民泊運営「Airbnb」 世界から注目される企業の知財管理の姿勢とは

2018年8月10日に、民泊サイトを運営する米Airbnb(エアービーアンドビー)は、サービスローンチから10周年を迎えたことを明らかにしました。サービス開始当初「クレイジー」だといわれたAirbnbの総客室数は全世界500万室を超え、今や世界最大のホテルチェーンのマリオット・インターナショナルの約110万室を超えるサービスにまで成長しました。

中国での事業拡大を目指す


2028年までに全世界で年間10億人のゲストを狙うとしているAirbnbにとって、世界最大の人口を誇る中国市場の攻略は重点課題となっています。2017年3月、同社は中国内でのブランド名を明らかにしました。標準中国語を話す人たちに発音しやすく、愛情をもってお互いを歓迎するという意味になる「愛彼迎(Aibiying)」。中国商標データベースでは、発表前の2016年6月8日より「愛彼迎」を、2016年8月16日より「Aibiying」の出願を開始しています。また、その他、「爱彼行(aibixing)」「爱彼心(aibixin)」という、「愛彼迎(Aibiying)」と同一のピンインで表される中国語表記の登録が確認できます。また、「爱彼游」「遨由伴」という、言葉の意味を意識した商標登録も確認でき、”旅行”の意である”游”、”楽しく遊ぶ”の意である”遨由”を使用した中国語表記の登録が確認できます。

このように、国において異なる特徴を踏まえた商標出願の検討は重要です。続いて、中国語商標の特有をご紹介します。

中国語商標特有 ”ピンイン”の理解


「中国語」商標には、称呼が同一の商標が複数存在してしまうというリスクが潜んでいます。
これは、称呼が全く同一の商標であっても、“文字列とその文字列からくる意味合い” が異なれば非類似であるという、漢字文化の強く根付いた中国特有の審査基準によるものです。
そのため、「中国語」商標の場合、指定商品・指定役務の同一区分内においても、称呼が全く同じ商標が2つ以上並存してしまうというリスクが存在してしまいます。
[su_highlight]特に称呼については漢字をピンイン(発音のローマ字表記)に置き換えたうえで、称呼類似の商標を意識し、 “同音異義語” や “同音異文字” の中国語商標登録の検討が必要です。[/su_highlight]

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英語表記 中国語商標 ピンイン 中国語商標と同一のピンインで表される中国表記
Intel(インテル) 英特尔 yingteer 鹰忑耳、赢忒二 など
PRADA(プラダ) 普拉达 pulada 菩腊搭、蒲辣打、铺鞡大 など

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*ピンイン=漢字の発音をローマ字表記したもの(=称呼)

同社は中国での商標権侵害をめぐる法廷闘争に巻き込まれたニューバランスやマイケル・ジョーダンなど、他の世界的ブランドの過ちから商標権について学んでいると言い、手厚い商標登録を行う姿勢が伺えます。

商標データベースから見えてくる注目度


中国のデータベースで「AIRBNB」を含む商標は73件、その内Airbnb, Inc.(中国名:空中食宿公司)の出願は41件、残りの32件は第三者からの出願となります。また、「愛彼迎」を含む商標は84件、その内Airbnb, Inc.(中国名:空中食宿公司)の出願は28件、残りの56件は第三者からの出願となります。

多くの商標が第三者から出願されていることからも、中国国内での注目度の高さが伺えるのではないでしょうか。

ドメインネーム使用状況から見えてくる注目度


弊社ドメインネームツールで簡易調査した結果、ホストネーム(airbnb.jpの”airbnb”の部分)が”airbnb”のccTLD/gTLD358種類の内、登録済ドメインネームは235件。また、登録済ドメインネームの内Airbnbが権利者名のドメインは181件確認できました。

ほぼ、全世界の㏄TLDにおいてドメインネームを取得していることとなり、商標同様、手厚いドメインネーム登録を行う姿勢が伺えます。

また、他社に取得されているドメインネームの使用状況を確認したところ、”Airbnb.asia”は「Explore.com」という旅行予約サイトへ転送され、”Airbnb.com.pl”は「ホテルズコンバインド‎」という旅行予約サイトへ転送されていました。Airbnbの人気や著名度を利用して自社サイトへ流入を促す思惑だと考えられ、ここからもAirbnbの著名度や注目度が伺えます。

画像出典:左)https://www.hotelscombined.com/、右)https://www.explore.com/

 

同社の商標・ドメインネームの取得状況からは、世界展開を拡大していく姿勢や、国により適した権利範囲の検討をしていることが伺るのではないでしょうか。

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〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。