中国で模倣品が多いワケ(その3:ネットで繋がる模倣品ビジネスの輪)

こんにちは、ちざたまごです。

中国で模倣品が多いワケを様々な観点よりあらためて考えてみるこの記事、思った以上に考えることが多く、全3回となってしまいました。今回が完結編となります。

第1回「(中国人の)お金とニーズ」第2回では「世界最強の製造力」という観点から考察したのですが、今回は現代の模倣品を語る上では避けては通れない「ネット&スマホによる模倣品ビジネスの成長」という点を考えていきたいと思います。

  

 インターネット=スマホ経由な中国


さて、皆さんはインターネットにアクセスする際、どの機器を使用しているでしょうか?

一昔前ではPCと回答される方がほとんどだったと思いますが、今の時代、PCは会社でしか使わず、プライベートはほとんどスマホという人が増えてきていると思います。

私もこの原稿を書くとき以外は自宅のPCはほとんど使っておりません・・。

総務省の2017年統計を見ても、インターネット利用率(個人)の端末別内訳は、スマートフォン(59.7%)が一位となり、パソコン(52.5%)をついに逆転しました。日本のインターネット利用率は個人ベースでは80.9%なので、日本人全体でみると約2人に1人がスマートフォンを使い、インターネットにアクセスしていることになります。人口換算だと約6,300万人です。

これに対し、中国はどうなのでしょうか。中国インターネット情報センターの報告書によると、「携帯端末からの利用者がネット利用者全体に占める割合」は98.3と異常に高い数値を示しています。

中国でインターネットといえば、一般に「スマートフォンなどの携帯端末を用いてアクセスするもの」という環境があるといえます。

中国のインターネット利用者は約8億人、携帯端末からの利用者が約7億8,700万人と、日本の8倍近くのインターネットユーザーがおり、そのほとんどがスマートフォンを利用していることが分かります。

  

中国ECビジネスでは外せないTaobaoとT-mall


では、中国のユーザーはインターネットで何をやっているのでしょうか? 先ほどの報告書に中国でのネットサービスの利用率がまとめられていました。WECHAT、百度、youkuなどなど、個々のサービス名は日本と異なるものの、人気があるサービスカテゴリーは日本とほぼ同じです。

  

  

模倣品対策の観点では、5位に入っているネットショッピングが気になりますね。

中国のネットショッピングで最もメジャーなECサービスは、どちらもアリババグループが提供する「淘宝網(Taobao)」と、「T-mall」となります。(どちらも中国ユーザーのスマホ利用のニーズにしっかりと対応しており、iPhone、Android両方で専用アプリが公開されています。)

この2つのサービスの違いを簡単に説明すると、Taobaoは個人・商店・企業問わず誰でも出店可能であり、アリババ社も出店登録料・販売手数料は取らない(販売ページのカスタマイズや広告機能の利用は有料)、いわばフリーマーケットのようなサービスです。主にC to C向けのサービスといえるでしょう。

対するT-mallは2013年に淘宝網から分離する形で開設されたB to C向けのECサイトで、高級・本物志向をテーマとし、厳格な審査をパスした法人のみが出店できるショッピングモールという位置づけになっています。日本企業でもユニクロ、ソニーなどが官方旗艦店(オフィシャルショップ)を開設しています。

T-mallに出店するためには中国本土の営業許可証・販売許可証等を提出した上で、保証金・年会費・販売金額に応じた手数料をアリババに支払う義務が生じることになっており、模倣品を販売した場合の処罰もタオバオに比して厳しいものとなっています。

  

  

  

※クリックすると各サービスのTOPページに飛びます。

 試しに興味がある商品のキーワード(漢字又は英語)で検索してみると感じが掴めると思います。

Taobao、T-mall2つのECサービスを合わせた年間流通総額は2016年度で56兆円、このうちフリーマーケット型であるTaobaoの売上は約35兆円と推定されています。TaobaoはT-mallに比べアリババ社のコントロールが弱いことから、模倣品の出品が後を絶たず、多くの日本企業がその対応に苦慮しているという現実があります。

中国のユーザーは、質はそこそこでも価格を優先したい通常の買い物ではTaobao、好きなブランドや品質にこだわりたい商品の場合はT-mallと両者を使い分けていると言われています。

フリーマーケット型のTaobaoには色々な出品者がおり、中には信用できない業者・模倣品を売っている業者も存在するというのは、ある種「常識」であり、残念ながら「模倣品であっても、安くて、自分が理解して買うのであれば問題ない」と考えるユーザーも相当数おります。

『ユーザーがいるから模倣品が作られ、模倣品が手に入りやすいからユーザーが生まれる』という、ニワトリが先か、卵が先かというような命題があるのですが、スマートフォンからはECサイトに簡単にアクセスでき、模倣品は安価で買いやすく、つい流れで模倣品を購入するユーザーは後を絶ちません。

ECサイトでは、模倣品が売上上位になるとサイトの上方に表示されるようになり、それを見て売れ筋商品と判断した第2・第3の模倣品業者もさらに参入してくる・・・という負の連鎖も起こりやすい。

インターネットやスマホの普及が模倣品ビジネスを成長させた面があると、言わざるを得ないでしょう。

  

模倣品業者同士を結びつけるインターネット


インターネット&スマホが模倣品ビジネスに与える影響は、単に販売機会の提供にとどまりません。

模倣品業者同士を結び付ける効果もあるのです。

皆さんは「猪八戒网(ZBJ.COM) 」という中国のサービスをご存知でしょうか?Taobao, T-mallと違って、日本で知名度はほとんどなく、ご存じない方が大半かと思います。

