「弁理士にお任せあれ 特許・商標・意匠 早道解決」の著者・大樹七海先生へインタビュー!

    

弊社のクラウド型知財管理システム「BRANTECT」に、ネーミング管理機能が追加されました。
今回の機能追加の背景には、花王株式会社様に、「BRANTECT」を商標管理システムとして導入いただく中で頂いたご要望がベースになっています。
開発のヒントをいただく中で見えてきた花王株式会社様のブランド・商標管理スタイルは弊社から見ても理想的です。今回は、そんな花王株式会社様のブランド・商標管理についてお話を伺うことができました。


― 新作の発売おめでとうございます。作品のご紹介をお願いします。

     

大樹:ありがとうございます。本書は、知財ビジネスを行いたい経営者、エンジニア、クリエイターへ、知財のプロである「弁理士の使い方」をガイドする本です。
そもそも、弁理士については知らない方が殆どではないかと思います。

    

― 確かに一般的にはあまり知られてない職業というイメージがあります。実際、私もこの業界に入るまで弁理士という職業を知りませんでした。

     

大樹:そうですよね。弁理士は知られていなくても、ロゴマークやネーミング、技術、デザイン、ビジネスといったアイデアを元に、競合他社に勝つために事業展開をするにはどうしたら良いのか、その道のプロに聞きたいけれど、どこで誰にどう聞けば良いのかわからない、という方は多いと思っています。

その道のプロが弁理士です。そこで弁理士の使い方をお伝えし、知財の参謀・用心棒たる弁理士を味方につけて、競合他社に対して有効な知財戦略を立てられる様になるための本を作りました。殆ど知られていませんが、実は弁理士は既に120年以上、日本の知財業務を担っている国家資格者です(本書「弁理士の歴史と使命」で弁理士の歴史についても触れています。)

    

― 新作を拝読しましたが、弁理士には何をどのようにお任せすることができて、相談するためには何が必要なのか、知的財産ビジネスを始める際に、弁理士を活用するための手引書という印象を受けました。新作タイトルが「弁理士にお任せあれ」となっているのはそういったことからなのですね。では、今回作品を書いた理由・背景は何でしょうか。

   

大樹:まさしく、弁理士を活用するための手引き書です。本書を書くに至った理由の一つに、近年ICTやIoT、AIの急速な発展で、新たなビジネスモデルを掲げるスタートアップ企業やクリエイターが続々と誕生している背景があります。そうした方々は、無体財産(知的財産)と呼ばれる、テックやアートのアイデアを原資に勝負をしている方々です。しかし、そうしたアイデアを生み出した後、それを事業の柱にするための「権利」である、知的財産権の取得の仕方、運用、管理、活用の仕方は、驚くほど知られておらず、また権利に対する誤解も多いと感じています。

    

― 最近は、まんぷく、陸王、下町ロケットなど知的財産を題材にしたドラマも多く、特許や商標の存在はより身近なものになりましたが、一方で誤った認識がされていることもあるのですね。

    

大樹:そうですね。知的財産で勝負するなら、素晴らしい「知的財産」を生みだそう、で終わらせず、その先の、素晴らしい知的財産「権」にするにはどうするかを検討するところまでが、思考ルーチンとしてセットである、ということが認識されていくようにしていく必要があります。ドラマでは描かれない部分であり、この基本となる権利化の部分を生業としている弁理士が知られていない理由の一つですが、それは同時に知財ビジネスの戦術も知られていない事に繋がっています。

単に「弁理士」という単語が注目されればいいというものでもないとも思っていまして、弁理士はあくまで代理人ですので、経営者の方の認識が変わる所までいくのが重要で、事業経営における知財戦略とセットで知られるようにするために、本書を執筆しました。中国では直近5年間で弁理士を2倍(2.5万人)にする目標が掲げられ、知財サービスが拡充していっており、出願大国化し、知財紛争が増加し、賠償が高額化しています。世界を見れば成長著しいASEANやBRICSで出願件数が増加しています。日本企業が知財に対して理解不足のまま無防備な状態で、国内から世界展開していく事が増えれば、日本の経営が危うくなります。知財の攻めと守りの戦術を貪欲に学んで欲しいと考えています。

    

― 本書を作成するうえで、工夫したことはありますか。

大樹:一番は、「見やすさ・分かりやすさ・使いやすさの追求」です。 極力、法律の専門用語を避け、端的でわかりやすい表現を用い、一覧性に優れた表を多用し、一目でイメージできるイラストを配しました。また、知財の活用やニュースの背景がわかるコラムも用意し、楽しく読める様にしました。表は重要なポイントが抑えられているので、印刷し貼って頂いても良いと思います。
ちなみに表紙もイラストも著者が描いています。表紙は特許庁です。ちなみに特許庁は特許だけでなく、商標や意匠も扱っています。特許庁は日本の知財行政を担っているので、国旗が掲げられています。

