Internet of Things(モノのインターネット)の略である「IoT」。私たちの生活に身近になりつつある「IoT」は、自動車・交通機関・物流・医療・農業など、様々な分野で既に活用がされており、IoT関連の出願商標も年々増加しています。
2018年度出願の多い注目企業とは
世界最大の商標データベース「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で、指定商品名に”Internet of Things”を含む商標を検索した結果が 4,681件 。その内、2018年に出願された商標は1,680件。2018年に出願数の多い上位権利者はこちら。
[su_table]
順位 | 権利者名 | 事業内容 | 出願件数 |
1 | Amazon | ECサイト、Webサービス会 | 131 |
2 | A9.COM, INC.(エーナインドットコム) | Amazonがサービス開始した検索エンジン | 24 |
3 | DeepMind(ディープマインド) | イギリスの人工知能企業 | 18 |
4 | MICROSOFT(マイクロソフト) | ソフトウェア開発・販売会社 | 14 |
5 | FACEBOOK, INC. | 世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス | 13 |
[/su_table]
Amazonの子会社「A9.COM, INC.」
2位にランクインしたのは、Amazon.comが電子商取引の研究のために立ち上げた検索エンジンサイトを運営する会社A9.COM, INC.(エーナインドットコム)。2004年4月に試験サービスを開始し、同年9月に本稼働を始めました。
画像出典:https://a9.com/
同社の出願は全部で71件、その内”IoT”関連の出願が24件という形であり、凡そ4割の出願に関して”IoT”関連の出願であることがわかります。同社の出願で多くを占めているのは、Amazonが10億ドルで買収したホームセキュリティのRingが開発した「Neighbors」アプリ関連の出願。
IoTに関して最も注目を集める話題の一つに、セキュリティがありますが、その中でも、ホームセキュリティが主要な戦場となっており、その過熱度は増すばかりだと言います。
セキュリティに力を入れる理由
A9.COM, INC.が、2018年10月18日に出願している最新の商標詳細はこちら。
「NEIGHBORS BY RING」
[su_table]
区分 | 指定商品・役務 |
9類 | コンピューターソフトウェア; IoT(Internet of Things); 家庭および環境モニタリング、制御 |
11類 | 照明、暖房、蒸気発生、調理、冷蔵、乾燥、換気 |
12類 | [su_highlight]車載カメラ[/su_highlight] |
35類 | データ管理; データの収集 |
38類 | 電気通信サービス |
41類 | オーディオおよびビデオ録画サービス |
42類 | 自動家庭および環境モニタリングシステムの操作 |
45類 | ホームセキュリティアラーム監視サービス |
[/su_table]
Amazonは家の中だけでなく、車のトランクに配送するシステムも検討しているとみられており、それを裏付けるように、12類で”車載カメラ”が指定されて出願がされています。
Amazonが提供するサービスは年々拡大していますが、その一方で損失も増加しています。米国では、不在時に配達業者が玄関先に置いていった荷物を盗む”ポーチパイレーツ”は深刻な問題で、2017年の調査では、消費者の31%が荷物を盗まれた経験があるという結果も出ています。配送物の紛失や盗難は、Amazonの売り上げを減らすことに繋がるため、Amazonにとっては急務の課題。顧客の配送先を監視できるようになれば、これらの問題を減らせる可能性があるため、同社はセキュリティ事業を強化しているのです。
1位のAmazon社でも多くのIoT関連の出願を行っていますが、「Neighbors」を含む出願は確認できません。「Neighbors」関連の事業にA9.COM, INC.がどのように関わっているのかは、確認できませんでしたが、「Neighbors」関連の出願に関しては、A9.COM, INC.を出願人とした管理をしていると考えられます。世界中から注目されるAmazon社の出願商標。少しの変化においても話題となってしまうため、情報が洩れることを防ぐための知財戦略なのかもしれません。
求められる知財戦略
5位にランクインしたFacebookの出願からは、2018年10月8日に発表した最新製品である、スマートディスプレイ”Portal”関連の出願が確認できます。この商標は、発表日と同日に出願を行った形であり、出願内容から情報が洩れることを懸念して出願日をコントロールしたことが伺えます。先行する技術を用いる商標は、特許庁の審査官も判断することが難しく、最終的な指定商品が具体的表記になることが多くあります。当事者にとっては将来の事業がわかりやすくなってしまうことになりますが、競合としては戦略の一端を垣間見ることができます。どのようにオープン、クローズをしていくのか、知財のレベルでも検討をすべき時代になっています。
〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp
2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。