くまモンの非公式名「熊本熊」が中国でひとり歩き、求められる中国の理解と必要な検討とは

日本人に限らず、中国人にも大人気のくまモンですが、熊本県による中国語の公式名「酷MA萌(中国語読みで「くまモン」)」は中国人に一向に定着せず「熊本熊」呼ばれ続けていると言います。

中国で浸透する「熊本熊」


中国国内で最大のシェアを誇る検索エンジン「百度(Baidu)」でも、「熊本熊」と紹介されています。

(画像出典:https://baike.baidu.com/item/%E7%86%8A%E6%9C%AC%E7%86%8A)

 

また、アジア最大のショッピング サイト「taobao」で検索した結果も、正式名称「酷MA萌」より「熊本熊」で検索した方が多くの出品物が確認できる状況。

(画像出典:taobaoで「熊本熊」を検索した結果 熊本県が販売元ではなさそうな出品が多い…)

 

[su_highlight]中国でのくまモンの人気の高さと「熊本熊」でのネーミングが広く浸透してしまっていることに、改めて気づかされます。[/su_highlight]

 

中国での商標取得状況


気になる中国での商標取得状況を確認した結果がこちら。

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検索キーワード 出願件数 熊本県が権利者の件数 第三者が権利者の件数
”KUMAMON”を含む 44件 11件 33件
”酷MA萌”を含む 44件 29件 15件
”熊本熊”を含む [su_highlight]95件[/su_highlight] 39件 56件

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”熊本熊”を含む出願件数が一番多い結果であることがわかります。熊本県も”酷MA萌”を公式名としたいという気持ちがありながらも、”熊本熊”の権利保護もしていることが伺えます。

しかし、熊本県が出願している商標はいずれも2018年に入ってからの出願であり、非常に遅い印象。そのため、第三者による商標の抜け駆け出願の件数も非常に多いです。

 

第三者による商標の抜け駆け出願の現状


中国・台湾において日本の地名や地域ブランド等が第三者によって出願登録される事例(抜け駆け出願)が相次いでおり、これによって我が国の企業等の現地でのビジネス展開に支障が生ずるリスクが増加しています。中国の商標出願件数は年々増加しており、2017年には商標登録出願が飛躍的に増加し、前年比で55.7%増加の574万8000件となりました。

(グラフ単位:件)

中国政府が世界的なブランド育成を目標に掲げ、国外での商標を含む知的財産権の出願に補助金を出していることを背景に、今後も出願件数の増加に伴う抜け駆け出願のリスクの高まりが懸念されます。

 

 

求められる中国の理解と必要な検討とは


中国語表記がひとり歩きする前に(商標)

人気のあるブランド名/ネーミング等は、勝手に中国語ネーミングをされた上に知らぬ間に認知度が高まってしまうことがあります。

国内で人気が高まってきた際は、中国でビジネス展開しているか否かに関わらず、早めの段階で中国語表記での商標出願を検討する必要があります。また、決めた中国語表記以外のネーミングが広まってしまう前に、広く中国語の公式名を周知させる必要もあります。くまモンの事例に見られるように、広く定着してしまった後に刷新させることは一筋縄では行かないものです。

重要ブランドの状況理解と監視の必要性(ドメイン)

ドメイン取得状況を調査した結果、現在くまモン公式サイトとして利用されている「kumamon-official.jp」と同様のホストネーム”kumamon-official”を使用しているサイトと、「kumamon.cn」という、くまモンを紹介する中国サイトの確認できました。

(画像出典:左http://kumamon-official.com/、右https://www.kumamon.cn/)

特に「kumamon.cn」のサイトは、”Goods”という項目があり、現時点では販売行動は確認できないものの、このサイトで商品販売がされた場合は、多くの消費者が公式サイトと誤解をして購入をしてしまう恐れのあるサイトであるのではないでしょうか。

商標権のみではなく、重要なブランド名/ネーミングに関してのドメインの監視や権利化の検討が必要となります。

 
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〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。

 

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