ちざ散歩 walk.03後編 ~Toreru潜入!コロナに負けないリモート対応とは~

   

  

こんにちは、企業弁理士&知財イベンターのちざたまごです。

前編の記事から時間が空いてしまいました。

Toreruへの訪問後に、コロナ問題が大きくなり、緊急事態宣言が出てしまいましたので、元の取材のままでは現状に合わない点があるかと思い、書き方を考えておりました。

ただ、その後、オンラインで追加インタビューを行い、「ITを駆使することで、どのようにToreruがリモートワークを乗り越えているのか?」という知見も得られましたので、その点も加えた訪問レポート+αとして、公開いたします。

リモート対策というだけでなく、今後の知財界を盛り上げていく明るい話題も入っておりますので、気軽に読んで頂ければ幸いです!

それでは、前編の続き、二子玉川のToreruオフィスからスタートです。

   

   

1、リモートワークのホンネ

   

―宮崎さん、本日はよろしくお願いいたします。時間軸が若干ねじれてしまいますが(笑)、取材時と違い、19年4月末時点ではToreruも原則リモート勤務、所属する弁理士やスタッフの方々もみんな在宅で勤務されていると聞きました。実際、そのような体制で、率直に言って不便は感じていないのでしょうか?

宮崎:そうですね、最初は不便を感じたのですが、色々とITツールを駆使することで、コミュニケーションの部分以外は、何とかなると感じています。

実はToreruでは在宅勤務は不可、オフィスで一元的にやりましょうというルールだったんですが、今回のある種、強制的なリモートワーク導入で、「リモートワークがあるのが自然」な世界に変わったと実感しますね。

コロナ問題が収まっても、リモート以前には戻らない、戻れないんじゃないかと思います。

―コミュニケーションに関しては、お客さんから電話で相談したいというニーズもありますよね。これに対してはどのように対応されているのでしょうか?

宮崎:Zendesk Talkという外部サービスを導入しているのですが、このサービスではかかってきた通話を外部の番号に転送できます。

転送された電話は自宅で事務スタッフが受けているのですが、メンバーがみんな在宅でも、Zendeskのウェブサービスで繋がっていれば、誰が電話対応可能なステータスなのか一覧でわかる。

このステータス一覧機能を活用し、案件の内容によって対応可能なベストなメンバーへ転送するようにしています。Toreruでは電話によるカスタマーフォローアップを積極的にやっていましたから、Zendeskがないと回らなかったですね・・。とても感謝しています。

―オフィスならではの電話対応もITサービスで何とかなるのですね!
ちなみに私も、いきなり在宅勤務になった一人なのですが、難しいのはモチベーションの維持です。正直、在宅だとなかなかエンジンがかからない日もある。その点、何か工夫がありますか?

宮崎:オフィスに入って業務開始することは、気持ちのスイッチになっていましたから、突然の切替えはなかなか難しいとは思います。

そこで、Toreruでは毎朝9時45分~10時に、ウェブ会議で全員参加の朝会をやっています。

メンバーと顔を合わせることで自然と気持ちの切替えができる。終業も通常勤務の時と同じタイムスケジュールで、遅くても19時15分には終わるルールになっています。

また、在宅勤務でもお客様との電話会議は予約制で普通に受けています。自宅でも通常勤務と同じように、人と約束をし、会話をして、業務をオフィスと同じようにこなせる環境を作るのが、メリハリのコツだと思います。

―あと、リモートのコミュニケーションについては、他のメンバーの仕事の様子がなかなかわからない。Slack、Teamsなどのチャットでも、文字だけでは限界がありますよね。

宮崎:確かに雑談とかしづらい部分はありますよね。

そこで、毎週1回、14時~で「シャッフルトーク」という時間を設けました。これはメンバーをランダムで4人1組にし、3チーム作ってそれぞれで10分ほど雑談する企画です。

