権利侵害撲滅調査団シリーズ 侵害者をあぶりだせ!ママに大人気の抱っこ紐ブランド「ergobaby」を調査してみた

インターネットで商品を気軽に購入できるようになった昨今。
いままでは海外(特に中国!)の遠い話だと思っていた「模倣品」に出会う機会も確実に増えております。
模倣品と聞いて想像する商品はどのようなものでしょうか?形の崩れたキャラクターの人形、明らかに変なマークのスニーカー……そのような粗悪品を想像する方も多いかもしれません。実はこの模倣品、最近ではそのレベルがあがり本物と見分けがつかないようなそっくりなものも増えております。

しかし所詮は模倣品。粗悪な作りから事故につながるケースも多数報告されております。模倣品対策をせず放置して事故が起こってしまった場合には、対策をしなかった企業責任になるケースもあるため、企業側は日夜模倣品業者との闘いを繰り広げているのです。

ご挨拶が遅れました。関西営業の村上と申します。
いままで営業として様々な企業にお伺いしておりましたので、この記事を読んでいただいている方の中にはご面識のある方もいらっしゃるかもしれません。今は営業アシスタントとして権利侵害調査などをしております。
「模倣品あるところに権利侵害あり」
ここでは侵害者がどのようにブランドを侵食しようとしてくるのかを、商標権侵害やドメイン侵害などの具体事例をもとに見ていこうと思います。

第一回目はお子さんがいるご家庭なら皆さんご存じ、アメリカの抱っこ紐ブランド「ergobaby(エルゴべビー)」を調べてみたいと思います。

     

      

腰で赤ちゃんの体重を支えることにより、長時間抱っこしても疲れない、ということで人気の抱っこ紐なのですが、残念ながら多くの模倣品が流通してしまっております。
日本においても「強度に問題がある偽物」が見つかっています。バックルなどの強度不足は赤ちゃんの落下事故にもつながってしまうリスクがあり、生死に関わる大問題。
購入するママたちは「エルゴ 模倣品」で検索をかけて偽物を購入しないよう注意している、という話もよく聞きます。

では模倣品製造大国である中国で、彼らの権利状況はどのようになっているのでしょうか。

      

明らかに狙われている!中国での権利状況

自社で保有している商標一覧は以下です。

      

次に「ergobaby」での検索結果(一部)

多くの第三者が「ergobaby」商標を出願しています。ただメインの抱っこ紐区分である18類はもちろん自社で権利を保有しており、第三者出願は拒絶されています。気になるのは18類以外での第三者出願。

24類、赤ちゃん用のおくるみ

中国にておくるみの販売もしているようですが、手当てをしていなかったため、第三者によって2019年3月に登録をされてしまっています。これではおくるみの模倣品を堂々と作られても何も言えなくなってしまいます……

そして現在公告中となっている「ergobaby」35類商標。
この35類、ご存じの方も多いかと思いますが第三者に狙われやすい「くせ者区分」です。
狙われやすい35類の役務は「小売り」(中国を除く)。
例えば小売りの35類を権利化された場合、「ergobaby」の看板を掲げて、他社の抱っこ紐を販売するような店舗を作られても文句は言えなくなってしまいます。

やっかいなのは商品商標を保有していたとしても、国によってクロスサーチされたりされなかったりするという点。クロスサーチされない国においては35類も防衛のために出願検討をしておく必要があるのです。
中国では小売りはまだ薬剤の部分でしか指定できないので、「フランチャイズ」だったり「広告宣伝」という役務で狙われる傾向にあります。

      

    

他にも3類の化粧品や10類の哺乳瓶などの区分でも第三者出願が確認できます。実際に展開はしていない区分ではありますが、「ひょっとしたらエルゴベビーが展開しているのかな…?」という誤認混同を与えるような区分が狙われているのがおわかりいただけるかと思います。

このように侵害者はHP情報や展開状況をよく見た上で侵害をしておきます。展開している商品はもちろんのこと、展開予定商品区分や、第三者によって権利化されたらいやな区分も権利化検討をしておく必要があるのです。

百度やショッピングサイトから怪しい商品を見つけてみる

では商標情報だけでは見えない、ブランド周りの第三者の動きを、今度は百度(中国の検索エンジン)やショッピングサイトから見ていってみましょう。

アリババにて「ergobaby」でヒットした商品です。

大量に床に積み上げられたパーツ。そして狭い部屋でミシンで手縫いで作られている光景……どう見ても怪しいですよね……
そして詳細を見ていくと

ぱっと見、エルゴベビーのように見えるのですが……

ロゴは「eggbaby」になっていました……

そして調べてみると、商標登録されている「eggbaby」
これはもう堂々と作っていても仕方がないですね。
ただ出品のタイトルが「ergobaby」になっているので、アリババ側に訴えて削除をすることは可能だと思われます。

そしてこんな出品も。

「omni360」はエルゴ社の登録商標なのですが、それをタイトルに使用した出品です。

「ergobaby」商品なのかなと思い商品をよく見てみると、ついている商標は「ergokids」。
「baby」ではなく「kids」です。成長していますね……

そしてこちらも商標登録されていました。

個人名での出願ですので、先の商品との関係性や悪意の有無は明確にはわかりませんが、「ergobaby」の商品や権利周りで第三者があの手この手でうごめいている様子がおわかりいただけるかと思います。

まとめ

今回見ていただいたように、中国の侵害者たちは様々な工夫を凝らして侵害をしてきます。 ブランドを守りたければ、他者に入り込まれたくない部分はがっちりと厚めにガードすること、そして第三者がどのように動いているのかということに対しアンテナをはり、常に情報収集をしておくことが重要になってくるのです。

今回は具体事例として出てきませんでしたが、商標侵害や模倣品が出ているときにはドメインも侵害されているケースも散見されます。
また中国以外での商標権侵害が起こったり(最近はベトナムやロシア、南米での冒認出願もよく目にします)越境ECにて自分たちが予期しない国で商品流通していたりというケースもございます。
何か問題が起こった場合には、その具体案件を対応するとともに一度権利周り全般を見ていただくことをお勧めいたします。

お困りごとや、少しでも不安がある場合にぜひ一度ご相談いただければ幸いです!


〈ライタープロフィール〉
村上 加苗 (むらかみ かなえ) 
GMOブライツコンサルティング株式会社

営業部/関西営業アシスタント

2011年入社。営業マンとして6年ほど勤務した後、出産を機に営業アシスタントへと転向。現在は年間300以上のブランド調査をしています。侵害者目線からの商標、ドメインなどといった侵害発見を得意としています。趣味はお酒、ダイビング、漫画。

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