ドメインネームの世界において多くの場合、登録者について情報を得られるのはWhoisというサービスがあります。Whoisというのは、登録者についての情報を確認できる公開データベースのことです。ドメインネームの登録の際、Whoisへ登録されるデータ収集方法と項目はそれぞれICANNとgTLDsの間の契約にて決定されています。しかし、規則が緩かったり、検証制度がなかったりすることにより、不正確なデータが登録される危険性があります。インターネットは現在商標をめぐる侵害で溢れています。ある商標に対する侵害の可能性があるドメインネームが発見されても、その登録者情報が分からない限り、取り得る対策が制限されてきます。登録者情報が分からないことにより、時には交渉だけで解決されるような問題をUDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)あるいは裁判に持ち込むことにより、長い時間や必要以上の出費を要することがあります。本問題に関しては以前から指摘されてきましたので、ICANNは次の行動を起こしました。
ICANNは先日、The Study of the Accuracy of WHOIS Registrant Contact Information(Whoisにおけるレジストラントのコンタクト情報の正確度のスタディ)との調査の結果を公開し、インターネットコミュニティのためのパブリックコメントを開始しております。
本調査は、ICANNからの依頼があり、シカゴ大学における研究グループによっておよそ1年半に渡って行われました。同様の調査が実施されたのは2005年ですが、当時採用されていたリサーチ方法は不十分だとされております。今回は、ルートにて最も多くの割合を占めている5つのgTLDs (.com=73,7%, .net=11,2%, .org=6,7%, .info=5.0%, .biz=2.0%)を用いており、それぞれにおいての各国ごとからのレジストラント数のデータを重視し、1419のドメインをマイクロコズム的なアプローチを元にWhois正確性という観点から調べたと述べられています。中にはレジストラントが日本で居住している35のドメインもサンプリングされました。
登録されている情報を特定の方法で検証した結果、その他(1.1%)を除いては、正確なものは22.8%、名前と住所が一致しなかったが登録者を確定できたものは22.7%、住所と名前を確定できたが登録者に連絡を取れなかったものは24.6%、住所が存在せず、登録者を確定できたが連絡取れなかったものは7.1%、住所を確定できたが、登録者を確定できなかったものは13.8%、そして未確定のものは7,8%というデータを得ました。つまり、完全に信頼できるデータは22.8%のみですので、Whoisは情報の正確性に欠けるという欠点を示唆しています。ICANNは本調査を用いて、来年スタートする新gTLDsにも適応できるような新しいWhoisポリシーを作成する見込みです。それによってUDRPや新しく検討されているURSの手続きはスムーズ化され、より頼りやすい環境を作られます。
また、現在はドメインネームの検証は一つのトレンドであるとも言えます。個別のレジストリもドメインネームのコンテンツやWhois情報の確認作業を行っています。 例えば、.cnは2009年12月21日よりプライベート登録を制限し、ドメインネームコンテンツの調査のために新しいスタッフを採用しています。そして.ruも各ドメイン登録者にIDのコピーを提出するように発表しております(後者に関しては当社のホームページを後日ご確認下さい)。
上記のような試みにより侵害が減り、安全で使いやすいインターネット環境が作られることが期待されます。
本件に関する詳しい内容につきましては、お問い合わせください。