例えば以下のイラストですが、こちらは弁理士の役割を端的に示しました。

「弁理士はアイデアを権利にしてくれる人」
弁理士: 発明・ブランド・デザインの権利化(特許・商標・意匠等)
弁護士: 人・企業間での権利の取引等におけるトラブル解決
(第1章「まずは弁理士と会おう!」「2.弁護士と行政書士とどう違うの?」P3より)

     

― こちらのイラストを見るだけで、弁護士と弁理士の役割の違いや関係性が一目瞭然ですね。
知的財産は一般的に専門的で難しいというイメージがあると思いますが、効果的にイラストを用いることで、馴染みがない方にも分かりやすくなっていると感じました。

   

「弁理士と特許庁の審査官」
(第2章「弁理士にお任せあれ」「2.特許庁との手続きの代理」P28より)

     

大樹:ありがとうございます。ちなみに科学・知財コンテンツクリエイターとして、イラストはジェンダーや社会情勢にも配慮し、弁理士(男女)がイラストに登場します。ちなみに、弁理士の男女比率は男性84.3% 女性15.7%です(2020年1月31日 日本弁理士会会員分布状況)。

次に、「明日にでも弁理士に会いに行ける」というコンセプトを重視して執筆しました。
特許・商標・意匠の権利の取得は「早いもの勝ち」です。従って、いち早く知財ビジネスを開始できるよう、初心者の方がまず最初につまずく、どこで弁理士に会えるのか、弁理士の探し方や選び方、事前準備に持ち物リスト、といった具体的な情報を提供しています。特に、全国の「日本弁理士会による無料知的相談室」のリストには情報を集約させましたので、本書をカバンに入れ、会いに行って頂ければと思います。

また、ガイドブックとして「知財スターターキット」かつ「オールインワン」になるように努めました。知財初心者の方の「知財スターターキット」として、知財ビジネスに必要な情報を簡潔にまとめ、またこの1冊で知財業務のほぼ全てを見渡せるようにしました。参考書もまず最初の1冊は薄くて分かりやすいもので概観を掴んでから攻略するイメージです。

   

― まさに知財ビジネスのためのオールインワンですね。知財ビジネスのスタートラインに立った時に、弁理士の活用への入口となる本書があれば、非常に心強いと思いました。

   

大樹:そう言って頂けると著者冥利に尽きます。ここまで来るのに2年かかりました。今年は意匠法の大改正もありましたので神経を尖らせながら執筆しました。
意匠権という、デザインを権利にできる知名度の低い権利があるのですが、この大改正で新しいビジネスチャンスが広がります。デザイン経営を主導する方々に向けて、「経営者・クリエイターが知っておくべき権利の戦略的使い方」を伝えるべく、戦略的に意匠・商標・商標等を縦横に使う方法に力を入れて執筆しました。

最後に、「プロの技術や視座を伝えること」を根底に置いて執筆しました。 安易な権利の取得や権利の用い方をし、失敗をする、あるいは失敗していることにすら非常事態に至るまで気づかず、プロに助けを求めてきた時点では既に手立てがない、という事態が起きていることに憂慮しています。

   

― 権利の取得に関しては、プロである弁理士に相談しなくても物理的には可能であるため、弁理士に頼ることなく自分で出願する方もいますね。結果的に想定していなかったコスト、労力、時間がかかってしまうケースもあると聞いたことがあります。

   

大樹:その通りです。また逆に怖がる必要のない所で、過剰に権利を恐れて事業が出来ないという事も起きています。そこで、プロがどれだけの状況や展開を想定した上で、事を進めているのか、という事をお伝えしたいと思いました。
プロの技術や視座がわかると、権利の質を高めることができます。弁理士は代理人(影であり従)ですので、主たるみなさんの力が高まることで、プロをより使いこなし、タッグでより強い権利を創ることができます。

   

― では本書を書く上で苦労したことはありますか?

    

大樹:弁理士の業務は非常に高度なため、細分化されている面があります。医者に例えるなら、脳外科医から麻酔科医、検診から法医学まで幅広い領域があるように、知財業務もかなりの広がりがあります。それを端的にわかりやすく伝えることに苦心しました。本書では「自分に合った弁理士の選び方」の節や、「専門分類・業務分類からみる弁理士の選び方のコツ」というリストで、弁理士の違いがわかるようにしました。

また、法律用語を極力避けつつ、なるだけ正確性が損なわれない様に説明することにも苦心しました。専門家の方にはその点、色々思う点があると思いますが、ご容赦願いたいと思います。

    

― 弁理士業務を知らない方が読むことを前提としているために、専門用語・法律用語は極力使用せず、平易な表現をされているのですね。専門用語を誰が読んでも理解できるように表現しつつ、本来の意味との乖離がないようにバランスを取るのは非常に苦心されたのではないかと想像します。

本書を誰に読んで欲しいと考えていらっしゃいますか。

    

