ユニコーン企業 ”zoom”から学ぶ商標出願の時期とは?

  

クラウド型のビデオ会議サービスを提供する”zoom”がついにナスダックに上場しました。時価総額は約1,000億に達しています。

クラウド型のビデオ会議サービス市場は、skypeを主軸にgoogleハングアウト、cisco webex、Polycomなどが超強豪がひしめき、日本においては更にビデオ会議システムは大小20サービスほどあり飽和状態であると感じるのに、そんな中でのシェア拡大は驚きです。

  

zoom: https://zoom.us

  

そんな Zoom Video Communications社( 以下、Zoom社)のブランド管理(主に、商標、ドメイン)はどうなっているのでしょうか?急拡大を支える権利化が着々とできているのでしょうか?

  

ブランド管理状況は?


 

“Zoom Video Communications”を検索キーに、Global Brand Databaeで検索をしたところ、15件の商標出願がありました。”zoom”以外に”DELIVERING HAPPINESS”といったタグラインまで出願をしています。

”zoom”に関していうと、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、マドプロ(日本のみ指定)での出願です。

出典:WIPO

初めての出願はアメリカ出願になりますが、2017年8月4日です。創業が2011年で、当初よりzoomと冠したブランドをビジネスで利用していたため、相当遅い出願です。

2017年というと、Zoom社はオーストラリアやイギリスに海外拠点を立ち上げている時期です。その前年からも多くのベンチャーキャピタル投資を受けていますので、注目の的であったと想像します。そういう状況を考えると、ブランド的には結構リスキーな状況でした。

“zoom”というブランド名で検索をした場合の結果(38類に絞っています。)は下記ですが、128件の関連商標がありました。

パット見るだけで、”zoom”完全一致の商標があることが分かります。もちろん指定商品を見ての判断ですので、単純に権利化ができないというものではありませんが、よく発想される言葉であり、ブランド名の競合性は高いといえます。

出典:WIPO

今後事業を拡大する際に、先行商標との攻めぎ合いが生じる可能性は十分にありそうです。

一般的に、商標権を取得できなければ、譲渡交渉やライセンス交渉、これも良好にいかなければ、最悪ブランド変更になりますので、早めの権利化が功を奏しそうです。

また、少しドメインも見てみました。

”zoom”がホスト名のドメイン(例:zoom.us zoom.jp)を商用ドメイン(約360種類)で登録確認をしましたが、約160種類が登録されています。Zoom社が登録していることはいくつかであり、人気のあるホスト名であることが分かります。

  

ベンチャー企業の適切な権利の取得時期は?

Zoom社のケースのようにベンチャーキャピタルを受けて成長していく場合には、ベンチャー企業として、社名・ブランド名変更などの致命傷となるリスクは早めに排除しておくことが無難です。別の観点でいえば、ベンチャーキャピタルも権利面の確認を事前にしておくことが必要です。

nomyneなどのオンラインネーミング支援サービスを利用すれば、競合しそうなネーミングなのか否かを判断することもできます。また、Global Brand Databaeなどを利用することで海外の取得状況を簡易確認することも可能です。

せっかくブランドを立ち上げるなら、できるだけ事業をスムーズに進めることができる強いネーミングを選びたいですね。

では、「早めとはいつなのか?」という話しですが、ブランドを公表する前に最低限ビジネス最優先国(通常は日本か。)での出願をしておくことが安心です。

もちろんお金のかかることですので、ベンチャー企業がどこまで権利に投資をすることができるのか?という点もありますが、ブランド名変更がビジネス上クリティカルになる場合(例:代理店にブランドを使用許諾する予定)は、先ほどの原則を徹底することをお勧めします。

10年間の権利と考えると、そこまでコストは大きなものではありません。それよりもブランド名を新たに考えるコストや販促物等を擦り直すコストのほうが大変な作業となることは明白です。

事業を推進する際にコストが先行することはなるべく避けたいところですが、将来の事業の成功から逆算すると、必要経費なのかもしれません。

また、ドメインの取得時期についてですが、商標と異なり、事業分野ごとに棲み分けをすることができません。したがって、同文字列は、1TLD毎1社(人)しか取得できないため、事業の中心に据えるドメインは、商標よりも早く取得しておく必要があります。

基、Zoom社は今後どんな国に進出をしていくのでしょうか?また、データベースで動向を追っていきたいと思います。

  


〈ライタープロフィール〉
寺地 裕樹(てらち ゆうき)

GMOブライツコンサルティング株式会社
営業本部 IPソリューション部

2008年に入社後営業部の主力メンバーとして、営業数字を牽引。2012年には、当時最年少で営業部部長に就く。現在は、商標・ドメインネームに関するコンサルティングを主に行うIPS部、営業部、営業管理部を率いる営業本部副本部長として従事。趣味は、家族と週末農家、インラインスケートなど。



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