ブランドセキュリティって何?ブランドの安全を考える上で知っておきたい3つのポイント

人々の生活、行動、嗜好が大きく変化しているコロナ時代。
特に、商品やサービスの提供が、リアルからバーチャルへと大きく動いています。


ブランドのあり方も、従来の『リアル偏重』から『バーチャル重視』へとシフトしています。
その動きでの中で、ブランドの安全を守る方法も『ブランドプロテクション』から『ブランドセキュリティ』へと変化していけないといけません。


この記事では、『ブランドセキュリティ』とブランドの安全を考える上で、必ずおさえておいてほしい3つのポイントを解説します。

ポイント1:『ブランドプロテクション』と『ブランドセキュリティ』の違いは?

『ブランドプロテクション』と『ブランドセキュリティ』の違いを理解し、『ブランドセキュリティ』という概念を社内に伝え、様々な施策を実行するためには、『セキュリティ』とは何か?について理解することが、一番の近道です。

『セキュリティ』というとまずピンとくるのが、情報セキュリティだと思います。
しかし、情報セキュリティ以外にも、「ホームセキュリティ」や「ナショナルセキュリティ(国家安全保障)」などという使い方もされます。

反対に『プロテクション』という言葉。

なんとなく「守る」という意味なのかなあ、という程度であまり日本では馴染みはないのではないでしょうか?ちなみに、『ブランドプロテクション』は模倣品対策のためのホログラム技術などに使われますね。

では、『セキュリティ』と『プロテクション』の違いは何でしょうか?

『プロテクション』は具体的なものを守るという意味合いです。
一方、『セキュリティ』が守る対象は実体のないもの、と考えて良いと思います。

え?「ホームセキュリティ」は家、「ナショナルセキュリティ」は国家を守るのではないの?

そうなんです。でも、
「家」ってなんですか?
「国家」ってなんですか?
これは哲学的というか抽象的な問題ですよね。

実際に家を守っているのは「鍵」とか「監視カメラ」。国家を守っているのは「国境警備隊」であったり「諜報機関」だったりするわけです。

つまり、『セキュリティ』とは
「(抽象的な)守りたい対象を安全な状態(セキュア)に保つ」という行為なわけです。

以下に比較図を書きました。

プロテクション(手段)セキュリティ(目的)
鍵、監視カメラホームセキュリティ
国家国境警備隊、諜報機関ナショナルセキュリティ
ブランド模倣品対策(ブランドプロテクション)、
商標管理、ドメイン管理、ウェブサイト監視、
SNS監視、風評被害対策
ブランドセキュリティ

つまり、プロテクションは「セキュリティ」というゴールを実現するための「道具」なんですね。

セキュリティという目的のためには、様々な手段を駆使する必要があります。
そして「手段自体が自己目的化してはならない」というのは何事にも言えることですよね。

他の「情報セキュリティ」との違いで考える(2022/2/2追記)

情報セキュリティは今やすべての社会活動において必須のトピックスとなっています。

ISMS(情報セキュリティ管理システム)やISOで定義される情報セキュリティとの比較から、ブランドセキュリティのアウトラインを考察してみます。

①通信のセキュリティ

情報セキュリティにおいて重要になるのは、通信のセキュリティです。
古くは古代ローマ自体の「カエサル暗号」に代表されるように、通信のセキュリティは軍事や社会運営にとって大切なものでした。

現代では、HTTPSで利用されるSSL/TLSに代表されるような公開鍵暗号方式が利用されています。

また通信のセキュリテイの分野として、電子署名や電子印鑑なども社会に浸透しています。

これらは情報の【道】を安全にする方法です。

②情報資産のセキュリティ(サイバーセキュリティ)

昔は紙で印刷されて、倉庫に保管されていた「(機密情報を含む)情報資産」ですが、現在はデジタルデータとしてサーバーに保管されています。

このような情報資産を盗難・漏洩や破壊から守るのが情報資産のセキュリティ、つまりサイバーセキュリティです。

これらは情報資産の場所を守る【城壁】のような役割があります。

③ブランドセキュリティ

ブランドセキュリティの特徴は、そのブランド資産自体が【道】や【城壁】の中に(本質的には)無いということです。

ブランド資産の在り処は、商標やドメインなどの規制や法令、システムに守られた事業体の外部であったり、お客様の心象であったり、ウェブサイトへの書き込みであったり、と常に「外部にある」ということです。

