— 商標権者が押さえるべき権利行使の留意点とは
韓国において2024年10月17日に公布された商標法改正により、2025年7月22日から以下2点の重要な変更が施行されます。
① 異議申立期間の短縮:2ヶ月 → 30日へ
改正後、商標登録公告に対する異議申立期間は、従来の「2ヶ月」から「30日(約1ヶ月)」へ短縮されます。
これは、異議申立による権利保護を図る際の初動判断に求められるスピードが大幅に上がることを意味します。
実務上の留意点
- 権利者は、公告時点での迅速なチェック体制を整える必要があります。
- 出願人の意図的・戦略的な模倣行為に早期対応するため、ウォッチングの頻度と運用フローの見直しが推奨されます。
- 異議申立の検討・起案・社内承認・提出という一連のステップを30日以内に完了させる体制整備が求められます。
② 懲罰的損害賠償の上限引き上げ:3倍 → 最大5倍
改正法では、悪意をもって他人の登録商標を侵害した場合における損害賠償制度も見直され、懲罰的損害賠償の上限が「最大3倍」から「最大5倍」へ引き上げられました。
これにより、商標権の侵害行為に対してより強力な抑止力が働く制度設計となります。
懲罰的損害賠償とは
- 通常の損害(実損額)を超えて、加害者の故意や悪質性に基づき追加的に課される賠償額。
- 今回の改正では、侵害によって得られた利益額等を基準に最大5倍まで請求可能と明示されました。
実務上の留意点
- 故意・反復的な模倣行為に対して、強制力のある民事的制裁を与える道が明確化されました。
- 権利者としては、懲罰的賠償請求を見据えた証拠収集(侵害の意図・模倣の経緯・利益額の把握など)が今後一層重要になります。
- 不正競争防止法との併用も含め、戦略的な権利行使の設計が求められます。
総括:権利者の「予防」と「行使」体制がより重要に
今回の改正は、意図的な模倣や悪質な商標利用を早期に検知・排除するための制度的強化といえます。
権利者が講じるべき対策
- ウォッチング体制の運用見直し(モニタリング範囲・頻度・担当者)
- 異議申立判断までの社内フロー短縮(目安:7〜10営業日内)
- 損害算定・模倣立証のためのログ・証拠収集プロセスの事前設計
ブランド戦略における「防御」と「攻勢」の両輪を機動的に運用するうえで、今回の法改正を機に韓国市場における権利保護スキームの再構築を検討されることをお勧めします。
商標に関するご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。