4人ずつにしたのは、人数が多いとどうしても黙っちゃう人が多くなる。ウェブ朝会だけだと連絡事項で終わってしまうので、意図的に雑談する機会を作ろうという試みです。

―なるほど、色々と試行錯誤されているんですね。ちなみに、ポジティブな面として、強制的にリモート環境に入ったことで、良かったことや、得られた知見はあるでしょうか。

宮崎:そうですね、リモートだと「黙っていても何となく伝わる」ことが無くなってしまうので、「可視化する」という作業に本気で取り組むようになりました。

例えば、お客様からどのような問い合わせが多く来るかとか、メンバーがどのような対応に時間がかかっているかなど、【データを取って、分析して、改善する】ことは、今までやらなきゃなと思いながらも、なかなか手が付けられていませんでした。

ただこの点、リモートワークでは周りにメンバーがいないので、情報を能動的に伝えないと、何も伝わらない。これは、情報を整理・発信する圧力になり、結果的にサービスの改善が進んでいると感じます。

―リモートワークが、組織の成長の機会にも繋がると・・。色々大変な部分はありますが、積極的に適応し、「ピンチをチャンス」に変えていきたいですね。

    

      

  

2、トレル流  IT活用術

―さて、ここからは時間軸をオフィスに来たタイミングに戻し(笑)、所長の宮崎さんだけでなく、Toreruで日々、調査・出願の実務をされている方のお話も聞いてみたいです。

宮崎:では、パートナー弁理士でCOO(最高執行責任者)の土野に来てもらいましょう。彼は、Toreruにおける商標業務の実務責任者なので、突っ込んだ話が聞けると思います。

  

COO(最高執行責任者)の土野弁理士

   

―土野さん、本日はよろしくお願いします。いきなりですが、何でToreruに入所されたんでしょうか?

土野:きっかけはTwitterだったんです。元々、商標事務所の商標弁理士だったのですが、半分趣味でプログラムスクールに通ったところ、卒業制作で何かアプリを作って公開してという話になり。

そこで、商標の指定商品の記録を残せる、Goods Ideaというアプリを作りました。

  

    

そうしたら、Twitterで宮崎より「面白いことやってますね、一度話してみませんか」と声がかかりまして。 

       

 ーおお、テック事務所っぽいですね!宮崎さんに会ってみて、すぐに移籍しようと決めたんですか?

土野:いや~、すぐには・・・。伝統的な事務所にいましたから、IT技術を駆使して、出願9800円でやります!って言われても、なかなか・・

―うーん、私も先ほど実際の調査レポートを見るまでは、AIが適当に検索して出願をガンガンお勧め。拒絶来たら、まあ仕方ない!って割り切ってるのかと思ってました。

 土野:最初は、私も「普通にやったら9800円はどこかで手を抜かないと無理だろ?大丈夫なの?」と。でも詳しく話を聞いたら、全然考え方が違ってまして、 


①まず商標事務所がプロフェッショナルとしてアウトプットする仕事の中身をリストアップし、やるべき仕事を明確化する。

②やるべき仕事のうち、定型化できる仕事、技術により効率化・スピードアップできる仕事を抽出する。その仕事を徹底してIT技術により効率化。

③残った「人間しかでいない仕事」にスタッフは集中し、クオリティをさらに上げていく。


という方法論だったんですよ。守るべき品質から出発している。

―なるほど、これならクオリティは落ちないですよね。  

土野:はい、しかも価格が安くて効率化しているから、毎年受任件数がどんどん増え、実務経験がガンガン溜まっていくんです。

  

―うわ、加速度的に増えてますね!

土野:さらに調査において、人間が判断すべきコアな部分はToreruの弁理士が必ず目を通すため、1人年間1000件は最低でも担当します。私は自分の案件のほか、COOという立場でチェックもしていますから、4500件以上の調査案件を去年見ましたね。

―まるで百本組手・・・。でも、これ、聞きにくいんですが、そんなに案件をやってたら、実はブラックなんじゃないですか?調査は持ち帰って夕食後に家で調査とか、土日はないとか。

土野:いや、それが当所は労働管理がとても厳しくて。ワーキングタイムは9:30-18:30(17:30に帰っても良い)ですが、19:15に最終退館のため、電気が落ちて鍵が締まる。

