連日真夏日のような暑さが続いています。
「夏」にちなんだ商標を勝手にご紹介したいと思います!
[su_heading]「夏」に関連する登録商標[/su_heading]
1.夏休み
登録番号:第4548850号
権利者:アサヒ飲料株式会社
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:32 清涼飲料,果実飲料
2.夏祭り
登録番号:第4724859号
権利者:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:9業務用テレビゲーム機 ,28 業務用ゲーム機,41技芸・スポーツ又は知識の教授(一部抜粋)
3.花火
登録番号:第2463038号
権利者:原商株式会社
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:32 ビール、33 日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒
4.風鈴
登録番号:第1248282号
権利者:株式会社ツカモトコーポレーション
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:24 織物(畳べり地を除く。),畳べり地,メリヤス生地,フェルト,不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布、26 テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類
5.浴衣
登録番号:第2001459号
権利者:サントリーホールディングス株式会社
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:32 ビール,ビール風味の麦芽発泡酒、33 日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒
6.金魚
登録番号:第495868号
権利者:前田製菓株式会社
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:30 菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつ豆・ゆであずきを除く。),パン,水あめ(調味料),粉末あめ(調味料),もち
7.お盆
登録番号:第5801776号
権利者:宝ホールディングス株式会社
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:33 日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒
[su_heading]登録可能/不可能な商標について[/su_heading]
一般名称の登録
上記ご紹介した商標1-7まですべてが一般名称でした。一般名称は商標登録が可能なのでしょうか。
商標名と指定商品・指定役務との関係が重要
商標「花火」に指定商品・指定役務を「花火」。このような登録を認めてしまうと権利者以外が「花火」と表示することができなくなってしまうため、商標登録は不可能です。そもそも商標とは事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)でしたね。
指定商品・指定役務の一般的な名称や略称を使用した商標で登録可能なケース
下記、指定商品・役務が「花火」に対して「花火」の登録が可能になるかもしれません。
- 「○○○花火」といったように、識別力が発生するような特徴的な単語「○○○」を前後に付することで、登録が認められる可能性がでてきます。ただし、「○○○」の部分が「きれい」「大きな」などの品質を表すものや、「東京」などの地名を表すものである場合は、商標登録が認められなくなります。*デザイン化したロゴの場合は登録される可能性があります。
- 「花火」を標準文字商標としてではなく、イラストと組み合わせる等してデザイン化したロゴにした場合、登録が認められることがあります。上記3で紹介した「花火」も縦書きの構成となっており、ロゴ化した商標ですね。ただし、追加するロゴが、△や□のように簡単すぎる図形や記号の場合は登録が認められなくなります。
特別顕著性があり既に広く知られている名称の登録
特別顕著性とは、その商標が、出所表示として、その商品・役務の需要者の間で認識されているものであることをいいます。
ありふれた一般的な名称ではあっても、すでに広く世の中や業界に知られていて、「〇〇〇」といえばどこの商品といったように、認知が確立している商標であれば登録が認められることがあるのです。
通常は商標として登録できないものであっても、長年使用されることによって特別に顕著になったと認められ、登録を受けられる場合があります(商標法3条2項)。これを「永年使用による特別顕著性」といいます。
特別顕著性で登録が認められた商標
- 黒糖ドーナツ棒事件
「黒糖ドーナツ」とは、「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」という普通名称を普通に用いられる方法にて表示したにすぎない。また、「黒糖ドーナツ棒」の商標は長年の使用の結果、特別顕著性を獲得したことの立証はない。そのため、商標は無効であるとし、審決の取り消しを求められた事件です。
[審決結果]
「黒糖ドーナツ棒」という商標は、権利者により長年使用された結果、取引業者又や消費者が権利者の商品として認識することができるようになり、「特別顕著性」を獲得したとして、特許庁の判断に誤りはない(登録は無効ではない)としたのです。
使用期間や使用地域、生産高や売上高、商標とよく似た商品名が類似製品に使用されていないかどうかによって、上記のような商標でも特定の会社の商品名と認識され、特別顕著性があるとし、登録商標として認められる場合があると判断されることがあることがわかる結果となりました。
- ヤクルト容器事件
ヤクルトの容器について立体商標としての識別性が争われた事件で、知財高裁は識別性ありとして審決を取り消しました審決があります。引用:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/840/080840_hanrei.pdf
昭和43年に販売が開始されて以来驚異的な販売実績と市場占有率を有し、毎年巨額の宣伝広告費が費やされている。特に、本件容器の立体的形状を需要者に強く印象付ける広告方法が採られ、発売開始以来40年以上も容器の形状を変更することなく販売が継続されている点、その間ヤクルト容器と類似する形状の数多くの乳酸菌飲料が市場に出回っているにもかかわらず、アンケート調査においても、98%以上の需要者がこの容器を見て「ヤクルト」を想起すると回答している点等が考慮され、ヤクルトの容器が立体商標として識別力があると判断され登録がなされました。
最初は、プラスチック製の飲料容器として独創性のある形状とは言えないとされましたが、会社が独自に行ったアンケート調査などで、ヤクルトのボトル形状は消費者に認知されているというデータを示して登録可能になりました。特別顕著性で登録が認められた商標のひとつです。
会社が独自に行ったアンケート結果では、商標登録できた立体的形状と酷似する商品を「ヤクルトのそっくりさん」と認識している需要者が存在していることも分かり、広く世の中にヤクルトの形態が認識されていることを決定づける結果となりました。
[まとめ]
黒糖ドーナツ棒事件は、「黒糖」「ドーナツ」「棒」という普通名称を単に組み合わせた商標名であり、普通に考えると「商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と判断され、登録要件を満たしていないように考えられますが、このような識別力の弱い商標であっても、商標権者の長年の使用実績や広報活動等の努力により、特別顕著性が認められることが分かりました。
また、ヤクルトの立体商標の登録には、会社が独自に市場アンケートをし、データを示すことで特別顕著性が認められたことを知り、両者の事例から大切なブランドへの愛情と長年の企業努力を感じました。