ブランド名悪用のフィッシングサイトは増えている
昨年もJCB、佐川急便などのフィッシングサイトのニュースは話題となりましたが、フィッシンサイトの件数は増加傾向です。
とりわけブランド名を利用したフィッシングは下記の通り増えています。
フィッシングサイトの対策でドメインを奪還することも多いですが、ドメインの侵害も増えているのでしょうか?
少し気になったので調べてみました。
ドメイン仲裁件数は、増えているのか?
ドメイン侵害があった際に申し立てをする先といえば、世界知的所有権機関(通称、WIPO)が有名です。日本のように仲裁機関が
ある国は多くはありませんので、大半の仲裁はこの機関で処理されています。
では、WIPOの公表する統計を見てみましょう。
ドメイン仲裁の件数は、2000年代から約2倍に増えています。
どんな国で仲裁が多いのでしょうか。
(申立人国籍)
アメリカのダントツ感はありますが、欧米諸国が上位を占めます。
(被申立人国籍)
こちらもアメリカがダントツですが、先ほどと異なるのは中国が2位にいる点です。
どんな産業で仲裁申し立てが多いのでしょうか?
フィッシング詐欺でよく狙われる小売、金融業界がやはり上位を占めています。次いで、ブランド侵害の多いファッション業界や
ネットが事業の主となるIT業界が続いています。
ブランドを騙ったフィッシング詐欺が多くなると仲裁が多くなる傾向はありそうですね。
最後に、申し立ての結果はどうなのでしょうか?
92%の確率で認容判決がでています。つまり、申立人が勝ち、ドメインが移管されています。多くの申立人が仲裁要件を
心得ている気がします。
ドメイン仲裁を申し立てるための要件
初めての方もいらっしゃるかもしれませんので、仲裁の要件は以下の通りです。
①貴社が先行権利を有する商標に対して、ドメインネームが同一または混同を起すほど類似していること
(例:sony と soony)
②ドメインネーム所有者がドメインネームについて権利または正当な利益を有していないこと
(例:商標権をドメイン所有者が持っている。)
③登録者のドメインネームが 悪意により登録かつ使用 されていること
(例:特定のブランド権者のブランドを侵害する意図を有している。)
ざっくり言うと、商標権者が自社のブランドをマネされて事業の妨害がされている場合には、申し立てると認容判決が
でる可能性が高いです。
フローは次の通りです。2か月くらい結果までに時間を要します。
今回調べてみて、世界の仲裁件数がたった3,000件強という点は驚きです。費用と時間がかかる点からすれば、
敬遠されているのかもしれませんね。
〈ライタープロフィール〉
寺地 裕樹(てらち ゆうき)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業本部 IPソリューション部
consul@brights.jp
2008年に入社後営業部の主力メンバーとして、営業数字を牽引。2012年には、当時最年少で営業部部長に就く。現在は、商標・ドメインネームに関するコンサルティングを主に行うIPS部、営業部、営業管理部を率いる営業本部副本部長として従事。趣味は、家族と週末農家、インラインスケートなど。