イギリス知的財産庁(UK Intellectual Property Office:IPO)は、
2026年4月1日より商標関連手数料を引き上げる方針を発表しました(議会承認後に正式施行)。
今回の改定は1998年以来、約28年ぶりの大幅な見直しであり、商標出願・更新・異議申立て・無効審判・
所有権変更など、多岐にわたる手続きに影響します。
イギリスを商標戦略に含める企業にとっては、出願タイミング・更新コスト・管理体制の再点検が急務です。
主な改定内容(商標関連)
以下は、今回発表された主な改定項目です。すべて2026年4月1日以降の新料金となります。
| 項目 | 現手数料 | 新手数料 | 差額 |
| 商標出願(オンライン1クラス) | £170 | £205 | +£35 |
| 商標出願(紙申請) | £200 | £250 | +£50 |
| 1分類追加クラス | £50 | £60 | +£10 |
| 商標登録10年更新 (オンライン/紙共通) | £200 | £245 | +£45 |
| 対抗・異議申立て (先願・先登録商標との同一または類似を理由とするもの) | £100 | £125 | +£25 |
| 異議申立て(その他理由) | £200 | £250 | +£50 |
| 無効審判/不使用取消申請 | £200 | £250 | +£50 |
| 所有権変更記録 | £50 | £60 | +£10 |
引き上げの背景
IPO の発表によれば、商標関連手数料は 1998年以来増額されておらず、その間のインフレ累計(概ね32%)や運営コストの上昇をカバーするため、平均で約25%の値上げを実施するとしています。
「デジタル化・効率化によりこれまでは手数料を据え置いてきたものの、もはやそれだけでは十分ではない」との説明です。
実務担当者が押さえるべきポイント
イギリス(UK)は欧州離脱(Brexit)以降、商標・意匠制度において独自の動きを見せています。
今回の手数料引き上げは、イギリスを含む商標戦略の予算見直しの機会とも言えます。
日本を含むグローバルブランド・企業の商標担当者として、以下のポイントをご留意ください。
出願タイミングの前倒しを検討
施行前(2026年3月31日まで)にオンライン出願を完了すれば、現行の手数料が適用されます。
イギリス出願を予定している場合、早期申請を検討することがコスト対策の第一歩です。
更新費用の上昇とポートフォリオ最適化
既登録商標の10年更新など、維持コストも上昇します。ポートフォリオ規模が大きい企業ほど負担が
増えるため、更新年次・対象クラスの見直しなどを検討する必要があります。
異議・取消・所有権変更などの手続コスト増にも注意
商標出願だけでなく、ポートフォリオ強化・防衛戦略の実施コストも上がります。異議申立て・
無効化手続き等の実務案件がある企業は、スケジューリングを改めて確認する必要があります。
為替・予算管理の再設計
たとえば £170→£205の改定 は、1 £=200円換算で7,000円(約34,000円→41,000円)のコスト増となります。為替・インフレ要因も踏まえた予算策定が有効です。
今後のスケジュール
- 現行料金の適用期限:2026年3月31日まで
- 新料金施行予定:2026年4月1日(議会承認後)
IPOは早期に詳細ガイダンスおよび改定手数料一覧(CSV形式)を公開予定。
議会承認状況・イギリスIP制度の動向(例:デジタル化・国際協力)も併せて注視が必要です。
まとめ
今回の改定は、単なる「手数料引き上げ」ではなく、イギリス商標制度の維持・発展を支えるための
制度調整とも位置づけられます。
とはいえ実務上は「費用増=戦略変更・タイミング前倒し」が鍵となります。
日本・アジア拠点のブランドオーナーにとっても、イギリスを含めたグローバル商標戦略の再検討を
促されるタイミングと言えるでしょう。
商標に関するご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
