EUで著作権法改正案が議論されており、欧州のインターネットの自由危機が訪れかもしれないと、その行方に注目が集まっていました。
特に問題視されていたのは、法改正案の11条と13条。11条では、サイトにリンクを貼る場合、権利者がライセンス料を請求できる権利(通称「リンク税」)などが求められていました。また、13条では、ユーザーの投稿を表示するサイトの運営者に、全ての投稿をデータベースと照合し、著作権侵害が起きていないかをチェックすることを求められているという内容。
この法案実施は多くの団体による反対意見や、インターネットの自由に影響を与える可能性が指摘されており、投票日前日には、イタリア語版Wikipediaを併催する形で以下、抗議を表明していました。
この指令は、欧州の全市民に情報社会への参加を促すどころか、オンラインの自由を脅かし、ウェブへのアクセスに障害をもたらし、新たな障壁、フィルター、制限を課すものです。この指令案が現在のかたちで承認されてしまえば、ニュース記事をソーシャルネットワーク上で共有したり、検索エンジンを通じて見つけることができなくなるかもしれません。そして、Wikipedia自体も危険にさらされます。(Wikipedia原文翻訳)
出典:https://it.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Comunicato_3_luglio_2018
世界が注目する中、2018年7月5日、欧州委員会により投票が行われ、賛成278、反対318、棄権31で指令案は否決され、9月の再投票に持ち越す形となりました。
ひとまず、欧州のインターネットの自由危機が免れた事を受け、Wikipediaも5日には再びアクセスができるようなり、欧州を中心に安堵の声が広がりました。
国により異なるインターネットの自由度
アクセス規制・コンテンツ規制・ユーザー権利の侵害、の3分野の観点から評価された「世界のインターネット自由度」のランキング上位はこちら。
上位にランクインした国全てにおいて、外務省が発表している「海外安全情報」で「危険ではない国」と評価されている国である点が特徴的です。
今や、なくてはならないインターネット。このインターネットの自由度は、国の安全度など、国のあらゆる指標と関係しているのかもしれません。
今回否決となったこの指令が、可決となり「インターネットの自由」を奪う形となった場合、国のあらゆる指標をも脅かす決定になっていたかもしれません。