アメリカの手続きの種類と提出期間
アメリカへの出願は、以下の4つから特定する必要があります。
出願種別 | 使用宣誓提出期間 |
①使用に基づく出願 | 【出願時の使用宣誓】 出願と同時 |
②使用の意思に基づく出願 | 【登録前の使用宣誓】 登録許可日から6ヶ月以内※6ヶ月毎5回(最長3年まで)延長が可能 |
③本国登録に基づく出願 | – |
④本国出願に基づくパリ優先権主張をした出願 | – |
「②使用の意思に基づく出願」に対しては、「登録許可通知」が発行される登録許可日から6ヶ月以内に「使用宣誓書」及び「使用証拠」を提出することで「登録」が認められます。提出期限は6ヵ月毎5回まで延長することができますので、登録査定から最長36ヶ月以内に提出すればよいことになります。最初の6ヶ月の期間延長は無条件でできますが、2回目からの期間延長には、その合理的理由を述べなければなりません。
また③、④は、使用証拠を提出しなくても登録は可能ですが、登録後は、商標登録後5~6年の間と、10年毎の更新時に「使用宣誓書」と「使用証拠」を提出する必要があります。これには、登録されても使用されない商標を整理する目的があります。
使用宣誓提出手続きについて
アメリカでは、商標の権利を維持するために使用宣誓提出という手続きが必要です。
使用宣誓とは、使用証拠を提示し、指定商品(役務)について登録商標を使用していることを宣誓することです。 使用していない商品(役務)について宣誓を行った場合、虚偽の宣誓となり、商標権自体の失効の可能性を含む法的リスクが発生いたします。
使用証拠について
使用証拠とは、アメリカの商取引において商標が実際にその商品や役務について使用されていることを証明するために提出する資料で、基本的には商標が指定商品(役務)に使用されている状況が確認できる資料を提出します。
●使用証拠の数
各区分に指定されている商品(役務)のいずれかにつき、最低 1つの使用証拠が必要となります。 出願をした、指定商品・役務を全てにおいて「使用」をしていなければなりません。また、基本的には1区分につき1つの使用証拠の提出で足りますが、1区分内に関連性の低い商品群が指定されている場合は、それぞれ使用証拠が要求される可能性があります。
●使用証拠として適切なもの
【商品商標の場合】 アメリカの商取引において、商標が実際にその商品について使用されていることが分かるものでなければなりません。(TMEP 第 904.03 条)使用証拠に表示される商標は、出願した態様と同一である必要があります。
商品が販売されている前提ですので、基本的には商品に直接商標が付与されているか、その包装に付与されている状態が理想です。具体的には、A~C の使用証拠が提出されることが期待されます。
A) ラベル、タグ
商標がラベルやタグとして指定商品に直接付されているか、指定商品の包装物に付されているもの。対象商品が明示されている出荷ラベルや郵送ラベルも認められる。
B) スタンピング
指定商品、指定商品の包装物、あるいは指定商品に付いているタグまたはラベルに商標が刻印されているもの。
C) 商品パッケージ
商品の包装物や容器(その商品の商取引上の流通において、一般的に使用されるもの)に商標が付されているもの。
【サービスマークの場合】サービスマークの使用を証明するには、①消費者がその商標の保有者のサービスを識別する記号として視認でき、②提供されるサービス(指定役務の内容)がはっきりと分かることが必要です。(TMEP 第 1301.04 条)
具体的明確な基準が提示されている商品商標の A~C と比較して、代理人の経験による判断がより重要となってまいります。
・新聞や雑誌の広告、ビラのコピー、ウェブサイト広告 (URL または画面キャプチャー)
・ パンフレットのコピー
・レストランのメニュー(飲食業の場合)
・看板の写真
・レターヘッド、名刺、請求書のコピー
●同一である必要性
「使用」として認められるには、出願した態様と同一である必要があります。しかし、登録した商標の書体や外観を変更して使用をしていることは、珍しくはないのではないでしょうか。実際、登録商標と完全一致ではなくとも、同一の商標であると認められれば、「使用」と認められるのですが、登録商標とは異なったフォントの商標を使用証拠として提出した際、使用証拠として認められなかった事例などがあります。特許庁データベースにある通り、出願した態様と同一での「使用」が求められるのです。
また、標準文字の場合、書体や色を変更した商標についても権利が及ぶメリットがあり、欧文字の商標を米国に出願する場合には、書体や色などについて権利を主張したい特別な理由がなければ、標準文字として出願すると有利なことが多いです。
Webページの使用証拠について
最近多くなっているものとしては、Webページ上で販売しているウェブサイトなどを証拠とするケース。アメリカでは商品商標の使用証拠をウェブサイトとする場合、より厳しい要件が課せられているのです。ウェブサイトを使用証拠とする場合、商品を注文・購入できることが確認でき、本件商標がはっきりと視認できる製品が表示されているウェブサイトのページなどは使用証拠として 有用ですが、広告やプロモーションのサイトである場合などは認められないなど、厳しい要件が求められます。
使用証拠をデータベースで確認
アメリカのデータベース(https://www.uspto.gov/)では、どの使用証拠を提出したかなどの履歴が残されており、閲覧が可能です。
①該当の商標詳細の画面内、「TSDR」を押下します。
②「DOCUMENTS」を押下します。
③該当の商標に関わる履歴や書類の閲覧が可能です。
④使用証拠に使用した過去の履歴の確認ができます。
使用主義の国の特徴を理解する
使用宣誓の提出を求められた場合、以下選択肢が設けられることになります。
- 使用宣誓書を準備の上、使用証拠を提出する
- 使用宣誓書の提出期限の延長請求をする
- 使用予定はないため、本出願商標は放棄する
「近い将来使用する可能性があるが、実際の使用実績はない。しかし出願はしておきたい・・・。」などといった場合、②使用の意思に基づく出願や③本国登録に基づく出願を選択することで、出願をすることも可能でなのです。また、「使用を予定して出願したのに、ビジネス展開に遅れが生じている」などといった場合などは延長請求をすることも可能なのです。
使用主義の国の出願種別や特徴を理解しながら、適切な時期の権利化の検討が求められます。
弊社では、以下をはじめとする各種対応が可能ですので、弊社HPも併せてご覧くださいませ。
1件のコメント
ただいまコメントは受け付けていません。