【ブランドTLD戦略】Googleのコーポレートサイトを知っていますか?ドメインネームから見るブランディング戦略!

企業と顧客を繋ぐコミュニケーション接点、ドメインネーム

今の時代、企業のウェブサイトはインターネット上の単なるマーケティング手段を超えて、サービスそのものであり、オン・オフラインを跨ぎ企業と顧客を繋ぐコミュニケーション手段の一つです。

インターネット上でウェブサイトにたどり着くためのアドレスであるドメインネームは、顧客とのコミュニケーションにおいて重要な接点であり、ブランドの成功にも大きく関わっています。

特に、大手グローバル企業は国内外に複数のグループ会社を持ち、事業分野も多岐に渡るため製品・サービスのラインアップも多く、運用しているウェブサイトの数も年々増えていきます。これらの企業は、数え切れない数のドメインネームを取得・管理しながら、様々な工夫を重ねて自社なりのドメインネーム運用方針を決めています。

今回は、特有のドメインネーム運用傾向を見せているGoogleのドメインネーム運用戦略を見てみます。

目次
1.Googleのコーポレートサイトのドメインネームは?
2.複数の新gTLD運用…レジストリ事業サイトも「.google」で展開
3.サービス広報とCSR活動を中心にブランディング
4.「.goog」も徐々に活用開始…B2B用に使い分け
5.グループ会社の企業イメージに合わせた新gTLD活用
6.その他のブランドTLD活用は?「.youtube」も広報に活用

 

1.Googleのコーポレートサイトのドメインネームは?

世界最大のインターネット検索サービスを提供するGoogleのドメインネームを聞かれると、ほとんどの人がすぐ「google.com」を浮かべるでしょう。しかし、「google.com」はGoogleのメイン事業である検索サービスのドメインネームです。

それでは、Googleはコーポレートサイトにどんなドメインネームを採用しているか見てみましょう!

 

Googleのコーポレートサイト
about.google

 

Googleのコーポレートサイトのドメインネームは、「about.google」です。現在、GoogleはブランドTLDの「.google」を利用してコーポレートサイトを運用しています。

ブランドTLDとは?
企業の組織名、または所有するブランド名で構成されるトップレベルドメイン(Top-Level Domain:TLD)。簡単に言えば、その名の通り、ブランド名がドメインネームに使われるものです。

以前Googleはメインサービスである「google.com」内のディレクトリ構造を利用してコーポレートサイトを運用していましたが、コーポレートサイトをブランドTLDの「.google」を利用して別途運用する形で戦略を変えました。今は「google.com/about」を入力すると、「about.google」に転送されるようになっています。

「about」って!あまりピンと来ないかも知れませんが、コーポレートサイトのメインページのドメインネームに「about」という文字列を採用するのは、欧米の企業では多く見られる傾向の一つです。ちなみに、Amazonのコーポレートサイトのドメインネームは「aboutamazon.com」です。

何よりこのような使い方から、Googleはサービスブランドのドメインネームとコーポレートサイトのドメインネームを分けて運用していることが分かります。ブランドTLDの活用することで、「google.com」内に埋もれてしまう企業紹介・広報ページを独立したドメインネームで分けて運用し、シンプルな文字列の構成によるメッセージの明確性や注目度を上げています。広報サイトの一つである総合プレスリリースサイトも「blog.google」で運用しています。

★関連記事:【ブランド戦略】新gTLD・ブランドTLD徹底分析!ブランドTLDとは?どんな企業がどう活用している?

 

2.複数の新gTLD運用…レジストリ事業サイトも「.google」で展開

世界最大のIT関連企業であるGoogleはレジストリ事業もしているため、約26件の新gTLDと約20件のブランドTLDを取得しています。Googleが取得しているブランドTLDは、コーポレートサイトに使われる「.google」をはじめ、日本語の「.グーグル (xn--qcka1pmc)」、中国語の「.谷歌 (xn--flw351e)」や中国語の発音の表記である「.guge」も取得しています。他にも、製品・サービスブランドである「.gmail」「.chrome」「.android」「.youtube」「.nexus」「.hangout」など複数のブランドTLDを取得しています。

新gTLDとしては、アプリサービスに使われる「.app」、開発者向けの「.dev」、個人用ウェブページに使われる「.page」や「.how」「.soy」「.new」「.みんな (xn--q9jyb4c)」などを取得・運用しています。「.new」の場合、その独特な使い方も話題になっています。例えば、「doc.new」「sheet.new」「slide.new」を入力するだけでG Suiteサービスの新規作成ページを開くことができます。

★ 関連記事:Googleの新gTLD「.new」の登録開始!その斬新な使い方に注目!