ー大企業の労務管理より厳しいですね。いまだに打刻した後、こっそり戻って仕事とかしてますよ。 

土野:メリハリは滅茶苦茶つくようになりましたね。19:15までに終わらせる以外の選択肢がないので・・・。

時々は、メンバーの「気合い」で乗り切る場面はあるのですが、可能な限り「気合い」というリソースを使わないようにして、その分、システムやツールの力を使って効率化していく。

例えば、Slackを使って、社内に「商標 学びの部屋」というのがあるんですが、そこで押さえておくべき審決例・裁判例などがどんどん共有されてます。

     

学びの部屋 ~実例ベースで即、使える~

スタンプやコメントがつくことで、みんながどれぐらい読んでるかわかるし、投稿されたデータが検索できるから、意見書を書くときに

「似た拒絶克服の案件、学びの部屋で見たような・・・(検索)あったあった、これを参考にしよう!」

みたいなことが、ITによって全員同じレベルでできるんですよ。

ーそれって、学びもすごいシステム化されてますね。今までは知識の向上は個人に任されていた。「知財管理」とか「パテント」が回覧されてきて、付箋がついている所を何となく読んで終わりとか。

土野:紙だと読んでもすぐ忘れちゃいますよね。回覧が書類に埋もれていて、半年前のものが忘れたころに回ってくるとか(笑)。

ITを活用することで、そういう「学んでる風だけど、実は身に付いてない」というのも変えられたと思います。

ー伝統的な商標事務所から移籍して、ギャップはあったんですか?

 土野:Toreru は外から見えるよりちゃんとしてたので(笑)、実は中に入ってみるとそれほどギャップはなかったんですが、例えば調査報告書でしっかり理由付けを書くとか、依頼人に指針を示すという部分は、自分が入所してからToreruの実務で意識的に変えていきましたね。

単に5分5分です、と書かれても、商標知識がない方は困るばかりじゃないですか。

 ー確かに、採るべきアクションを示してくれるのがプロだろうと・・。

 土野:Toreruでは、FACE TO FACEで依頼人に会う機会が少ないという難しさはありますが、メールや依頼フォームの情報、電話に基づき、できるだけ依頼人の本当のニーズを掘り起こし、価値があるアドバイスができるように工夫しています。 

ーしかし、Toreruの出願手数料が格安といっても、結局自分で印紙貼って出すのが一番安いという話には勝てないですよね。

 土野:この点、伝統的な事務所だと、出願1件5万円で高いと言われることがありますが、実はその5万円には出願に至るまでのもろもろのアドバイス料、すなわちコンサルフィーが含まれているんです。

これは Toreru も同じことで、Toreruは1件9800円で安いかもしれないけど、それは業務の定型的な部分を効率化して実現したことで、コンサル部分を放棄したつもりはない。

 システムを使ったToreruの先駆的な部分に、伝統的な商標事務所の調査ノウハウや、コンサルティングのスキルも加え、より良いサービスにしようと日々取り組んでいますから、ユーザーにも「専門家が介在する価値」をしっかりと届けていきたいです。

あと調査・出願の部分に注目されがちですが、拒絶が来たときの意見書は、経験を蓄積してガチで書いてますから、意見書のクオリティははっきり言って、自信があります。

ーやはり案件が大量で、経験がガンガン溜まるというのが大きいですね。何事も実戦経験ですから。  

土野:AI、IT技術とかいって特別視されがちですが、パソコンだって最初は誰も使いこなしていなかったのが、今では普通のツールになっている。

ツールは使い倒し、その分人間がやるべきことにフォーカスすることこそが大切で、TECH事務所とみられるからこそ、IT技術を特別視せず、本質を大事にしていきたいです。

3、Toreruが変えたい知財・・情報発信、始めます!

―色々とお話を聞き、だいぶToreruの強みが分かってきました。2019年には、Toreruが商標公報ベースでの代理件数No.1になったそうですが、さらにこの先、目指す目標はあるのでしょうか?

