ゲームだけでない!幅広い業界で活用が予測される「AR」技術

日本では”拡張現実”と呼ばれているAR(Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ)。現実世界にデジタル情報を付与し、CGなどで作った仮想現実を現実世界に反映する技術を指し、ARスマートフォンアプリの分野で多く導入されています。2016年にリリースされた「ポケモンGO」もこのAR技術を利用したもののひとつです。

世界最大の商標データベースGlobalBrandDatabaseで、”Augmented Reality”を指定商品・役務に指定している出願商標は、6,181件。出願年別に見た出願件数遷移はこちら。

2017年の出願件数は、2014年の出願件数と比較すると約10倍も増加。2018年度も現時点で1,798件の出願件数とARの盛り上がりが表れた結果です。また、出願件数の多い権利者TOP10はこちら。

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順位 権利者名 出願件数
1 APPLE(アメリカのソフトウェア製品開発・販売企業) 204
2 MAGIC LEAP(アメリカの複合現実ウェアラブルコンピュータ開発企業) 158
3 ジャガー(イギリスの高級車メーカー) 126
4 NETEASE(中国のスマホPCゲーム開発企業) 119
5 BAIDU(中国の検索エンジンを提供する企業) 66
6 GOOGLE(アメリカのインターネット関連サービスと製品提供企業) 60
7 NVIDIA(アメリカの半導体メーカー) 41
8 FACEBOOK(アメリカのSNSサービス提供企業) 38
9 THE VOID(アメリカの複合現実開発フランチャイズ企業) 34
10 MICROSOFT(アメリカのソフトウェア開発・販売企業) 33

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検索エンジン企業を牽引する2社が5位(BAIDU)と、6位(GOOGLE)にランクインしました。「検索エンジン企業×AR」とはどのようなものなのでしょうか。

[su_heading]「検索エンジン企業×AR」[/su_heading]

ゲーム以外の分野にARの普及

Baidu社は、AIとARをビジネス戦略の中心としていくと発表しており、AIとAR開発に2億ドルを投資し、元マイクロソフト役員のルー氏をAI部門のトップとして採用しました。また、北京で「ARラボ」をオープンさせ、2億ドルの資金を投じて55人を雇用している動きからも、今後ビジネス戦略の中心とし注力していくことは明らか。

同社はゲーム以外の分野にARを普及させる試みを始動させており、教育やヘルスケア、マーケティング、観光など関連サービスの開発を行うために2017年に「ARラボ」を設立させました。また、カメラ機能から商品などを撮影することでAR広告が起動する「AR広告」を用い、各企業のブランディング強化を進めています。また、歴史的観光スポットを「再建」するプロジェクトも始め、スマホで特定の写真をスキャンすると、遺跡の復元された姿を見ることができるなど、これらのARサービスは、世界を牽引する動きであると言われています。

同社の出願商標は、自動車運転開発「apollo」関連の出願がほとんどを占めており”Augmented Reality”を含む指定商品・役務は、下記内容の記載が確認できます。

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指定商品・役務(英語) 指定商品・役務(日本語)
Augmented reality software for use in mobile devices for integrating electronic data with real world environments for the purpose of locating vehicles 自動車の位置を特定し、地図を作成し、ナビゲートする目的で、実世界環境と電子データを統合するためのモバイル機器で使用する拡張現実感ソフトウェア

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APPLE社が2018年に特許申請し、運転中にドライバーが確認できる道路よりも、さらに先の道路をフロントガラスへ表示してくれるといったAR技術を開発中であると囁かれていますが、このような技術開発をBaidu社も進めているのではないかと感じる出願ではないでしょうか。

誰もが気軽に利用できるARの普及

Google社が、誰もが簡単にARコンテンツを作成できるために提供している「ARCore」や、空間への仮想的な落書きができるスマートフォン用アプリ「Just a Line」のリリースなど、同社は、誰もが気軽に利用できるARの普及に取り組んでいます。

画像:(左:ARCore出願商標、真中:Just a Line出願商標、右:Just a Lineの使用例、出典Google)

 

また、同社の一番最新のAR関連の出願商標「GOOGLE」の指定商品・役務に注目してみました。”Augmented Reality”を含む指定商品・役務はこちら。

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指定商品・役務(英語) 指定商品・役務(日本語)
Computer software for accessing and searching online databases and websites using image capture; headphones, tablets, headsets for virtual and augmented reality, and laptops; carrying cases and sleeves for mobile phones, smartphones, cameras, earphones, earbuds, headphones, tablets, headsets for virtual and augmented reality, and laptops; carrying cases and protective cases featuring battery charging devices, specially adapted for use with earbuds, earphones, and headphones; specially adapted carrying and charging cases featuring power supply connectors and battery charging devices for charging earphones and earbuds; battery chargers for earbuds, earphones, and headphones; イメージキャプチャを使用してオンラインデータベースとウェブサイトにアクセスし検索するためのコンピュータソフトウェア。 ヘッドフォン、タブレット、バーチャルリアリティ用のヘッドセット、およびラップトップ。 携帯電話、スマートフォン、カメラ、イヤホン、イヤホン、ヘッドフォン、タブレット、バーチャルリアリティ用のヘッドセット、ラップトップ用の携帯用ケースとスリーブ、 イヤホン、イヤホン、およびヘッドホンとの使用に特化したバッテリ充電装置を備えたキャリングケースおよび保護ケース。 イヤホンとイヤホンを充電するための電源コネクタとバッテリ充電装置を備えた特別に適合した携帯用および充電ケース。 イヤホン、イヤホン、ヘッドフォン用のバッテリー充電器、

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ドイツのニュースサイトWinfuture.deは、Googleが台湾メーカーのQuanta(クアンタ)と共同でARヘッドセットを開発していることを示唆する文書を入手したと報じました。本商標は第6,9,14,16,17,28,35,36,38,39,41,42類と幅広い区分で出願しており、上記指定商品・役務の内容からも、ARヘッドセット開発が伺えるような内容。正式な発表は確認できませんが、一般向けARヘッドセットの登場が間近に迫っているとささやかれており、期待が高まります。同社の「誰もが気軽に利用できるARの普及」の姿勢を感じさせられる出願商標の数々でした。

 

ARと聞くとゲームでの活用が先に浮かびましたが、権利者ランキングは予想外にゲーム業界の登場は少ない結果。今や、幅広い業界においてARの活用はトレンドであり、今後様々な場面でARの技術を目にすることが出てくることが想像できました。

 

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〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。