ギリシャ:商標法改正

2012年4月11日にギリシャ商標法が改正されました。この改正はEUの商標に関する統一方針に対応するためになされたものです。2012年10月から施行されます。

本改正は商標出願手続、紛争解決手続、商標権者の法的地位、商標権侵害、商標ライセンス契約など多方面にわたり、変更をもたらすものです。

以下詳細をご案内いたします。

商標出願手続の変更点

1) 電子出願が可能になります。

2) ギリシャ文字・ラテン文字以外を含む商標の出願の場合、ギリシャ語の正確な翻訳(音訳)を添付することが必要になります。

3) CTMで登録された商標についても、その一部につきギリシャ国内での商標登録をギリシャ商標局が拒絶することが可能になります。この拒絶査定に先んじる局通知への対応は可能です。

4) 出願・登録の一部分割が可能になります。

5) 指定商品・役務の一部放棄が可能になります。

6) 審査終了後、商標局のホームページで公告された後の異議申立て可能期間が4ヵ月半から3ヶ月に短縮されます。

7) 紛争中に当局への同意書の提出が可能になります。

8) 今後はACT(Administrative Committee of Trademark)ではなくギリシャ商標局(Trademark Bureau)が審査機関となります。

9) 使用証拠としてCTMにおける使用の実例が認められることになります。

10) 紛争中の出願について登録査定を下すことが可能になります。ただし、その後の裁判結果等により登録が取り消される可能性はあります。

 
商標権に関する新規定

1) 登録商標のみならず、出願商標についても譲渡が可能になります。

2) ライセンス契約を設定する際のACTによるヒアリング手続が不要になります。

3) ライセンス契約終了後におけるライセンシーの対象商標の継続使用に対し、ライセンサーから訴訟を提起することが可能になります。

4) 独占的なライセンス契約を締結した場合に限り、ライセンシーも第三者の商標権侵害に対し訴訟を提起することが可能になります。

 
商標権侵害に関する新規定

1) 商標権者に対し以下の権利が付与されます。

- 模倣品運送の禁止命令の申立て
- 商標を消された/付け替えられた製品の流通禁止の申立て

2) 5年間故意に商標を使用しなかった場合、当該商標権者は、新規の商標使用者に対し上記の権利を行使することは出来ません。

 
不法行為法と関連する新規定

1) 商標権侵害における損失額につき、侵害者が当該侵害により得た利益と同額とみなすことが可能になります。

2) 適切にライセンス付与がなされたと仮定した場合におけるライセンスフィーを商標権侵害の損失額とみなすことも可能となります。

3) 商業ベースの侵害に対しては、事前の手続きを経ること無しに侵害者の資産及び預金の凍結をすることが可能になります。

4) 侵害者に対し証拠開示命令を行うことが可能になります。

5) 商標権侵害に関する裁判所の判断は全て既存メディア・インターネット上で公開されます。

 
刑事罰の厳罰化

1) 商標権侵害に対し、以下のいずれかの刑罰が課されます。

  • 6ヶ月以下の懲役及び6,000ユーロ以下の罰金
  • 6ヶ月以下の懲役
  • 6,000ユーロ以下の罰金

2) 模倣品販売業者に対しては、以下のいずれかの刑罰が課されます。

  • 2年以上の懲役及び6,000ユーロから20,000ユーロの罰金
  • 2年以上の懲役
  • 6,000ユーロから20,000ユーロの罰金

 
その他特記事項

ギリシャの製品であることをより強く示すために、「ギリシャ由来の~」とつく指定商品、役務が導入されます。

本件における大規模な改正により、ギリシャ商標局に審査権限が移行し電子出願が導入されるなど、より迅速、簡便に登録が可能になることが期待されます。

模倣品業者への厳罰化や模倣品に関する商標権者の申立権の付与など、模倣品に対する厳しい対応策も導入されることになり、より一層ギリシャにおけるブランド保護の実効性が向上することが見込まれます。

 
本件に関する詳しい内容につきましては、お問い合わせください。