ポケットや鞄に「鍵」を入れたまま車のドアの施・解錠やエンジンの始動ができる「スマートキー」。かつては高級車の装備でしたが、今では軽自動車にも装備されるようになり、当たり前の鍵の在り方となりつつあります。
また、鍵を使わずに指紋認証、カードやスマートフォンなどで施・解錠を実行する「電子錠」の普及も進んでおり、自動車メーカーや住宅メーカなどにより開発が進められています。
最近では、 IoT(Internet of Things)を使った鍵の閉め忘れを防止するサービスなども注目されていて、今後、私たちの生活に無くてはならない「鍵」の更なる革命が予測でき、また、近い未来には「鍵」自体がなくなる時代がやってくることも考えられるのです。
革命が進む世界の電子鍵サービス
世界最大の商標データベース「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で、”Electronic locks(電子鍵)”を含んでいる出願商標は5,020件。その内、出願数の多い上位権利者はこちら。
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順位 | 権利者名(国名) | 事業内容(URL) | 出願件数 |
1 | アッサ・アブロイ(スウェーデン) | セキュリティ関連製品の製造・販売を行う多国籍企業グループ(https://www.assaabloy.com/en/com/) | 112 |
2 | 国際オリンピック委員会/CIO(スイス) | オリンピックに参加する各種国際スポーツ統括団体を統括する組織(https://www.olympic.org/) | 81 |
3 | Salto Systems(スペイン) | 電子錠の製造企業(https://www.saltosystems.com/en/) | 74 |
4 | レイオバック/SPECTRUM BRANDS(アメリカ) | 電池、電動シェーバーなどを製造・販売するメーカー(http://www.spectrumbrands.com/) | 51 |
5 | INSIDE SECURE(フランス) | モバイルおよび接続機器のセキュリティソリューションを提供(https://www.insidesecure.com/) | 47 |
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1位にランクインしたのは、1994年設立以降、ドア開閉ソリューションの最大手である「ASSA ABLOY」。同社は、約70か国超の世界展開を行っている世界をリードする企業のひとつ。
(画像出典:https://www.assaabloy.jp/ja/local/assaabloyjp/our_brands/)
世界各国のセキュリティ問題やニーズに対応できるよう、非常に多くのブランド展開をしていますが、その中で、2018年以降に出願が増加しているブランドが「Yale」。
「Yale」は、世界で最も歴史が長く、知名度の高い錠ブランドのひとつです。この「Yale」が、2018年9月Google Assistantの音声アシストをサポートする、新たなサービス提供を開始しました。
(画像出典:https://www.securitysales.com/automation/nest-x-yale-lock-google-assistant/)
サービス内容は、例えば、Google Assistantに、“OK Google, goodnight”と呼びかけるとドアをロックし、“OK Google, is my door locked?”と呼びかけると、ドアのロック状態を確認してくれるというもの。音声によって、鍵の施・解錠の実行や確認が可能という、最新のアシストセキュリティサービスです。また、2018年に「Yale」ブランドは創立175年の記念年を迎えており、節目の年となる年に出願件数が増加しているのは、更なるブランド力向上に向けた意思表示なのかもしれません。
続いて、権利者上位以外の気になる出願を見ていきましょう。
車と家、鍵の融合か
電子錠の出願は、大手自動車メーカーからの出願も多く確認できます。(下記一例)
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ポケットや鞄に「鍵」を入れたまま車のドアの解錠ができる「スマートキー」が普及していることは、文頭にも記載しましたが、今では、ドアノブだけでなく、テールゲート(バックドア)の開閉操作もハンズフリーで行うことが可能となっており、更なるハンズフリー化が進んでいます。
(画像出典:https://www.jaguar.co.jp/jaguar-range/e-pace/features/practicality-and-safety.html)
2018年に入り、出願が活発化している自動車メーカーはジャガー社。同社の鍵関連出願商標の、指定商品/役務に記載されている内容が、”拡張現実ソフトウェアとハードウェア;スマート鍵。家庭内の機器を制御するためのソフトウェアとハードウェア。家庭用の電子鍵。”となっている点に注目です。
確かに、多くの荷物で塞がれた手を使うことなくテールゲートが開閉できたところで、家に入るときにはまた多くの荷物で手が塞がれてしまいます。車も家もハンズフリーで、且つ1つのスマートキーによって、流れるような鍵の施・解錠の実行ができることは嬉しい機能ではないでしょうか。
ジャガー社がこのようなサービス設計を考えているのかや、その他自動車メーカーにこのような動向があることは、現時点で確認はできませんが、鍵の革命の流れを踏まえると、車と家のスマートキーの融合可能性はあるように感じるのです。
”声”が鍵の代わりになる時代へ
2017年以降出願件数を大幅に伸ばしている大手企業の存在が際立ちます。
出願が急増化しているこれらの企業の共通しているサービスが、先ほどもご紹介したGoogle Assistantなどの「音声アシスト」サービス。
Amazon社、Apple社は既に音声アシストに注力している企業。一方、中国本土ではGoogleが提供するサービスのほとんどがブロックされていて使えないため、Google Assistantも本領発揮できません。そのためHuaweiが独自技術の開発に乗り出しているということが囁かれており、今後音声アシストのサービス展開が期待されています。
「鍵」そのもの自体がなくなる時代の最初の一歩として活用が進むことが予測されるのが、”声”による鍵の施・解錠ではないでしょうか。この”声”を有効活用している「音声アシスト」は、今後の電子鍵サービスの展開の重要サービスとなると感じさせられる出願傾向でした。
各社得意とするサービスを主としながら、鍵革命を起こしていくことが予測できる出願内容。ハンズフリーで鍵の施・解錠が可能になるのが当たり前、という時代がすぐそこまで迫っているのを感じるのでした。
〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)
GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp
2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。
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