【ドメインニュース】今すぐ備える模倣品リスク――越境EC時代のブランドを守る方法(2025年6月号)

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🛡️【5分で読める】越境EC模倣品の対策、なぜ“今”税関登録と制度活用がカギなのか。
SHEINやTEMUなど中国発の越境ECサイトを通じて、模倣品が世界中で出回る今―― 4月号では、日本企業が取り得る「現状把握・防御・監視」の基本方針をご紹介しました。
その続編として、より詳細な対策を解説します。
また、注目が集まる税関登録と、アリババグループの「誠心クレーム制度」など、制度を活用した先進的な模倣品対策も詳しく解説します。
さらに、AmazonやShopeeなどの主要プラットフォームで使える申立制度や、日本企業が実践できる“よくある対策”リストもまとめました。
実効性のある模倣品対策をお探しの方は、ぜひ最後までご覧ください!

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📣トピック|越境ECサイトに対する規制強化が世界で始まった。日本企業はどう対策するべきか。

SHEINやTEMUといった中国発の越境ECサイトの急成長により、各国でブランドや知的財産の侵害が深刻化しています。これらのサイトでは偽造品の流通が確認されており、正規ブランドの価値が損なわれるだけでなく、消費者の安全性にも影響が出ています。
こうした状況を受け、各国が次々と規制強化をしています。当然ながら、日本企業も早急に対応を検討する必要があります。

本記事では、各国の対応事例を紹介しつつ、日本企業が取り組むべき具体的な対策について整理しました。
※本テーマについては、2025年4月号で各国の動向と対策の要点をお伝えしましたが、今回は事例や対策内容をさらに掘り下げ、より実践的な視点で解説していきます。

🌍 各国の主な規制事例

アメリカ
2025年4月、アメリカは中国・香港からの800ドル以下の小口輸入に対する関税免除を廃止する大統領令に署名。同年5月より免税が廃止され、関税を課すことで安価なブランド侵害品の流通抑制が効果が期待されます。
※なお、関税率は日々見直しや変更が行われており、最新情報の確認が必要です。

メキシコ
メキシコ政府も同様に、電子商取引経由で流入する中国製の低価格商品に課税強化の姿勢を打ち出しています。2024年1月以降、特定の品目に対して追加関税が適用され、EC業者を介した偽造品の流通抑制を狙っています。

欧州連合(EU)
EUでは、越境ECを通じて販売される商品の検査体制を強化する方針。流通前の段階で安全性や正規性を確認するスクリーニング体制を整備し、消費者保護の観点からも実効性のある制度設計を進めています。

ベトナム
ベトナムでは、同国のEC法令に違反したとして、TEMUに事業停止命令を出すという厳しい対応を取りました。2025年4月時点でも事業再開の見通しは立っておらず、法規制を軽視した越境ECの進出が排除される時代へとシフトしつつあります。

🛡️ 日本企業が取るべき3つの対策

① 市場状況の把握と実態調査
まず、自社が進出している国・地域のマーケットプレイスにおいて、どのような商品が、どの頻度で出品されているのか把握することが第一歩です。
定期的な調査だけでなく、現地法人や取引先などへのヒアリングも合わせて行い、早期にリスクを検知しましょう。

② 防御策の強化と備え
権利の未整備は、模倣品対応の大きな障壁となります。とくに模倣品の多い中国・東南アジアでは、商標登録を優先的に進めておくことが重要です。
また、Amazon Brand Registry や 淘天知識産権保護平台(アリババグループ)などの権利者向けプログラムに事前登録することで、トラブル発生時に速やかに対応できます。

③ 継続的な監視と速やかな対応
出品の監視は一度きりでは意味がありません。専用の監視ツールを活用して定期的に確認し、模倣品が発見された際には速やかに削除申請を行いましょう。
社内のリソースが足りない場合は、削除申請やレポート作成を外部委託する選択肢も視野に入れてください。

🤝 その他日本企業が行う施策は?(まずはできることから!)

ー 公式ストアをAmazon・Shopeeなどで公式ストアを開設し正規購入ルートへ誘導
ー SNSや公式HPで「本物と偽物の違い」を発信し、消費者の意識を向上
ー 商品にホログラム・認証QRコードを導入し、本物であることを見える化
ー 税関や団体と連携し、輸出入時点で模倣品をブロック
ー 1社では難しい課題は、業界団体や政府と連携して声を上げることも重要です

📝 まとめ

SHEINやTEMUの影響により、世界的に模倣品への対応が加速しています。日本企業にとっても「①現状把握」「②防御」「③監視・排除」の3点を軸に、ブランド価値を守る戦略的な対応が欠かせません。
今こそ、被害を未然に防ぐ“攻めのブランド対策”が重要です。

|引用|
reuters.“米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も”.Lisa Baertlein.2025-05-02,https://jp.reuters.com/world/us/QEF76FQWTBLIVCCN6KEZZ5UJ7Q-2025-05-02/,(参照 2025-06-10)

📣シリーズ【ビジネス成功の極意:税関登録、誠心クレームなどによる模倣品対策】

上記トピックに関連し、本記事では、特に注目すべき対策として「税関登録」と「誠心クレーム制度」に焦点を当て、日本企業が実施可能な模倣品対策のあり方を解説します。

🚢 税関登録とは何か:輸出入段階での“水際”防止

模倣品対策の中でも、もっとも実効性の高い施策のひとつが「税関登録」です
これは、自社の商標や著作権、特許などの知的財産権を税関に事前登録しておくことで、税関が模倣品を自主的に識別し、輸出入時点での差止めが可能になる制度です。