このようなドメインレジストリ事業を紹介するサイトのドメインネームは「registry.google」で、こちらも「.google」を利用しています。ブランドTLDを利用して「google.com/……/…../」のように複雑な階層構造になっていた各事業サイトもシンプルで直感的なドメインネームで再構成することで、より伝わりやすいブランド・コミュニケーションを試みています。

 

3.サービス広報とCSR活動を中心にブランディング

「.google」を活用しているコーポレートサイトには幾つかの活用傾向が見られます。2021年1月時点で「.google」のドメインネーム登録件数は81件で、そのうち約35件が実際にブランドTLDサイトで運用されています。また、約20件はブランドTLDのドメインネームを「google.com」内のページに転送しています。転送先は既存サイトを維持するまま、ブランドTLDのドメインネームを登録して、対顧客コミュニケーション方法として活用するケースです。

現在、GoogleのブランドTLDサイトは、主に事業分野や製品・サービスの紹介、そしてCSR活動に使われています。registry.google」「domains.google」「chromeenterprise.google」のような事業・サービス紹介、GoogleのイニシアティブであるGrow with Googleの「grow.google」、Google AIの「ai.google」などもブランドTLDを採択しています。また、「sustainability.google」「diversity.google」「protectingchildren.google」「crisisresponse.google」のようなCSR活動サイトを多く立ち上げています。

 

ai.google

 

何よりGoogleはIT分野を先導する情報企業として、自社のアイデンティティでもある「情報」を中心にCSR活動を展開しています。ほぼ全世界をカバーする多地域・多言語支援を基本方針として、サービスを提供する全世界に対して社会に役立つシステムを構築しているのです。

2020年には、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響により、COVID-19関連情報と役立つツールを提供する特設サイトも迅速に立ち上げました。COVID-19関連情報サイトは、「coronavirus.google」「covid19.google」「covid-19.google」の3つのブランドTLDドメインネームが登録され、「google.com」内の特設サイトに転送しています。

 

coronavirus.google」「covid19.google」「covid-19.google
転送先:「https://www.google.com/covid19…(省略)」

 

また、多くの学校が休校となった2020年3月には「teachfromhome.google」を開設し、COVID-19による在宅学習支援の一環で教員や保護者が活用できる情報とツールを提供しはじめました。同サイトは、2020年6月からドメインネームを変更して「teachfromanywhere.google」に転送されるようになり、臨時休校の解除など現状を踏まえて迅速にドメインネームの変更も対応できるブランドTLDのメリットを最大活用しています。

 

teachfromanywhere.google

 

4.「.goog」も徐々に活用開始…B2B用に使い分け

Googleは取得しているブランドTLDの中で、「.google」と「.goog」を中心に活用を進めていますが、最近では「.goog」の登録件数も164件に急速に伸びています。

「GOOG」はGoogle及びグループ企業の持株会社であるAlphabet Inc.の銘柄コードであり、現在「.goog」の活用件数は約20件に過ぎないですが、「partneradvantage.goog」「pki.goog」などを見ると、今後主にクラウド関連サービスやB2Bサイトとしての利用を想定しているように見えます。

 

partneradvantage.goog

 

5.グループ会社の企業イメージに合わせた新gTLD活用

さらにGoogleのグループ会社のウェブサイトを見てみると、ブランドTLDの活用とはまた違う傾向が見られます。グループ会社の場合、主にそれぞれの「.com」サイトを運用していますが、一部のグループ会社は、特徴のある新gTLDを採用して各企業のイメージに合わせた独特なドメインネームとウェブサイトを運用しています。