たとえ商標であったとしても、国の制度ががらっと変われば、失効してしまうかもしれません。(そういうことがないように、WIPOなどの国際団体が担保しています。)またドメインもICANNなどの国際団体が公平に運用していますが、これもICANNの運営方針が変われば失うかもしれません。

お客様の心象を直接的にコントロールすることは不可能ですし、ウェブサイトへの書き込みを事前に制御することはできません。

このように、ブランドセキュリティは上記のような、「通信のセキュリテイ」「情報資産のセキュリティ」に比べて非常に厄介な課題であることはおわかりいただけるかと思います。

ポイント2:ブランディングとブランドセキュリティ

よくブランディングとは全社的な活動だと言われます。

会社運営、製品開発、マーケティング、人材育成、様々な部門でブランディングは必要になってきます。

しかも、「ブランド」というとあやふやで、人によって理解が違っていたりするものを、全社で共通した理解を醸成し、それを実行に移してもらうのは、とても大変なことです。

したがって、「ブランド部門」の人たちは、「当社のブランドは?」ということを考えるだけでなく、そのブランドを実現するための具体的な施策を立案し、各部門に配布し、しっかりと実現できているかをチェックする。そういうことを行っています。

この「ブランドを実現する」ことをブランディングと言います。

「ブランドセキュリティ」も似たような構造だと考えて下さい。

「ブランドセキュリティ」のための具体的な「手段」は以下のようなものがあります。

商標権の獲得と維持

「ブランド」のために国内外の商標を取得し、適切に維持するのはもっとも基本的かつ専門的な分野です。

ドメインマネジメント

ドメインは商標に比べて簡単に取得ができます。簡単に取得できるがゆえに、各部門がそれぞれ取得し、時によっては廃棄します。また情報セキュリティレベルがしっかりしていないと、ドメインハイジャックなどの危険性があり、「ブランド」を危険に晒します。

模倣品・模倣サービス・模倣アプリ対策

商品の流通が国際化、インターネット化するに従い、ブランドの模倣、ブランドのフリーライダーの数は増え、その手段は多様化しています。

従来は、知財部門やリスク管理部門・法務部門などが担当していましたが、手段がIT化されていく中で、情報セキュリティ部門との連携強化は必須です。

風評被害・炎上対策(レピュテーション・コントロール)

SNSなどネット上での風評被害の深刻度が年々高まっています。
従来は、SNSということで主に広報部門が担当しているケースが多いように見受けられますが、SNS上の被害の把握や沈静化のためには、情報部のみならず、法務部門などとの連携も必要になります。また会社イメージに直結するようなリスクの場合は、経営陣も巻き込んだ対策が必要になります。

このように「ブランド」の安全を守るためには、知財部門、情報セキュリティ部門、マーケティング部門などの部署を横断して、情報と専門知識を共有し、連携して進める必要があります。
大変な時代になりましたね。

GMOブランドセキュリティでは、「ブランドセキュリティ」に関する講習会やコンサルティングをご提供しています。

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ポイント3:ブランドを守る「組織」と「サービス」

では、「ブランドセキュリティ」を実現するためには、何が必要なのでしょうか?
筆者は、大きくわけて、「組織」と「サービス」が必要だと思っています。

上記のとおり、「ブランドセキュリティ」は多くの部門と多くの専門知識が、密接に互いに関わっています。これを実現するためには、「ブランド部門」設置と同じく、統合的に「ブランドセキュリティ」を実現する、「ブランドセキュリティ部門」の設置が重要と考えています。

また、部門だけでなく、ブランドがかかわる子会社などを有するグループ企業群にとっては今や「必須」の課題だと考えます。

このように、「ブランドセキュリティ」は高密度な組織であり、これを新規設置するには高度な経営判断が必要とされます。

具体的には以下の設置ケースが考えられます。

ブランド部門の内部組織として結成

もしすでに、ブランド部門が存在し、全社的なブランディングを実現できているのであれば、ブランド部門の中の組織として「ブランドセキュリティ」専門チームを発足させるのが、適当でしょう。

