有名銘菓にそっくりな「ジェネリック菓子」 自社のお菓子を守るには

Twitter上でセブン-イレブンで売っているお菓子「とろけるクリームのふわころ」が、あの仙台名物「萩の月」に似ており、「やばい…ジェネリック萩の月って感じ…」とツイートされたところ、同様に萩の月と似たお菓子の報告ツイートが相次ぎ、1万件近いツイートを集め、話題となりました。

     

パッケージは酷似していないように思いますが、お菓子の見た目はそっくりで、味も似ているという噂もありますが・・・。見た目も味も酷似するお菓子を製造販売することは法的には問題ないのでしょうか。

萩の月の商標登録状況

国内商標データベースで「萩の月」を含む商標は8件。株式会社菓匠三全と田中 裕人により、登録がなされていることがわかります。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

     

お菓子の模倣を防ぐ制度は

自社のお菓子の模倣を防ぐ法律と、そのお菓子が守られる対象は下記が考えられます。

      

商標法から考える守り方

商品名を守る

       

商標登録状況を確認したところ、ロゴとパッケージの商標登録がされていました。ロゴやパッケージを模倣した商品を販売した場合は、商標権侵害に触れる可能性があります。

全国各地の土産品販売業者は、著名になった「萩の月」にあやかろうと、全国各地の観光地で「萩の月」の商標を付けた商品と同種同形の菓子がそれぞれ名所、旧跡の名を表記した「○○の月」というように、月に照らされる対象物たる物、名所、旧跡を表記した商品名(商標)を付して販売することが普通に行われています。

商標権侵害にあたるかどうかは、外観、称呼及び観念や世間の認知度などを考慮した上で出所の混同の恐れがあるか否かが判断されます。商標「○○の月」の「の月」の部分は、「萩の月」の商標を付した商品に代表される菓子の代名詞として使われると判断されるため、商標権侵害には該当しないと考えられるようです。

引用:商標審決事例「御用邸の月と御用邸商標の無効審判事件より」
http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1278972.html

参考:「御用邸の月」

 

参考:みかもの月

 

外観や形状を守る

     

日本の商標法では立体商標の登録が可能です。ヤクルトの特殊な形が立体商標として登録されていることは、比較的有名なお話ではないでしょうか。このように、立体の形状を立体商標として守ることで、自社のお菓子を守る方法もあります。

     

    

しかしながら、有名な銘菓のひとつとして挙げられる「ひよこ」のお菓子。この銘菓「ひよこ」の形状からなる立体商標は、指定商品「菓子及びパン」の形状にすぎないとして、立体商標に係る登録(登録第4704439号)が無効とされたことがあります。

無効とされた理由の中に「鳥の形状の菓子は古くから存在する伝統的なものであって、独創的なものではないこと、全国の需要者が、商品の形状を見ただけで本件立体商標に係る菓子の出所を識別することは不可能である。」といった観点があったことからも、萩の月のような独創的なものではない形の登録は不可能であることが考えられます。

     

特許法から考える守り方     

製造方法を守る

萩の月は特許を取得していないようです。特許はライセンスで利益を得ることができる一方、独占期間は有限であり、公開もされてしまう一面があるので、KFCやコカ・コーラの考えと同様にノウハウを漏らさないと考えているのかもしれません。

    

意匠法から考える守り方

外観や形状を守る

意匠は、登録要件として「新規性」が要求されており「公然知られた意匠」は、登録できません(意匠法3条1項1号)。すでに30年以上前から販売されている萩の月は「公然知られた」と言えるため、今から申請しても登録は難しいと考えられます。

意匠登録されているお菓子の一例としては、ハーゲンダッツジャパンによる意匠登録1433508号があります。クレープグラッセの外観の登録で、デザインが細かく指定されています。

    

画像出典:J-platpat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

不正競争防止法から考える守り方
真似されていると思ったら、不正競争防止法第三条により差止請求をしたり、不正競争防止法第四条にしたがい損害賠償請求をすることは可能です。
消滅時効があるので、時期には気を付けなければなりません。

    

まとめ 自社のお菓子を守るには

商標登録だけでなく特許登録や意匠登録を行うことによって模倣品に対抗できる可能性はあがりますので、各法律の特性を利用し、権利を多方面から行使検討することが重要です。商品の人気が出て世間から認知され始めた後に登録しようと思っていると、既に第三者に登録がされていたり、権利侵害されてしまうことも考えられますので、事業の開始時から調査だけはしておくなど、見通しを立てることも重要ですね。