たとえば、中国税関では知的財産権保護専用の登録制度が整備されており、登録済みの権利については、通関時に疑わしい貨物が差し止められ、通知が届く仕組みがあります。
これにより「市場に出回る前に止める」という極めて高い予防効果が期待できます。

📌 近年、日本企業でも、中国や東南アジアにおける税関登録の事例が近年増加しており、グローバルブランド保護の観点からその重要性は今後さらに高まると考えられます。

🧾 誠心クレーム制度とは:プラットフォーム上での効率的な削除対応

中国アリババグループが運営する淘天グループ(淘宝・天猫・天猫国際)では、「誠心クレーム制度(诚信投诉机制)」という、正確で信頼性の高い権利者・代理人に対して、簡便かつ迅速なクレーム処理を可能とする優遇対応制度(上級会員)を提供しています。

ただし、申立の精度が落ちると資格剥奪や再申請の制限もあるため、継続的な品質管理も重要です。

🧭 日本企業が取るべき戦略的アプローチ

◆ 権利の整備と登録強化
模倣品の多くが中国やASEANから出荷されている現実をふまえ、現地での商標・著作権・特許の登録を優先的に進めましょう。
➡ 登録がなければ、税関登録や削除申立の法的根拠自体が失われます。

◆ プラットフォーム制度の最大活用
要マーケットプレイスでは以下のような制度が提供されています。
 ● Amazon:Brand Registry
 ● アリババ:淘天知財保護プラットフォーム
 ● Lazada/Shopee:各国の知財申請制度
➡これらをフルに活用し、出品削除のルートを事前に整備しておくことが重要です。

📝 まとめ

モニタリングと削除対応のすべてを自社内で対応するのが難しい場合、専門会社への委託という選択肢も有効です。
当社では各国における税関登録及びWEBサイト監視・マーケットプレイスの出品監視・侵害出品の及び侵害投稿の削除対策サービスもご提供していますので、自社で全てをカバーするのが難しい場合は、当社にお気軽にご相談ください。

|引用|
国务院办公厅.“关于改革完善医疗卫生行业综合监管制度的指导意见”.中华人民共和国中央人民政府.2018-05-29,https://www.gov.cn/zhengce/2018-05/29/content_5723336.htm,(参照 2025-06-10)
著者不明.“知识产权平台首页”.淘宝网,https://ipp.taobao.com/home.htm#/home,(参照 2025-06-10)

📣統計情報

TLD別ドメイン登録件数

gTLD/ccTLD/新gTLDの3つのTLD種別における全体のドメイン登録件数とその内訳を示しています。カッコ内の数字は前月との比較となります。gTLDおよびccTLDは前月に比べわずかに増加しました。一方、新gTLDは今年初めから継続的な増加傾向が見られます。Totalでは0.67%(360,196,483件)増加した結果となりました。

📣TLD情報

以下のTLDについて、優先登録・事前受付・期間限定受付など、各種登録受付が順次開始されています。詳細未定の項目については、今後情報が更新され次第ご案内いたします。関心のある方はお気軽にご相談ください。
※文字列によりプレミアム価格が適用される場合があります。

【優先登録開始予定の新gTLD 一覧】

事前登録受付中の新gTLD 一覧】

登録対象者: 医療・ヘルスケア関連事業者全般
       (病院、医療機関、製薬・バイオ企業、医療機器メーカー、保険会社、
       デジタルヘルス、フィットネス、研究者、教育機関、歯科、獣医など)
対象ドメイン:医療業界用語、医薬品名、地域名・企業名、
       1~3文字のプレミアムドメインなど

期間限定受付(ccTLD)

タイの「.th」セカンドレベルドメインの第2ラウンドの申請受付が開始されました!
.thドメインを登録できるのは、THNICレジストリが定めたスケジュールの限定期限内のみになります。現在、第2ラウンドを以下のスケジュールで登録受付中です。

<申請期間>

<登録要件>
登録の優先順位は下記のカテゴリーの順番で決定し、複数の申請があった場合は、
1、2、3の順番で優先されます。
1.タイ商標権者
2.既存サードレベルドメインネームの権利者向け
3.タイ現地法人

申請をご希望の方は、2025年7月25日(金)までに当社受付までご依頼ください

詳細はこちら▶ https://brandtoday.media/2025/06/03/tld_20250603/

📣編集後記

ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか。
今年、初めて「潮干狩り」に挑戦してみました。行く前にしっかり下調べをして、家から車でちょうど1時間くらいという“遠すぎず近すぎず”な絶妙な場所を選び、準備万端で出発。……のはずが、高速道路がまさかの大渋滞!出発したのは朝8時なのに、目的地に着いたのはなんと午後1時。移動だけで5時間かかるとは、完全に想定外でした。
ようやく到着すると、すでにたくさんの人がいて、あちこちに水たまりが点在。指定されたエリアで、熊手を掘ってみるとアサリの山!子どもよりも夢中になっていたのは、間違いなく私です(笑)。
あれだけ苦労してたどり着いたせいか、自分で掘ったアサリの味は格別でした。シンプルに水煮にして食べたのですが、その旨みと塩気が絶妙で、びっくりするほどおいしかったです。
自然の中で過ごすひとときは、予定通りにいかないことも多いけれど、それもまた思い出。来年は、もう少し渋滞しなさそうな日を狙って、またリベンジしたいと思います!

📣ライター

トピック:安達 孝裕
ビジネス成功の極意:姜 艶梅
統計情報:范 渝絢
TLD情報:藤原 恵利
編集後記:范 渝絢
発行責任者:矢島 崇成