その際は兼務でも構いませんので、知財部門、広報部門、法務部門などの専門家・実務家をできるかぎり集めておいたほうが良いかもしれません。

知財部門の内部組織として結成

商標などは知財部門で管理しているが、全社的な「ブランド部門」は存在しない。
「ブランド」は経営陣と広報、マーケティング部門が都度対応している。

このような場合は、知財部門の中に、「ブランドセキュリティ」専門チームを発足させるのもひとつのケースだと思います。

同じ「ブランド」を扱うにしても、マーケティングと「ブランドセキュリティ」では、観点や専門性が大きく異なります。

独立した「ブランドセキュリティ」部門を結成

ブランド部門も存在せず、また商標などの知財も総務部や法務部が都度対応している。
そのような組織である場合は、思い切って経営陣直属の「ブランドセキュリティ」部門を設置するのも良いかもしれません。

「ブランド部門」も「ブランドセキュリティ部門」もないのに、いきなり「ブランドセキュリティ」を作るのか?とお考えの向きもあるかもしれませんが、「ブランドセキュリティ」は「情報セキュリティ」と同等の経営リスク管理タスクフォースであり、「ブランドセキュリティ」から「知財」「ブランディング」の専門家を育成することも可能だからです。

GMOブランドセキュリティ(旧:GMOブライツコンサルティング)では、「ブランドセキュリティ」の組織構築に関するご相談を受け付けています。

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「ブランドセキュリティ」のためのサービス

財務会計や業務管理。最近は人事労務や法務に至るまで。
DXの掛け声とともに社内に様々なサービスが導入されていると思います。

「ブランドセキュリティ」も同様に、「ブランドセキュリティ」のための専門サービスを導入するとしないとでは、その効果は大きく異なります。

しかしながら、従来のサービスですと、各部門に加え、弁理士、ドメインレジストラ、弁護士、専門業者など多岐にわたる内外の組織とのやりとりを、一元的に把握・管理するのは至難です。

従来のサービス図。各部門に加え、弁理士、ドメインレジストラ、弁護士、専門業者など多岐にわたる内外の組織とのやりとりを一元的に把握・管理するのは至難です。

GMOブランドセキュリティでは、弁理士・レジストラ・弁護士・その他専門業者とのコミュニケーションを一元的に管理し、各種権利情報を一覧できるサービスを提供しています。

GMOブランドセキュリティでは、弁理士・レジストラ・弁護士・その他専門業者とのコミュニケーションを一元的に管理し、各種権利情報を一覧できるサービス「BRANTECT」を提供しています。

ブランドセキュリティのためのサービス「BRANTECT」は無料でのお試しが可能です。

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(2022/2/2追記)
また、当社では「GMOエンフォース1」というサービスをリリースしました。こちらのサービスでは悪意のある第三者に自社ブランドを毀損するドメインを取得されたり、メールを通じたフィッシング詐欺サイトへの誘引やSNSの偽アカウントにおけるDM送付、詐欺サイトや模倣品の販売サイトの構築されてしまった場合、調査から仲裁や譲渡交渉による奪還、サイトテイクダウンやSNSページの削除等の各種対応のサポートをいたします。

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最後に

途中かなり宣伝が多くなり、失礼しました。
ただ「ブランドセキュリティ」というコンセプトが重要であることは、おわかりいただけたかと思います。

おそらく、50年前に「ブランド部門」というと、「なぜそんなものが必要なのか?」と言われたと思います。

20年前に「情報セキュリティ部門」というと、「そんな諜報部門みたいな物騒なものはいらないよ」と言われたかもしれません。

現在筆者は各所で「ブランドセキュリティ」の重要性を話しています。
しかし、僅かな人(残念ながら経営者のような人も含めて)しか、「いいね」と反応が返ってこないのが現状です。

この記事を読んでいただいて、「ブランドセキュリティって、実は重要なんじゃないか」という人が一人でも多く増えることを願います。

〈ライター〉
GMOブランドセキュリティ株式会社
山下 寿也(やました としなり)

※GMOブライツコンサルティング株式会社は、2022年5月11日に
 GMOブランドセキュリティ株式会社に商号変更いたしました。