中国における海外製品の模倣品事例をご紹介! case1:自動車メーカー「衆泰汽車」

こんにちは!申思です。

今回は中国の自動車メーカー「衆泰汽車(ZOTYE AUTO)」の模倣品事例と、中国人の模倣品に対する現状認識について自身の見解を述べたいと思います。

中国語で模倣品は「山寨」という。

「山寨」とは、元々は中国語で文字通りで「山に囲まれた塞」を意味する言葉です。現代では「模倣品、ニセモノ」の意味を持ちます。

中国解放後に、一部の内陸人が香港に移動し、木製の板で作られたスラム街に居住して、ローエンドの手工芸品工場として輸出品加工事業を行っていました。外国ブランドを見慣れる香港人はこのボロボロの「工場群」を「山寨工場」と呼び、製品のやぼったさを皮肉っていました。それが「山寨」という言葉の由来です。

1978年12月の中国改革開放以来、「山寨」という言葉は香港から深センの華強北(日本の秋葉原を模した経済特区)に広まり、晋江の莆田市(運動靴を模倣する工場で有名)を通って東南沿海を辿り、やがて全国に広まりました。

中国製造業の発展はまるで「脱山寨」の歴史であったと思います。

いくつか事例を挙げて、中国「山寨」の歴史と現状をご紹介したいと思います。長文になりますので、今回はまず一つ目の「衆泰汽車」の事例をご紹介させていただきます。

case1:自動車メーカー「衆泰汽車(ZOTYE AUTO)」

2005年に創業。最初のモデルは、ダイハツ・テリオスにあまりにも酷似していることから話題を呼んだ。その後もモーターショーのたびトヨタやアウディ、ポルシェの人気車種の外観をモチーフにした車両を出展、三菱自動車設計のエンジンと組み合わせたモデルを次々と生み出した。

wikipedia

では、もう少し「衆泰汽車」のこれまでの歩みを掘り下げていきましょう。

  • 1992年、創業者の应建仁氏が小さな金物工場(器具や器物に取り付ける金属製品)を設立しました。事業は順調に拡大でき、自動車部品、機械、電力設備、旅行と貿易などの事業分野に展開。その波に乗って「鉄牛グループ」を設立しました。
  • 2005年、「衆泰汽車」を設立。
  • 2007年、Suzukiの技術を持っていた「江南汽车制造有限公司」の70%の株を買収して、生産停止になった「江南奥拓」自動車の製造許可を手に入れました。
  • 2008年、「江南奥拓」の改正版である「衆泰2008」が販売開始。エアコン、ATとABSが付いてないので、「三無小車」と呼ばれてましたが、最も安い自動車ということで、初年度3万台の販売実績を達成できました。
「衆泰2008」(画像出典:こちら

この容易な勝利に味をしめ、「衆泰汽車」の「山寨事業」が始まりました。

類似製品①「フォルクスワーゲンのゴルフ6」と「衆泰Z200」

  • 2011年、「衆泰Z200」がリリース。フォルクスワーゲンのゴルフ6に酷似。
左:フォルクスワーゲンのゴルフ6(画像出典:こちら) 右:衆泰Z200(画像出典:こちら

類似製品②「トヨタのAllion」と「衆泰Z300」

  • 2012年、「衆泰Z300」がリリース。トヨタのAllionに酷似。
左:トヨタAllion(画像出典:こちら) 右:衆泰Z300(画像出典:こちら

類似製品③「アウディのQ5」と「衆泰T600」

  • 2013年、「衆泰T600」がリリース。アウディのQ5に酷似。
    初年度の販売台数は一度SUV車のTop10に入ってました。
上:衆泰T600 下:アウディQ5 
(画像出典:こちら
  • 2015年、「衆泰汽車」が上場。

類似製品④「アウディのA6L」と「衆泰Z700」

  • 2016年、「衆泰Z700」がリリース。アウディのA6Lに酷似。

類似製品⑤「ポルシェのマカン」と「衆泰SR9」

  • 2016年、「衆泰SR9」がリリース。ポルシェのマカンに酷似。
    販売開始のところ、定価よりプラス4万元(約61万円)を追加支払わないと購入できませんでした。
上:衆泰SR9 下:ポルシェのマカン
(画像出典:こちら

ここで、「衆泰汽車」は事業のピークを迎えました。

衆泰汽車の経営者はある取材で、我々が「拿来主义(コピー主義)」で、外国の車型と技術を引き入れることによって、素早く事業発展ができると言っています。

しかしながら、自動車の外観の模倣だけに専念していたので、車の内部パフォーマンスが全く進化しておらず、「展示専用車」「山寨の王様」と揶揄され、ブランドイメージが転落してしまいました。そして、衆泰の車を乗って街に出たら恥ずかしいという人が増えてきました。

2018年、「衆泰汽車」の営業利益はマイナス12.4億元に転落。「衆泰SR9」の月平均販売台数は3桁に落ちました。

2019年、上半期の新車累計販売台数が6.38万台、前年度より44.52%減少。全年度の営業利益がマイナス112億元、株価は16元から1.4元に急落しました。

2020年6月24日、「衆泰汽車」の株は「退市风险警示特别处理(退場リスク警告特別処理)」とされました。

まとめ

「衆泰汽車」の成功と転落の要因は共に「山寨」であると思います。

中国では、「山寨」から始まるメーカーが少なくありません。事業成長に伴って自社研究に力を入れ、ブランド構築に尽力することは成功の道だとよく言われていました。衆泰汽車のケースでは、自社のビジョンを「山寨」に決めた瞬間に事業崩壊の結末が決まってしまいました。

中国消費者も、世代交代とライフスタイルの進化によって、低価格から品質の追求に変りました。昔のような「山寨」を出して話題にする時代はもはや終わりました。特に米中貿易戦争以来、「自主創新」という言葉は遥かな夢から「生き残るための生命線」に変化したのは中国国民の共通認識です。

今回は以上となります。

参考記事:
中国山寨帝国消亡史 https://www.huxiu.com/article/368169.html
造车不如卖家具,众泰汽车高端梦碎 https://auto-time.36kr.com/p/377278277206019

次回は【case2:スポーツシューズメーカー「阿迪王(Adivon)】です!

弊社では、模倣品対策の判断材料となるECサイトの調査および分析や、商標権を侵害する可能性のある商品を発見した場合、現地パートナーを通じて商品の代理購入が可能です。代理購入した商品が侵害品であった場合は、出品ページの削除や侵害訴訟等のサポートも一気通貫で対応可能です。

模倣品についてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

〈ライタープロフィール〉
申 思(しん し)
GMOブライツコンサルティング株式会社
情報部

2014年に入社。社内のシステム開発や受託開発のディレクターに就き、ベトナムのホーチミンにある開発支社の役員を二年担当して、現在中国の瀋陽に滞在しております。中国の知的財産権に関する情報を収集しながら勉強中です。