前回は、AppleのブランドTLD活用と戦略を見てみました。
APPLEのブランドTLDと新gTLDの活用が面白い!(1) ~店舗向け音楽配信サービスに選ばれたドメインは?~
「apple.com」にウェブ運用を集約しているAppleですが、新gTLDに対してはどのような戦略を持っているのでしょう。
サンライズの際にものすごい数の新gTLDを登録し、ブランド保護に努めるApple
Appleは各種新gTLDのサンライズ(商標権者向け優先登録期間)登録受付期間に、一つの新gTLDに対しても、ものすごい数のドメインネームを登録する傾向があります。
例えば、Google がレジストリである「.page 」は、2018年8月27日から10月2日までサンライズ登録期間を持ち、10月9日から一般登録を開始しましたが、Appleはサンライズ期間中に20件以上のドメインネームを登録しました。しかも、一つの新gTLDにおいて20~30件に至る複数のドメインネームを登録する傾向は、他の新gTLDのサンライズの時も同じです。
「.page」のサンライズの時に登録されたAppleのドメインネーム
| airpods.page | appletv.page | ipad.page | 
| apple.page | applewallet.page | iphone.page | 
| applecare.page | applewatch.page | ipod.page | 
| appleid.page | appstore.page | itunes.page | 
| applemusic.page | ibooks.page | itunesstore.page | 
| applenews.page | ibooksstore.page | mac.page | 
| applepay.page | icloud.page | macbook.page | 
| applestore.page | imac.page | macintosh.page | 
しかし、登録している無数の新gTLDはほとんど活用されることがないのもAppleの特徴です。Appleは何より「apple.com」に、できるだけシンプルにサービスを集約する戦略を強く維持しているからです。
それでも、使うこともない無数のドメインネームを登録し続けていることは、Appleが自社のブランド保護に莫大な金をかけていることを意味します。
「apple.news」はAppleのプレスリリースサイトではない!!
そんな中で、新gTLDを利用したドメインネームにも関わらず、転送ではありますが、実際にドメインネームを使っているのが「apple.news」です!(上記の表にもありますが、「applenews.page」も登録しています。)

「https://www.apple.com/apple-news/」に転送されている「apple.news」は、Appleのプレスリリースやニュースを提供するサイトではありません!これは、Appleが提供する新聞やマガジンのサブスクリプションサービスである「Apple News+」のサイトです。
同サービスは2019年3月のイベントで紹介され、2020年にサービスをオープンしました。「apple.news」は2015年7月に登録され、2020年6月に新しくアップデートされたサイトです。
新規サービスのリリースと新しいドメインネームの活用
前回のブランドTLDの事例で見るように、注力する新規サービスをリリースする際に、新しいドメインネームを使い始める傾向と一貫しているように見えます。今回は、ブランドTLDには「applenews.apple」や「applenewsplus.apple」は登録されておらず、既に所有していた「apple.news」を活用しているのも大きな特徴です。
無数のドメインネーム資産の把握・管理・運用が体系的に整備
これは、自社が所有している無数の新gTLDドメインネーム資産をしっかりと把握していて、適切な時期に適切なところで活用する準備ができているとも言えます。そもそも一つの新gTLDにおいて複数のドメインネームを登録することは、ブランド保護の目的が最も大きいですが、Appleの場合、サービスや製品のラインアップとドメインネームを結び付ける体系的な基準を持っていると思われます。
また、ドメインネームの取得基準に留まらず、今後数年間のビジネス計画に基づいて、近年リリース予定のサービスのドメインネームも事前に登録するなど、ビジネス運用とドメインネーム運用が歯車がかみ合うように管理されていることを推測できます。
2回に分けて見てきたAppleのブランドTLDと新gTLDの活用方法、いかがでしょうか。Appleの新製品の発表は毎回業界の注目を浴びていますが、最近では、ハードウェアからソフトウェアに、またコンテンツまでサービス領域を拡張しているApple。次の新規サービス、そしてそれに使われるドメインネームが気になるところです。
【第52号】ブランドTLD Monthly Report(2020年4月)
 テーマ「COVID-19が繰り上げるデジタルトランスフォーメーション」
 1) COVID-19により加速化する企業のDX
   ① はじめに
   ② デジタルトランスフォーメーションとは?
   ③ デジタルトランスフォーメーションの進化
 2) デジタルトランスフォーメーションの成功事例
   ① Nike
   ② Amazon
   ③ Starbucks
   ④ Apple
   ⑤ Tesla
 3) 企業のデジタルトランスフォーメーション戦略に必要なこと
   ① DX推進における企業の現状把握
   ② 「Digital Capability」と「Leadership Capability」の強化
   ③ デジタルトランスフォーメーションの段階的な実施
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<ライタープロフィール>
鄭 美羅(Mila Jung)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/New gTLD Consultant
consul@brights.jp
2017年11月に入社、IT・メディアコンサルタントとしての経歴を活かして、ドメイン分野を学びながら新gTLD、特にBrand TLDを専門にレポートを提供。新gTLD分野に興味津津。「これ、面白いっす」と色々発見中。趣味は散歩(ひたすら歩く)、写真(めちゃくちゃ撮る)、カフェ(ただぼっとしている)、そして世界の観察と分析(?!)。

 
	 
              
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