事業が大きくなってきたので、そろそろ海外に進出したい。
日本ではすでに商標を取得している。
安全に事業展開するために進出先の国で商標登録したいが、どうすれば良いか?
海外で商標を権利化するには、以下の2つの方法があります。
①各国に直接出願する
②マドリッド協定議定書に基づき複数国に一括して出願する
①各国に直接出願する方法とは
では、各国に直接出願する方法を説明していきます。
ご自身が現地代理人に直接依頼しても良いのですが、信頼がおける現地代理人を探すのも現実的に難しいですよね。
まずは、現地代理人とコネクションを持っている日本の国際商標事務所に相談するのが一般的です。
価格は事務所によって異なりますので、複数の事務所に相談して見積もりを取ると良いでしょう。
②マドリッド協定議定書に基づき複数国に一括して出願する
「マドリット協定議定書」に基づき、複数国に一括して手続きを行う方法です。
(以下、マドプロ出願)
2020年11月時点で、主要国を含め106カ国が加盟しています。
一見、難しそうに感じますが、要は、「日本の特許庁への出願を基礎として、各国に出願する方法」となります。
自力で日本の特許庁に国際登録出願(=マドプロ出願)をすることも可能ですが、直接出願とマドプロ出願、どちらにもメリットデメリットがあります。
また出願国によっても、どちらを選択すべきか注意点がありますので、マドプロ出願の場合でも、まずは日本の国際商標事務所に相談してみると良いと思います。
直接出願とマドプロ出願のメリットとデメリット
一例として、問題になることが多い中国に出願する場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
<中国に直接出願する場合のメリット>
・類似群ごとに確実に権利化できる
・登録証が発行される
・出願の事実がすぐに中国商標局へ反映される
<中国に直接出願する場合のデメリット>
・管理コストがかかる
・中国における標準的な指定商品・役務しか選択できない
<中国にマドプロ出願する場合のメリット>
・中国における標準的な指定商品・役務にない表現を指定できる
<中国にマドプロ出願する場合のデメリット>
・別途申請しないと登録証が発行されない(権利行使に時間がかかる場合がある)
・本国の登録内容をベースにするため、中国における標準的な指定商品・役務とマッチするとは限らない。そのため、中国において保護したい類似群が必ずしもカバーできず、後願を排除できない可能性がある。
・中国に通達されるまでにタイムラグがある。その間に類似商標が出願されてしまった場合には別途異議申し立てをする必要があり、費用がかさむ。
・拒絶査定が発行された場合、正式な保護認容声明は発行されない。拒絶査定に対する不服審判請求をした場合には決定書が保護認容声明の代わりとなり、一部拒絶容認で対応しない場合(一部登録になる場合)にはまったく何も発行されない。
・拒絶査定が発行された場合、保護認容のデータベース反映がかなり遅い
・中国国内では公告されない。マドプロの公報が代わりとなる。
一般的に、マドプロは出願・登録・更新の費用を節約できることが大きなメリットです。
特に国数が多ければ多いほど、手続きが簡便なので3か国以上まとめて出願する場合にはマドプロ出願をお勧めします。
デメリットとしては、事前に指定商品・役務の表示について適切か各国代理人のチェックが入らないため、出願後に補正通知がくる可能性が高くなることが挙げられます。
また、基礎の権利にしばられる(もし日本で拒絶を受けた場合、商品を削らなければいけない)などが挙げられます。
まとめ
どちらの方法で出願するかは、出願する国や出願国数によって最適解が異なってくることがお分かり頂けたかと思います。
弊社では、ほぼ全ての国の代理人と提携しておりますので、調査・出願・登録・更新の商標手続きを一元管理したい場合は、弊社にご相談いただければと思います。
出願する国や出願国数によってどちらの方法を選択した方が良いかご相談いただければ、お客さまによってベストな方法をご提案いたします。
まずは、お気軽にお問い合わせください。
参考資料:
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/madopro_kamei.html
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/panhu18.pdf