大樹:知財初心者であって、これから事業戦略に特許、商標、意匠といった知財をツールとして活用してみたいと考えておられる方々に、知財の勘どころを即座に具体的に掴んで頂ければと思っています。自社に知財部や法務部がなく、時間もなく、社長自ら全てを見なければならない状況下にある、スタートアップ企業経営者、中小企業事業経営者、独立されたデザイナーの方々を想定して執筆しました。どの章からも読める様に執筆しましたので、例えば特許だけ、商標だけ、意匠だけ、と興味のある所から(だけ)読んで頂く使い方でも大丈夫です。

   

― ある程度、自分が何をしたいのかアイデアが固まっている人は、「本書の見方」に沿って各章を読めるようになっているのですね。

   

大樹:ええ、「本書の見方」で使い方を掴んで頂ければと思っております。

    

― これから知財業界をどうしたいと思っていらっしゃいますか。

   

大樹:知財業務を担う最たる士業が弁理士ですが、弁理士の力だけではなく、技術者、サーチャー、図面作成者、翻訳者、国内外事務スペシャリストといった、様々なプロフェッショナルの方々からなるチームで、知財サービスが成立しています。

しかしこの高度に練られた知財サービスも、そうしたサービスが存在することや使いこなし方が知られていなければ、いつまで経っても広く活用されるには至りません。また、ビジネスの変化が非常に激しい現在、従来の知財サービスにはない要求にも応える必要があります。そうした新領域への開拓は、経営者とそれを支える知財支援のプロたちにとって、チャレンジングでワクワクするものです。私は知財には広い市場が広がっていると思っています。これを開拓し、この優秀な方々が活躍できるように、手がまだ届いていない部分において、市場活性化に繋がる普及活動を続けていきたいと思っています。

   

― 書き上げてみて、手ごたえはどうでしょうか。今の気持ちはどうでしょうか?

   

大樹:大変な反響を頂いています。Amazonで発売後2日間で完売し、予約された方も強制キャンセルが続き、取り扱い中止が続いている状況です。書店では3月13日位から入荷され、幾つかの書店で完売の報告を頂いています。コロナ禍と重なってしまった事もあり、お届けするのに厳しい状況が続いていますが、版元の発明推進協会からは購入できていますのでご安心下さい。読者の方から頂いたご意見・ご感想は大変有難く、本書ツイッターアカウントhttps://twitter.com/benrishiomakaseでもご紹介させて頂いております。本書ご購入をお考えの方は参考にして頂ければと思います。書店入荷情報も随時発信しています。

   

― 大樹先生、本日はありがとうございました。

    

すでに読まれた方からは「著者の使命感や誠実さが伝わってくる」「分かりやすい説明!」「知財に馴染みがない人も分かる」と大好評とお伺いしています。

私も、知財法を学習するための書籍や、実務向けの専門書は今まで読んだことがありますが、知財ビジネスを始めたい人向けのガイドブックという切り口は斬新だと感じました。専門的な内容も平易な言葉で表現されていたり、図が活用されていたりといたるところに工夫がされており、読みやすさも感じました。

まさに知財ビジネス入門にぴったりの一冊、普段知的財産に馴染みがない方も是非読んでみてはいかがでしょうか。

普段、知的財産に関わりがない人でも無理なく読み進めることができる一冊。
筆者は3時間で通読できました。

      

<書籍情報>
書籍紹介:https://note.com/ookinanami/n/n128633eebebe
Twitter:https://twitter.com/benrishiomakase

<販売情報>
発明推進協会
Amazon 
善・ジュンク堂・文教堂・honto
紀伊
国屋書店
三省堂

【著者紹介】

大樹七海(おおきななみ) 科学・知財コンテンツクリエイター。

国立研究開発法人の理化学研究所(理研)、産業技術総合研究所(産総研)にて半導体・創薬研究開発・TLO・国際連携業務を経て、法学修士、弁理士試験合格。

産業科学技術・科学技術政策・科学技術史・理系人材育成等におけるコンテンツを制作。

著書等として『ストーリー漫画でわかる ビジネスツールとしての知的財産』大樹七海(著者)・杉光一成(監修)(アップロード出版)、内閣府知財教育選定書(16万部配布)『マンガでわかる規格と標準化』大樹七海(著者)・一般財団法人日本規格協会(監修) ・一般財団法人知的財産研究教育財団(協力)、弁理士受験ノウハウ連載漫画、マンガで解説!『弁理士への道』大樹七海(著者)(LEC東京リーガルマインド) 等がある。
現在、一般財団法人日本規格協会月刊誌『標準化と品質管理』にて『大樹七海の規格と標準化探訪』連載中。

詳細は以下ウェブサイトを参照
大樹七海(note):https://note.com/ookinanami 
Twitter:https://twitter.com/ookinanami73


〈ライタープロフィール〉
千葉 やよい(ちば やよい)
GMOブライツコンサルティング株式会社

IPソリューション部/ドメイン担当

2012年に入社。営業アシスタントやBRANTECT、商標を担当したのちドメイン担当に就きました。主にガイドライン作成を行っています。ドメインについては現在進行形で勉強中。
趣味は漫画、アニメ鑑賞、ゲーム ​

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