ドメインを登録しないでブランドを護る方法。ブロッキングサービスとは?(まとめ)【ブランドTLD・新GTLD】

  

新gTLD(NewgTLD)の拡大と共に広がるドメイン保護問題


2012年より開始された新gTLDプログラム(第1ラウンド)は、2019年3月末時点で進捗率が98%に至り、委任されたトップレベルドメイン(以下、TLD)の数は1,232件(ブランドTLDを含む)、ドメイン登録件数は約2,700万件まで勢いよく成長しています。

そのうち、一般登録可能な新gTLDの数は、約600件。中には、ビジネスでよく使われる「.business」「.media」「.marketing」「.ltd」や、ビジネス領域を表すような「.clinic」「.wedding」「.yoga」、地域を表す「.london」「.osaka」など様々な新gTLDが存在します。

新gTLDの拡大によって、ドメインの保護は以前より複雑になってきました。今までなら「第三者によるドメインの登録を避けたい。」と思ったら、「保護取得すればいい。」と考えることができましたが、新gTLDの数は先ほどの通り、約600TLDです。全ての新gTLDを登録するには莫大な費用がかかってしまいます。

  

  

ドメインを登録しなくてもブランドを護れる時代到来


そこで、少ない費用で新gTLDの権利を保護できるいくつかのプログラムが運営されてきました。代表的なのが米国の大手レジストリDonuts社が運営する商標権者保護プログラム「DPML(Domains Protected Marks List)」です。DPMLは、登録商標情報照合データベースであるTMCH(Trademark Clearinghouse)に登録されている商標の文字列と完全一致するドメインをブロックし、商標権者以外にはドメインを登録できないようにするプログラムです。

その他に、Rightside RegistryのDPML、Minds+Machines Groupの「MPML(Minds+Machines Protected Marks List)」などが運営されてきました。しかし、サービスの統廃合及び新しいサービスの登場により対象となるTLDにも一部変更が生じています。今回は、その変更に伴う最新動向をチェックします。

  

TMCH(Trademark Clearinghouse)」とは?
商標権利保護制度の登録商標情報照合データベースです。一度商標を提出することで、全てのレジストリでの商標証明ができます。登録商標権者はドメインの権利保護を目的としてTMCHに商標の登録が必要です。

  

  

主な新gTLDブロッキングサービス


  

1)最も有力なブロッキングサービス 「Donuts社のDPML」

Donuts社のDPMLは、新gTLDの第1ラウンドで307件という最多申請を行い、現在は、約200件のTLDを運営している米国のレジストリDonuts社が運営する商標権保護プログラムです。

1回の登録でDonuts社の全TLDについて、商標の文字列と完全一致するドメインの第三者による登録をブロックすることができます。追加費用でドメインを登録することも可能です。(オーバライドといいます。)

以前存在していたRightside RegistryのDPMLサービスは、Donuts社のDMPLサービスに吸収されました。現在、対象となっている新gTLDは以下の通りです。

  

出典:
https://donuts.domains/what-we-do/top-level-domains

  

2) TMCHが提供する「TMCH TREx」

TREx(Trademark Registry Exchange)も第三者によるドメイン登録をブロックするサービスです。Donuts社のDPMLサービスは、大手レジストリが運営するサービスですが、TRExはTMCHにより提供されているのが特徴です。現在、TRExは40件以上のTLDを保護対象としています。

また、TRExサービスの対象TLDには、既存のMPML(Minds+Machines Protected Marks List)サービスの対象だったTLDが含まれています。

  

出典:
https://www.trademark-clearinghouse.com/content/tmch-trex-trademark-registry-exchange

  

3)レジストリ独自サービスの追加 「Uni EPS」

Uni EPS(Uniregistry Extended Protection Service)は、Uniregistry社が提供する新gTLDブロッキングサービスです。現在カバーしているTLDは23件と少ない方ですが、今後TLDを増やしていく予定だそうです。

  

出典:
https://www.unieps.help/tlds

  

  

主な新gTLDブロッキングサービスの比較


  

  

今回は、商標権者向けのドメイン保護サービスの最新動向を比較してみました。新gTLDブロッキングサービスは、個々のドメインを保護するより安く、安全に利用できるドメイン保護方法です。ドメイン保護は、第三者のドメイン登録をブロックするだけでなく、企業のデジタル資産を守り、ブランドの価値を護ることに繋がります。

各サービスの申請方法、注意点などより詳しい情報は弊社までお問い合わせください。

  

  

〈ライタープロフィール〉
鄭 美羅(Mila Jung)

  GMOブライツコンサルティング株式会社 IPソリューション部/newgTLD Analyst consul@brights.jp 2017年11月に入社、IT・メディアコンサルタントとしての経歴を活かして、ドメイン分野を学びながら新gTLD、特にBrand TLDを専門にレポートを提供。新gTLD分野に興味津津。「これ、面白いっす」と色々発見中。趣味は散歩(ひたすら歩く)、写真(めちゃくちゃ撮る)、カフェ(ただぼっとしている)、そして世界の観察と分析(?!)。