「猪八戒网」は中国最大手のクラウドソーシング・プラットフォームサービスで、登録ユーザー数は1900万人以上と言われています。

  

  

クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の人に業務を委託するという新しい雇用形態で、日本ではフリーランスの方がスキルを活かして企業からの発注を受け在宅ワークをするという形が主流です。対して「猪八戒网」は一歩先を行き、B to B(企業間の仲介)や、G to B(政府から企業に対するクラウドソーシングニーズの仲介)をも推進しています。

実際に「猪八戒网」のウェブサイトを見ると、ロゴ・商品・PKGデザイン、工業デザイン、3Dプリンターによる試作作成、ハードウェア・ソフトウェア開発から、Eコマースサイト開設、セールスマーケティング、事業計画の立案などのビジネスコンサルティングまで、ビジネスを進めるうえで必要となるあらゆるサービスが仲介されていることがわかります。

  

引用:https://www.zbj.com/

    

もちろん「猪八戒网」では規約等で知的財産権を侵害するようなサービスの仲介は禁止されており、罰則もあります。ただ、「猪八戒网」内で知的財産権を侵害する行為があった場合、「猪八戒网」の信用点減点・販売停止7日間・保証金の没収・退会のような罰則規定はあるものの、「プラットフォームユーザーが権利侵害行為による一切の経済的損失を自分で負担し、猪八戒网は法的責任を一切負わない」規定になっています。

  

 猪八戒平台服务规则: https://rule.zbj.com/ruleshow-27?categoryId=157&pid=158

 猪八戒平台争议纠纷处理规则: https://rule.zbj.com/ruleshow-27?categoryId=157&pid=280

  

試作品の作成を頼まれたサービス提供側が、そのデザインが知的財産権侵害だと知らなかった場合や、プラットフォームを通じて仲良くなった後、模倣品の開発サポートを個別に依頼する場合など、「猪八戒网」のコントロールを超え、模倣品の製造に繋がるケースは様々に考えられます。

異なるスキルを持つ技術者や企業同士をマッチングさせるクラウドソーシングサービスは、正しく使えばビジネスのマッチングを広げる素晴らしいサービスです。しかし、実際の設計・デザイン能力を持たない模倣品業者が悪用すれば、不足していた能力を補い、模倣品ビジネスを広げることにもなりかねない・・。

インターネット&スマホの普及は、製造・販売あらゆる面で、模倣品業者の力にもなっているのです。

    

まとめ:無くならない模倣品に絶望する前に


さて、まとめに入りましょう。

これまで3回の連載では、『中国で模倣品が多いワケ』を以下のように分析してきました。

  

第1回:普通の中国の人々1人1人が使える金額は多くなくとも、人口14億人の中国なら巨大なバイイングパワーになる。富裕層ではない、普通の中国の人々(約12.5億人)の受け皿として、模倣品ビジネスが成立している。

第2回:中国製品の市場における一番の競争力は「低価格」にあり、簡単に価格を上げることができない。自前でブランディングして「高価格」であることをユーザーに納得させることはハードルが高く、著名なロゴを付けるだけで販売価格が跳ね上がるような安易な侵害行為を選ぶ業者が後を絶たない。

第3回:インターネット&スマホの普及で、模倣品業者は誰でも出品できるECサイトという販売網を手に入れただけでなく、試作・製造・デザイン・マーケティングなど、自らに不足しているあらゆるビジネス機能を補足可能になった。

  

これらの要因は、今後数年で消滅するとは考えにくく、残念ながら『中国に模倣品が多い』環境は当面続くものと考えられます。

それでは我々は、これら中国の模倣品・模倣品業者にどう対抗していくべきなのでしょうか?

具体的な方法論はケースバイケースであり一言では答えられませんが、出発点として大切なのは「模倣品を根絶させること」を目標に置くことではなく、「模倣品から正規品のマーケット、ユーザーを守ること」を目標として対策プランを練っていくことです。

身近な例で考えると、「日本中から万引きをゼロにすること」はほとんど困難に思えても、一方で「地元商店街の万引き被害を減らして、気持ちよくお客さんに商品を買っていただき、各店舗の生活を守る」という目標であれば、現実感が出てきます。

大半の知的財産権侵害は、権利者から離れたところで起こるので、目標を絞りこんだとしてもその対策は一筋縄ではいきませんが、少なくとも「何をやっても無駄」という虚無感からは逃れられ、具体的なアクションプランが立てられるはずです。

さらに、真正品と模倣品は花と雑草の関係にも似ています。

模倣品という雑草を抜いてもしばらく経ったら復活する、場合によっては、雑草はより強い耐性を付けて戻ってきてしまう。であれば、真正品という「花」を育てたい場所の雑草を集中的に抜き、抜いたあとに花をさらに植えていく。ある程度雑草を抜くことに成功すれば、その周辺の雑草も抜くことで、「花畑」のエリアを広げていく。

模倣品の存在自体に絶望するのではなく、「模倣品が多い=ユーザーのニーズがある証拠」と理解し、いかに真正品を広げていくかをマーケティング目線で考えれば、模倣品対策も前向きかつ、クリエイティブな仕事と捉えられるのではないでしょうか。

  


<ライター紹介>

協力ライター ちざたまご

都内メーカーの知財部に勤める文系弁理士。

主な担当業務は商標管理、侵害品対策。社内知財セミナーで睡眠者が1人も出ないように試行錯誤中。良く行く中国模倣品街ではそろそろ顔が割れてそうで、覆面をかぶるべきか思案しているところ。

2019年7月の「ムゲンチザイ」イベントにご参加頂いた方々、ありがとうございました!

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