先日ニュースサイトを見ていたら、下記のようなニュースがありました。
知財担当でないと何のことかが分からないかもしれませんが、商標は一定期間使用をしていないと取り消されてしまう可能性が、多くの国であります。EUの場合は、登録から5年間です。
今回のニュースでは、”BIG MAC”は、使用していないという判断がされたとのことです。
まだ、異議申し立てができるとのことで、最終的な取消確定になっているわけではありませんが、日本でも昔からなじみのあるハンバーガーですので、少し驚きです。
現在の権利状況は?
おなじみのGlobalBrandDatabase(以下、GBD)で少し探ってみました。
ヨーロッパでの”BIG MAC”の出願を見てみると、1996年と2017年に出願をしていました。 今回、不使用取消を申立られたのは、1996年の商標(000062638)です。
EU知的財産庁(以下、EUIPO)のデータを見てみると、不使用取消の申し立てがあったのは、2017年4月28日です。
この申し立てがあったからだと思いますが、2017年10月6日に、新たにEUIPOに ”BIG MAC”の出願(017305079)をしています。現在は登録となっていますが、登録から5年が経過していませんので、不使用取消を申し立てられることはありません。
各国の考え方は?
今回の商標について、どのような判断がさらにされていくのかは定かではありませんが、各国では、使用意思がある/使用してる人が登録を維持していくべき姿勢が少し伺えます。
アメリカは使用主義の国のため、使用していることを一定期間ごとに提出をする必要があります。使用証拠を提出できない場合、商標は自動的に消滅します。そうすることで、色々な産業、企業が新陳代謝しやすい状況を作りだせていると言えます。
韓国では、取消審決が確定した場合、商標権者は3年間は同一または類似の商標について登録できなかったり、取消審決確定後、6ヶ月間は取消審判請求人のみが商標登録を受けることができたりします。
シンガポールでは、今回と同じようなケースで、不使用取消対策のために再出願したところ、その出願は無効とされてしまった判例があると当社商標部メンバーからはヒアリングができました。
商標は本来的には、使用を前提として出願するものです。アメリカのような制度でないと、出願時に使用するかどうかの意図を庁が判断することは事実上できませんが、今回の”BIG MAC”のような時系列で再出願をすると、使用を本当にするの?と疑念を持たれ、不正な出願とみられてしまう可能性は否定できないかもしれません。
日本でも、いたずらに有名なブランド名やサービス名をたくさん出願してしまう悪意ある出願にフォーカスがあたっていますが、今回のようなケースにより、各国での保護取得をどのようにしていくべきなのか?を考える良い契機にはなったと思います。
まとめ
企業としては、事業展開する可能性がある以上、早めに出願をして登録しておかないといけない宿命もあるので、決して不正なものではないのですが、国の制度、各国の判例などを考慮しながら、商標不使用対策のための再出願を検討する必要はありそうですね。
因みに、スペインのマクドナルドのサイト(https://www.mcdonalds.es/productos/sandwiches)を見てみると、ばっちり販売しています。
ウェブページを更新していないだけで、ヨーロッパでは本当に販売してないのかな??
〈ライタープロフィール〉
寺地 裕樹(てらち ゆうき)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業本部 IPソリューション部
consul@brights.jp
2008年に入社後営業部の主力メンバーとして、営業数字を牽引。2012年には、当時最年少で営業部部長に就く。現在は、商標・ドメインネームに関するコンサルティングを主に行うIPS部、営業部、営業管理部を率いる営業本部副本部長として従事。趣味は、家族と週末農家、インラインスケートなど。