USPTO、商標の国際登録の部分代替に関する規則を公表~米国でも国際登録の利便性アップ~

2025年6月2日、米国特許商標庁(USPTO)は、商標の国際登録に関する新しいルールを発表しました。「部分代替(Partial Replacement)」という仕組みの導入です。

「難しそう…」と思われるかもしれませんが、これは商標の国際展開をより簡単・スムーズにするための制度です。ここではそのポイントを、わかりやすく解説します。

💡 そもそも「マドプロ」って?

「マドリッド協定議定書(通称:マドプロ)」は、一度の出願で複数の国に商標を出願できる国際制度のことです。日本やアメリカ、ヨーロッパなど100か国以上が加盟しています。

企業が海外展開を進める中で、この制度は商標の出願・管理コストを削減できる便利な手段として活用されています。

🔄 今回の「部分代替」って何?

従来は、アメリカ国内で商標登録をした後に「マドプロ」でアメリカを含む国際登録をしても、その2つの登録は別モノ扱いでした。

ところが新ルールでは、条件を満たせばアメリカ国内の登録を「国際登録の一部として置き換える」ことが可能になりました。
つまり、国内登録の「歴史」や「権利」を国際登録に引き継げるのです。

どんなメリットがあるの?

✓ 国内登録の出願日、優先日、登録日等の利益をそのまま維持できる
 国ごとに商標を別々に管理する必要がなくなり、一括で管理可能になる
 手続きが簡素化され、更新や異議対応も一本化できる

これにより、複数国で事業を展開している企業にとっては、かなりの手間とコストの削減が見込まれます。

🧩 対象になるにはどうすればいい?

以下の4つの条件すべてを満たしていれば、自動的に「置き換え」が可能です。

    1. 商標が同一であること
    2. 名義人が同一であること
    3. 国際登録が、国内登録より後にアメリカで有効になっていること
    4. 国際登録に、国内登録の指定商品やサービスが含まれていること

🌐 日本企業にも関係ある?

もちろんあります!
多くの日本企業がすでにマドプロを使ってアメリカでの商標保護を図っています。今回の変更により、国内登録と国際登録をうまく一本化しやすくなり、将来の管理がより効率的になる可能性があります。

なお、日本ではすでに同様の「代替制度」が導入済みですが、登録の自動消滅などは起きず、併存が基本という点がアメリカとは異なります。

📌 最後に:何をすればいい?

今回のルール変更は自動適用されるため、該当する企業は特別な手続きは不要です。ただし、必要に応じて「代替の記録申請」を行えば、公式に国際登録との関係を明記することもできます。

海外で商標を活用している、または今後活用を考えている企業の皆さまは、ぜひこの新ルールをご活用ください。

<参考文献>
JETRO NY 知的財産部
「USPTO、商標の国際登録の部分代替に関する最終規則を公表」

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