宮崎:そうですね、そもそも何でToreruを作ったのか?という話にもなるんですが、「知財を最大限活用できる社会にしたい」という思いがあります。元々、自分はトヨタ自動車で勤務した後、弁理士の資格を取得し、父親が経営する特許事務所に入所しました。

そこは、いわゆる”普通”の、書類仕事が多い事務所だったんですが、ペーパーレス化することで、もっと効率化できないかなと。弁理士がやるべき仕事に集中するために、遠回りですけど自分でプログラミングを勉強して、Toreruのシステムを1から作りました。

おかげさまで、Toreruのサービスは多くの方に支持を頂けたのですが、ITで「権利化のハードルを下げる」ということだけでなく、権利化以前の“創出”や、その後の“活用”についても活性化していきたいです。

―知財の活用は、イマイチ世の中に広がっていない気はします。権利を取って終わりというパターンも多いですよね。活用の事例が広がらないので、創出の意欲も薄い・・・。

宮崎:はい、そこは課題だと感じています。一朝一夕に解決できるものではないですが、私としては、やはり知財畑の方々だけでなく、ふだん知財に触れていない業界外の方にも、知財の価値や面白さを感じてほしい。

そのためにできることを色々と試していますが、その一環として最近Youtubeで配信を始めました!

    

   

チャンネルの特徴としては、一般の方でも興味が持てそうな商標の紛争や、Toreruで使っているおススメのウェブサービスなど、業界以外の方にも広がるようなネタを取り上げています。

企業で研修のネタとして使っていただくのも良いかもしれません(笑)。

また、元々Toreru Mediaというオウンドメディアも作っていたのですが、1年ほど放置してしまっておりました。ただ、Brand Todayさんの取組みにも刺激を受け、自分たちも情報発信をもっと頑張らなければ!と感じ、リニューアルして5月より再始動します。

週1回以上は定期的に更新し、コンセプトも「知財を身近にするメディア」と改め、再度立ち上げ直すつもりです。

記事も、分かりやすい商標実務の解説だけでなく、インタビュー、登録商標を探して実際に街に出る企画など、体当たりのネタも用意し、知財の面白さを外に広げていきたいです。

―知財業界内や専門家向けの知財メディアは複数ありますが、「知財を身近にする」というコンセプトは新しいですね。BRAND TODAYともども、新しい風を期待しています!

Toreru Media(トレルメディア)- 商標登録の情報発信サイトhttps://toreru.jp/media/

     

   

  

4、知財は、“本来” 面白い

―最後に、ムゲンチザイのイベントでも目指している「知財をもっと面白く」というビジョンに対して、どうしたら面白くなるのか?お二人から一言コメントをお願いいたします。

土野:そもそも、知財そのものは、本来「面白い」ものだと思うんです。新しいアイデア、人間の感性を刺激するデザイン、”人の認知の総合芸術”といわれるブランドなど、知財で保護しようとする対象はバラエティに富んで、刺激的ですよね?

人間のあらゆる活動や感性・感情と密接に関わり合うのが知財なので、“権利”の法律的な世界に閉じこもらず、他の分野と掛け合わせると、もっとおもしろさが広がると思います!

宮崎:自分も、意思さえあれば、いくらでも知財は面白くなると感じています。

知財は人間の創作物の集まりなので、創作の過程にストーリー性がある。

登録証や明細書のみを見ていると、知財は無味乾燥に思えますが、クレームドラフティングでさえ「特許の鉄人」でエンタメ化できたことを考えると、可能性はまだまだあります。

知財の盛り上がりがToreruの成長にもつながりますし、そもそも自分が「面白い知財」をもっと見てみたい。イベントにスポンサードしているのもその一環です。

再始動するToreru Mediaをはじめ、自身でも色々と仕掛けて、盛り上げていきたいと思います!


Toreruのお二人の情熱に触れ、知財界がさらに刺激的に変わっていく可能性を感じました。

これからの進化にも目が離せません。Toreruの皆さま、ありがとうございました!


書いた人:ちざたまご

企業内弁理士/ムゲンチザイプランナー。「知財はもっと面白い」をキーワードに、企画×知財の世界を掘り下げ中。

Twitter:https://twitter.com/chizatamago

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