話題の「MaaS」から見えてきた、無人自動運転競争過熱への動きとは

2018年10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクがMaaS事業を手掛ける共同出資会社の設立を発表しました。自動車業界のみならず、交通サービス提供事業者全体を巻き込み大きな話題となっているMaaS(マース)。”Mobility as a Service”の略称で、車を所有せずに使いたいときだけ代金を支払って利用するサービスのことで、今、注目を集めています。

 

ロボット自動運転タクシー開発企業の一強


世界最大の商標データベースGlobalBrandDatabase(以下GDB)で、”Mobility as a Service(MaaS)”を指定商品・役務に指定した出願商標は27件。アメリカシリコンバレーにある、ロボット自動運転タクシー開発のZoox(ズークス)社のみの出願であり、一強といった形。

 

ゼロから完全自動運転を作るZooxの挑戦


Zooxはオーストラリア出身のTim Kentley-Klayによって2014年に設立されました。同社はハンドルやペダルのない完全自動運転のEVタクシーを2020年までに開発することを目指しています。現在、市場価値は32億ドルと言われており、公開されている車両を見ると、運転手が無人の状態で、自動運転により人を運送する車両が想像できる車両からは、近未来を感じるスマートで格好いい印象を受けるのではないでしょうか。

画像出典:https://www.therobotreport.com/zoox-raises-50-million-for-their-stealthy-silicon-valley-venture/

 

同社が出願している商標は全件で103件あり、その中で2018年9月26日に出願されている最新商標の指定商品・役務がこちら。

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区分 指定商品・役務(英語) 指定商品・役務(日本語)
12類 Vehicles; Land vehicles and conveyances in the nature of automobiles; Self-driving transport vehicles; Unmanned conveying land vehicles; Passenger carrying vehicles, namely, land vehicles; Electric vehicles, namely, automobiles; Road vehicles; Driverless cars; Mobility conveyances namely, automated people movers; Mobility vehicles, namely, passenger shuttles; Industrial vehicles, namely, semi-trailer trucks; Passenger motor vehicles, namely, land vehicles; Unmanned vehicles, namely, land vehicles; Transportation robots, namely, robotic transport vehicles; Structural parts for all of the foregoing. 乗り物; 自動車の性質上の陸上車両および運送; 自走車; 無人搬送陸上車両; 乗用車、すなわち陸上車両。 電気自動車、すなわち自動車; 道路車両; 無人自動車; モビリティ輸送、すなわち、自動化された人の移動; 移動車、すなわち乗客シャトル。 産業車両、すなわちセミトレーラートラック; 乗用車、すなわち陸上車両; 無人車両、すなわち陸上車両; 輸送ロボット、すなわちロボット輸送車両; 前述のすべての構造部品。
39類 Transport by land; Transportation of passengers by motorized vehicle; Transportation of goods by motorized vehicle; Transportation of passengers by vehicle through a network of transportation providers; Transportation of goods by vehicle through a network of transportation providers; Providing customized driving directions. 土地による輸送; 電動車両による乗客の輸送; 電動車両による物品の輸送; 輸送業者のネットワークを通じた車両による乗客の輸送; 輸送業者のネットワークを通じた車両による物品の輸送; カスタマイズされた運転指導を提供します。

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同社の特徴である、運転手が無人の状態を”Unmanned vehicles(無人車両)”として表していることが伺えます。

 

無人自動運転の競争過熱へ


先ほどの出願商標から確認できたワード”Unmanned vehicles(無人車両)”関連の出願は783件確認でき、その内”自動車”関連である第12類での出願件数が多い企業上位3位はこちら。

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順位 権利者名 業態 出願件数
1位 Zoox ロボット自動運転タクシー開発 60
2位 Intel 半導体素子メーカー 28
3位 パラマウント・グループ 防衛航空宇宙事業 15

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Zooxが堂々の1位。2位にランクインしたのは、2017年に自動運転車向けの技術開発を専門とするMobileyeをおよそ153億ドルで買収したIntel社。先日、5月17日には自動運転車の公道でのテスト走行をエルサレムで開始したと発表した同社は、2021年までには無人の完全自動運転自動運転車の生産を実現するのが目標だとしています。また、2018年4月15日に出願した最新商標の指定商品・役務には、”乗り物;無人;無人航空機;接続された車両;自律走行車;無人車両”の文言があり、出願商標からも、無人自動運転開発への加速をしている姿勢が伺えます。

上位3位以外にも気になる出願がありました。2018年9月28日には、自動運転に関して出遅れているとも言われている、国内の自動車メーカーである「スズキ株式会社」の出願。2018年7月13日には、フランスの自動車メーカーである「Eon Motors Grou」の出願といった、複数の自動車メーカーからの出願も確認できます。現時点でこれらの企業が無人自動運転開発に乗り出すと言った情報は確認できませんが、今後の動向が気になる出願であり、今後無人自動運転の競争が過熱していくことも予測できるのではないでしょうか。

画像出典:GBD検索結果より

 

自動運転「レベル4」の実現は


自動運転「レベル4」の定義は”一定の路線や自動車専用道路、空港の敷地内など、限定された領域においてドライバーを必要としない自動運転が可能”となることを指します。官民ITS構想・ロードマップ 2018によると、2025年以降レベル4の自動運転の実現を目標に掲げており、法律やインフラなど整備が急ピッチで進められていると言います。

世界各国によっても整備に温度差があるものの、世界各国で無人自動運転サービスの実現を目指して走行実験などが進められています。思った以上に近い未来に実現しそうな”無人自動運転”の動向について、引き続き目が離せません。

 

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〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。