2015年4月に、特許庁は新しいタイプの商標権として、立体、音、動き、ホログラム、色彩のみ、位置を客体とする商標権も認めるようになりました。
日本国内の出願登録状況はどうなっているの?
J-platpatで調べてみると、2月現在の新しいタイプの商標出願・登録状況は以上の通り。全部で3526件のうち、内訳としては立体商標2679件、音商標336件、動き商標139件、ホログラム商標14件、色彩のみ商標128件、位置商標230件となっています。つまり、8割近くが立体商標ということになります。
じゃあ、実際に登録された数って?
数字にしてみると全部で4000件近くとかなり多いようにも感じられます。しかし、実際の登録件数でみてみると…
全部で1,679件のうち、内訳としては立体商標1,224件、音商標262件、動き商標103件、ホログラム商標124件、色彩のみ商標7件、位置商標71件となっています。日本では毎年10万件以上の商標が登録されていることから考えても、まだまだ新しいタイプの商標はなかなか認められづらい状況であることがわかりました。
色彩のみ商標は認められにくい?
データを見ていて特に目立つのは、色彩のみ商標の7件という少なさ!全128件中7件なので、なんと5%しか認められていません。
色彩のみ商標が認められるということは、文字や図形関係なく、ある色をみれば、あの会社だなと思いだせる状態が一般的になること。しかも登録されればそれ以降範囲が限定されるとはいえ、その色は他の人が全く使用できなくなってしまいます。こうしたハードルがかなり高く、他の新しい商標と比較してもさらに認められづらいようなのです。
例えば日本では、MONO消しゴムのカバーの青白黒ストライプの色と、セブンイレブンの看板のストライプの色が初めて認められた色彩のみ商標です。
海外の動向は?
これだけ有名にならないと認められづらい色彩商標ではありますが、海外ではどんな状況なのでしょうか。
日本では今のところ、色彩の組み合わせでしか商標は認められていません。しかし海外では1つの色だけに対する商標を認めている例があります。
EUIPOのデータベースで商標タイプを色に限定して検索してみると、1072件も出てきました。ざっとみてみても、意外と単色登録が見られます。
たとえばT-mobileのマゼンタカラー。HPを見てもわかる通り、マゼンタカラーを全面に押し出してきています。(https://www.t-mobile.com/)
このマゼンタカラー、ヨーロッパの色彩規格であるRALで、Deutsche Telecom Colorsという色彩名での登録もされていますし、BeMagentaというサイトではこのマゼンタカラーのT-mobileグッズを大々的に販売しています。
私はこの色をみてもピンとこずイメージがわかないので、当社の海外メンバーにも聞いてみました。するとこの色だけ見てもT-mobileだとはならないけれど、言われてみればこの色だという認識はあるとのことでした。色とブランドを強く結びつけるのはなかなか難しいことのようです。
さいごに
今回は新しい商標の中でも色彩のみ商標に焦点を当てて学びました。 赤色は情熱的なイメージ、青色は落ち付いた冷静なイメージ、ピンクは可愛いイメージ、黒は洗練されたイメージなどなど。人にとって少しの違いはあるものの、一般的にその色に対するイメージがありますよね。こうしたイメージと商標とを繋げて、さらなるブランド確立につなげていく取り組みを垣間見ることができました。