ヤフーニュースでも取り上げられるくらいになりましたが、.tk .ml .ga .cf .gqを利用したコピーサイトの出現が話題になっています。今に始まったわけでなく、随分前からこれらのドメインを利用した完コピドサイト、ブランド名悪用されたアダルトサイト、フィッシングサイトなどは存在しています。
.tk .ml .ga .cf .gq って、どこのドメイン??
.jpや.comなら馴染みが深いと思いますが、今回のコピーサイトによく利用されている.tkとかはどこの国のドメインなのでしょうか?
.tkは、2020年3月時点で3,126万件の登録があるニュージーランド領トケラウのトップレベルドメイン(以下、TLD)です。国別ドメイン(通称ccTLDといいます)では第一位の取得件数です。ちなみに、第二位は、.cnを運用する中国で1,696万件です。人口1,411人のトケラウが凄まじいドメイン数を保有しているかがわかります。
.mlはどこかというと、アフリカ西部アルジェリアに近いマリです。.gaは、こちらもアフリカ中部にあるガボンです。.cfは中央アフリカです。.gqは、赤道ギニアです。
なぜ.tkはこんなにドメイン登録が多いのか?
.tkは条件によっては無料でのドメイン登録が可能なため、爆発的にそのドメイン登録がされています。無料であれば登録が多いのは納得ですが、なぜ無料としているのでしょうか?
.tkのレジストリ(運営者)である”BV Dot TK”の目的は、ドメインを無料開放し、.tkを世界中の人たちが利用できるようにすることで、それを利用する個人や企業等の認知を広げ、トケラウという国に興味を持ち、教育や医療などのインフラ支援、さらには経済的な支援を得ることを目的にしています。
このようなビジネスモデルに似たケースは過去にもあります。ツバルという島国は、経済的支援を必要とする中、ICANNから割り当てられているTLD”.tv”に目を付けました。TV=テレビという意味があるおかげで、TV関係者をはじめ情報を発信するメディアから人気を博し、今でも多くのドメイン登録がされています。現在でいえば.ai(アンギラ)も同様です。AI(人口知能)という意味をもち、AIを用いた先進的なサービスなどのイメージ訴求をするために当該TLDを利用するケースが増えています。このような戦略によって、外貨獲得をしているというわけです。
レジストリ運用を実質的に引き受ける”freenom”とは?
そんな.tkドメインですが、実際のシステム運用は、オランダ企業の”freenom”が運営をしています。(この”freenom”が、.ml .ga .cf .gqも運営をしています。)人口1,000人強のトケラウでレジストリ運用はとてもできませんので、当然といえば当然です。
”freenom”という企業は、オランダ企業です。支援をする国の人達をオンラインに導き、デジタル経済に参加ができるようにすることを目的としています。キマベンチャーズをはじめとした投資家グループから300万ドルの資金も集めています。”freenom”自体は、.tkなどのTLD運営を引き受けるだけでなく、自身でも他のTLDの登録管理をするレジストラとして利益を生むビジネスをしています。
ここまで分かってくると、委託元の.tkなどの国も”freenom”もそんなに悪いことを思って運用をしているのではなく、登録者が悪用をしているということがわかってきます。
ただ、それは分かりつつも、.tkなどの国や”freenom”がドメインを悪用する登録者を放置していれば、当初想定していた目的が達成できなり、悪名ばかりが高くなっていしまうことになります。運営者として、何か対策はしていないのでしょうか?
”freenom”はブランド侵害への対応はするのか?
”freenom”のドメイン登録契約を確認してみると、ブランド権者の知的財産権等を侵害するようなドメインの使用があった場合、一定の処置を取ることを記載しています。したがって、もし読者の皆さんの企業ホームページが模倣されたサイトなどが発見された場合には、申し立てをすることで事態の収束をすることが可能です。
企業のドメインや知的財産権を保護する専門家集団である弊社GMOブライツコンサルティングでは、もちろんこうした違反の申請をサポートすることが可能です。
本来すべきデジタルブランドマネジメントとは?
こうしたニュースを目にすると、にわかにデジタルブランドマネジメントができているのか?が心配になってきます。そんなときまずは何をすればいいのでしょうか。
その答えは、貴社をはじめとして関係会社も含めたデジタルブランド資産の把握にあります。信頼の拠り所が正確でないと、最終的にはウェブを訪れるユーザーに不利益が発生します。この把握に不安がある企業担当者は早急に棚卸しをすることをお勧めします。
それができて、不正サイトの監視、さらには、関係者の行動水準を挙げるためにもガイドラインの策定と運用を徹底していくことになります。
今回の.tkドメインはいわばわかりやすいウェブサイト、ドメイン侵害の例です。もっと巧妙でいつの間にか個人情報等を抜かれてしまうようなウェブサイトやドメインも存在します。
そのようなケースに出会ったときに慌てないためにも、こうした時期だからこそデジタルブランド資産の棚卸しをしてみる価値はあるかもしれません。
〈ライタープロフィール〉
寺地 裕樹(てらち ゆうき)
GMOブライツコンサルティング株式会社
営業本部 IPソリューション部