのTLDを運用するレジストリによって違ってくるの。さっき言った通り、日本の【jp】ドメインはSLDに民間企業を表す【co】を指定することができるけど、中国の【cn】ドメインだと同じ民間企業を表すSLDは【com】になるんだよ。
なるほど、表記方法が違ってくるんだね。中国のドメインを取得したい場合は、【terachic.com.cn】になるということだね。
そういうこと。次は、水色で着色した部分。terachicの部分はホスト名というよ。ここはドメイン取得者が自由に指定をできる文字列の部分だよ。
自由に取得できるってことは、ホスト名をyukaにしてもいいってこと?
うん。まあ、co.jpはさっき言ったように日本の会社しか取得できないから無理だけど。でもyuka.comは他の人が取得していなかったら取得可能だよ。ドメインは基本、早いもの勝ちだからね。
へえ…そうなんだ。yuka.com取っちゃおうかしら…ふふふふ
取得してもいいけど、一体何に使うの?(笑)さて、今日はここまでにしとこうか。今回の内容をまとめたから、ちゃんと復習してね~。以上、本日のレッスンを終了します!
颯希先生ありがとうございます!引き続きよろしくお願いします!
※登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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https://brandtoday.media/2019/08/20/domain-yuka-series2/
〈ライタープロフィール〉
千葉 やよい(ちば やよい)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/ドメイン担当
2012年に入社。 BRANTECT、商標コンサルタントを担当したのちドメインコンサルタントに就きました。ガイドラインや、ドメイン関連記事を作成しています。ドメインについては現在進行形で勉強中!初心者様にも分かりやすい記事作りを心がけています。趣味はゲーム、アニメ、散歩。
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