FACEBOOK社、暗号通貨「LIBRA」を発表!ドメイン・商標はどう影響する?(商標編)

   

暗号通貨専門ニュースウェブサイトであるザ・ブロックはFacebook社が「libra」に関連する商標を取得したことを5月3日に報じました。

(引用:https://www.theblockcrypto.com/2019/05/03/facebook-acquired-a-trademark-from-a-little-known-tax-company-for-its-secret-crypto-project/

  

今回は商標にフォーカスを当て、Facebook社の商標取得状況を探っていこうと思います!

(ドメイン編はこちら→https://brandtoday.media/2019/06/27/facebook-libra-domain/)

  

Facebook社、商標はこう取った!

報道によると、現権利者はJLVを名乗る合同会社となっていますが、住所はFacebook社本社のものと一致しているとのことです。早速詳細を確認してみます。

引用:(http://tmsearch.uspto.gov/bin/gate.exe?f=doc&state=4809:om7077.4.3

  

確かに、権利者の住所はFacebook社の住所と一致していました。現在の権利者であるJLV, LLCがFacebook社の関係会社であることは間違いないと言えるでしょう。

権利者の欄は、REGISTRANTとLAST LISTED OWNERが記載されていました。これは商標の権利移転が行われたことを意味しています。 詳細を確認したところ、2019年1月に譲渡が行われたようです。

  

なお、前権利者であるLIBRA SERVICES, INC.は暗号通貨の税事務所ですが、2019年3月26日に事務所名をLUKKA, INC.へ変更したことを発表しています。社内外、どちらにも大きなインパクトを与える社名変更まで行っていたとは驚きです。社名変更に伴い、ホームページで使用しているドメインもlibra.techからlukka.techに変更されています。

(引用:https://www.prnewswire.com/news-releases/blockchain-technology-company-libra-renames-as-lukka-300818485.html)

  

しっかりと譲渡が行われており、Facebook社のlibraに対する本気度が伝わってくるような気がします!

  

JLV, LLCが保有する他の商標を確認!

「LIBRA」文字商標の現権利者であるJLV, LLCが他にどのような商標を保有しているのかが気になったので、さらに調べてみました。その結果、Libraの文字と図形で構成された商標も保有していることが分かりました。

(引用:http://tmsearch.uspto.gov/bin/gate.exe?f=doc&state=4809:om7077.4.2

  

2018年6月にJLV, LLCが出願しています。

ところがこちらの商標、出願される1か月前の2018年5月にLUKKA, INCによって使用されていたことが判明しました!

(引用:https://twitter.com/lukkatech?lang=en)

  

またLUKKA, INCが、公式サイトで同商標と酷似している商標を使用していることも判明しました。

(引用:https://lukka.tech/ , http://tmsearch.uspto.gov/bin/gate.exe?f=doc&state=4806:vz2mtk.2.2)

  

文字は異なりますが、図形の部分は非常に似ているように見えます。 これは商標権侵害にあたらないのでしょうか?私なりに仮説を考えてみました!

【仮説】

・ブロックチェーンのスタートアップであるLIBRA SERVICES, INC.(現、LUKKA, INC)はなにかしらの技術をFacebook社に提供しており、2社はlibraプロジェクトにおいて協力関係である。

LUKKA, INCが暗号通貨LIBRAを管理する「リブラ・アソシエーション」を構成するメンバーであるかどうかは確認できませんでしたが、「libra」がブロックチェーン技術を用いた暗号通貨であることを大々的に公表している以上、ブロックチェーンを専門にするLUKKA, INCが関係している可能性は高いと言えるのではないでしょうか。

ただこちらの図形、Facebook社のlibra公式サイト上では見当たりませんでした。指定商品・役務の欄にはブロックチェーン、暗号通貨との文言がありますので、今後サービスで使用する可能性もあるのかもしれません。

なお、libra公式サイトにある下記図形ですが、こちらは出願を確認できませんでした。

(引用:https://libra.org/en-US/)

こちらの図形について、実は気になっていることがあるのですが……この図形ってみずがめ座のシンボルマークと似ていませんか?