グループ会社のドメインネームにはGV(旧Google Ventures)の「gv.com」、Google Capital の「capitalg.com」のように「.com」も多く見られますが、持株会社であるAlphabet Inc.は「abc.xyz」を、深刻な問題解決のための次世代技術の開発を担うXは「x.company」をドメインネームとして採用しています。

各グループ会社の特徴に合わせて、ドメインネームから企業のブランドイメージに合わせてブランディング戦略を取り入れていることが分かります。

 

x.company

 

6.その他のブランドTLD活用は?「.youtube」も広報に活用

それでは、製品・サービスのドメインネームはどうなっているのでしょう。

前述のようにGoogleは約20件のブランドTLDを取得していますが、独自の製品・サービスとして既に確立されているサービスに対しては、当然のように最も知られている「.com」サイトを運用しています。「youtube.com」「android.com」などを挙げられます。

その中でも「.youtube」の場合、「rewind.youtube」をはじめ「devicecertification.youtube」や「lifeinaday.youtube」をブランドTLDサイトとして運用しています。数は少ないですが、「rewind.youtube」や「lifeinaday.youtube」はプロモーション・プロジェクトサイトとして、ブランドTLDを利用して特設サイトを立ち上げて広報に活用しています。

中には「apps.chrome」の「https://www.google.com/chromebook/apps/」への転送のように、「google.com」内のページに転送するパターンもあります。こちらも、顧客に知られている既存サイトを維持しながら、分かりやすいブランドTLDのドメインネームで顧客とのコミュニケーションを促進している事例の一つです。

Googleは多くのブランドTLDの中でも「.google」を中心にコーポレートサイトを構築し、グループ会社やサービスサイトを分けて運用することで、企業の膨大な情報を分かりやすくまとめて提供しながら、自社のアイデンティティに基づいた効果的なブランディング戦略を進めています。また、今後「.goog」の使い分けによるブランディング戦略の進化も気になるところです。

GMOブライツコンサルティングでは、企業のドメインネーム運用・管理及びブランディング戦略に必要なレポートを提供しています。引き続きアフターコロナ時代を見据えたブランド戦略の立案・実行に役立つ情報を提供していきますので、お気軽にご相談ください。

 

ブランド戦略レポートのご紹介

【第56号】ブランドTLD Monthly Report(2020年8月)
テーマ:グローバル大手3社のドメイン戦略とブランドTLD運用方針
1) Google
  ① コーポレートサイト:ブランドTLDへ移行
  ② グループ会社:それぞれの「.com」と新gTLD活用
  ③ 製品・サービスサイト:「.com」中心に一部ブランドTLD活用
2) Microsoft
  ① コーポレートサイト:「.com」集約とブランドTLDの転送型運用
  ② グループ会社:それぞれの「.com」サイト運用
  ③ 製品・サービスサイト:「.com」とブランドTLDの有機的な連係
3) Amazon
  ① コーポレートサイト:「aboutamazon.com」の別途運用
  ② グループ会社:「.com」とグローバル拠点の「ccTLD」
  ③ 製品・サービスサイト:「.com」メインにブランドTLD併用
4) グローバル大手3社のドメイン戦略比較

【第57号】ブランドTLD Monthly Report(2020年9月)
テーマ:日本企業のドメイン戦略とブランドTLD運用方針
1) 日本企業のブランドTLD取得・活用状況
  ① 日本企業のブランドTLD取得・運用状況
  ② 日本企業のブランドTLD活用パターン
2) 日本企業のドメインネーム運用戦略
  ① Toray
  ② Canon
  ③ Komatsu
  ④ Ricoh
  ⑤ Hisamitsu
3) 日本企業のドメイン戦略とブランドTLD活用

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<ライタープロフィール>
鄭 美羅(Mila Jung)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/New gTLD Consultant
consul@brights.jp
2017年11月に入社、IT・メディアコンサルタントとしての経歴を活かして、ドメイン分野を学びながら新gTLD、特にBrand TLDを専門にレポートを提供。新gTLD分野に興味津津。「これ、面白いっす」と色々発見中。趣味は散歩(ひたすら歩く)、写真(めちゃくちゃ撮る)、カフェ(ただぼっとしている)、そして世界の観察と分析(?!)。