世界最大の商標データベースGlobalBrandDatabase(以下GDB)で、革製品などが対象の第18類の出願件数上位5社を確認した結果、2位から4位には世界を代表するファッションブランド名が連なりました。
第18類出願件数上位5社
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順位 | 権利者 | 事業内容 | 出願件数 |
1 | ディズニー・エンタープライゼズ | ディズニーの著作権や商標権を一手に管理している会社 | 1,206 |
2 | HERMES | フランスを代表するファッションブランド | 718 |
3 | GUCCI | イタリアを代表するファッションブランド | 616 |
4 | LOUIS VUITTON | フランスを代表するファッションブランド | 561 |
5 | バイアコム・インターナショナル | 世界的メディア企業 | 498 |
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第二位にランクインした世界を代表する高級ブランドHERMESをご紹介します。
売上高と出願の関係性
同社の出願商標を見ていると、非常に多くの香水関連の出願が確認できます。香水などが対象となる3類の出願件数は、2014年は0件、2015年は32件、2016年は1件、2017年は52件と出願件数が顕著に増えていることがわかります。
2017年12月期決算によると、全体の売上高が好調な中、商品カテゴリー別の売上高は、レザーグッズが9.7%増、衣料・アクセサリーが9.4%増、シルク・スカーフが5.7%増、香水は10.1%増であり、香水の売上増加による出願件数の増加という背景が伺えます。同社の香水は香りの人気ももちろんですが、ファッショナブルな見た目も人気の理由。香水のパッケージ商標の出願に力を入れ、視覚を重視していることがわかります。
出願区分の多い5区分
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順位 | 区分 | 商品・サービスの具体例 | 件数 |
1 | 第18類 | かばん類,財布,革製品など | 720 |
2 | 第14類 | アクセサリー,貴金属,宝飾品,時計など | 307 |
3 | 第25類 | 被服,服飾小物,履物など | 295 |
4 | 第3類 | 香水,化粧品など | 290 |
5 | 第21類 | 化粧用具,ガラス製品など | 221 |
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商標を出願する際には、その商標を使用する商品や役務(サービス)を指定するのですが、その指定された商品や役務が属する業種も合わせて指定します。 この業種のことを”区分”と言い、1~45区分が存在します。上位5区分はいずれも売上高の好調な商品カテゴリーと一致していることが伺え、売上高と出願の関係性の高さが考えられます。
バーキンの知財戦略
高級バックとして人気の高い”バーキン”。バーキンは、バッグのデザインなどを保護する意匠権として登録(登録第1415239号)されていますが、立体商標としても登録されています。同社ではロングセラー商品や定番商品の識別性・著名性の獲得にも積極的に取り組んでおり、20年で権利消滅してしまう意匠権のみでなく、商標権取得で強化している形。
商標権は、何度でも更新することができるため永久的に権利を持続させることができます。バーキンの場合は、長年使用され続けた結果、「このデザインと言えばバーキン」と多くの消費者が認識できることができるようになっており、立体商標として登録に至りました。見た目の美しさにこだわり抜き、識別性・著名性を獲得した同社の取り組みが伺えます。
画像出典:GBD結果より
ファッションブランドは視覚が重要
また、出願商標の特徴としては、多種多様の”H”マークが出願されていることに気づかされます。様々な製品に”Hマーク”が施され、HERMESブランドをデザインしているのです。
冒頭のランキングでご紹介した、HERMES、GUCCI、LOUIS VUITTONの出願態様(文字商標、図形商標、結合商標など)の割合をグラフ化したものがこちら。
いずれのブランドも、文字商標は少なく、図形商標と結合商標が多くを占めている結果でした。パッと見てどこのブランドかが判断できることが重要なファッションブランドならではの、視覚を重視した本業界の出願特色なのではないでしょうか。
〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp
2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。