↑みずがめ座のシンボルマーク

(引用:https://kw-note.com/translation/12-constellation-symbol/)

Libra=天秤座なのに、ロゴはみずがめ座!と初めて公式サイトを見たときに思ってしまいました。これって私だけかなと思っていたのですが、同じように感じた人は一定数いたようです。

  

calibraはどうなのか?

すこし話が逸れてしまいました。では、libraと同時に発表された専用デジタルウォレットであるcalibraの商標はどうでしょうか。こちらを見ていきたいと思います。

(引用:http://tmsearch.uspto.gov/bin/gate.exe?f=doc&state=4806:w52q29.13.1)

  

CALIBRAの文字商標ですが、出願日が2019年6月19日となっています。Facebook社が公式に「libra」および「calibra」を発表したのが6月18日(現地時間)ですので、出願は発表の後ということになります。万が一、第三者が先願をしていた場合、非常に厳しい事態に陥っていたことが想像できますので、リスクを考慮すると、もう少し早いタイミングでの出願がベストだったのではないかなと思います。

ここでプチ情報ですが、ちなみにあのApple社は、製品発表日に合わせて出願を完了させています。また、新製品の情報漏洩を避けるために、自国アメリカではなく、トンガやジャマイカ、トリニダード・トバゴといった国々に出願を行っているというこだわりぶり!(こちらの国々は商標のデータベースがなく、紙ベースで情報を保持しているため、第三者が出願状況を把握することが難しくなります。)

「この手法はGoogle社もApple社も使う手で、特に、Apple社は外国での出願のためにペーパーカンパニーを作って、より気付かれにくいように」戦略的に出願をしているそうです。

(引用:https://gigazine.net/news/20151001-trademark-secret/)

   

ここまでやるなんて、さすがApple社です!

さて、Facebook社に話を戻します。公式サイトで使用されている図形(下記、赤枠の図形)に関しても調べてみましたが、こちらも出願は確認できませんでした。さらに調査したところ、実はこの商標を巡って問題が勃発していることが分かりました!

(引用:https://calibra.com/

  

Facebook社、商標権侵害で訴えられる?

exciteニュースは、オンライン銀行CurrentがFacebook社の「calibra」の図形が自社の商標図形と酷似しているとツイートしたと報道しました。

「ツイートは「クレヨンが1色しか残っていなかったらこうなるよね」というコメントと、Currentとcalibraのロゴを左右に並べたもの。」

(引用:https://www.excite.co.jp/news/article/Itmedia_news_20190621069/)

(引用:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190621-35138815-cnetj-sci

  

比較してみると、うーん…確かに非常に良く似ているような…。

「Currentのロゴは2016年にデザイン企業のCharacterが作ったもの」で、calibraの図形を担当しているのも同社であることが明らかになっています。

(引用:https://www.excite.co.jp/news/article/Itmedia_news_20190621069/

  

Facebook社が「calibra」の図形を出願していない理由は、このあたりにあるのでしょうか。メディアサイトCNETは、「CurrentはFacebookに対して商標権または特許権侵害訴訟を提起する根拠があるかどうかを判断するため、法律事務所のGoodwin Procterと契約」と報じています。

(引用:https://japan.cnet.com/article/35138815/)

  

まとめ

一般的に、権利を取得していないときに生じるリスクとして、他人の権利を侵害してしまうケースが挙げられます。

予算の関係やビジネスの進捗の関係で、後手に回ることもあるかもしれませんが、侵害が認められた場合、商標権者に差止請求や損害賠償請求など法的措置を講じられ、事業は停止をしてしまいます。

加えて、こうした事態は最近であると、リピュテーションリスクまで波及することがあり、ブランドイメージの低下が生じるかもしれません。

第三者の商標を侵害しないためにも、ビジネスの優先度によって、デザイン会社との密なコミュニケーション&出願前の商標類似調査、出願は不可欠であると改めて思いました。

  

  

【LIBRA】はJLV,LCCの登録商標です。
【CALIBRA】はJLV,LCCの登録商標です。


〈ライタープロフィール〉
千葉 やよい(ちば やよい)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/ドメイン担当

2012年に入社。営業アシスタントやBRANTECT、商標を担当したのちドメイン担当に就きました。主にガイドライン作成を行っています。ドメインについては現在進行形で勉強中。趣味は漫画、アニメ鑑賞、ゲーム

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