<著者:友利 昴先生> 「オリンピックVS便乗商法」から学ぶ、2020年東京オリンピックをより楽しむために(後編)

[su_table]

前編はこちらから

[/su_table]

オリンピックVS便乗商法: まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』が発売されました。普段は企業の知財担当者としての顔を持ち、著者でもおられる友利 昴先生にお話しを伺ってきました。これを読むと、2020年東京オリンピックの見方が更に面白くなりますよ!

 

客観的に自分の権利行使を顧みる


ブライツ:本書の中で、2004年にカナダのバンクーバーにあるレストラン「オリンピア」が、登録商標であるオリンピックシンボルを看板に無断使用したことについて商標権侵害の警告を受けた、という事例が紹介されていたのが印象的でした。警告を受けたレストランの店主は憔悴し、それを見た地元の支援者たちが「大会組織委員会が小さな個人商店をいじめている!」と声を上げ、メディアなどでも取り上げられた結果、世論の味方をつける形で警告を跳ねのけたという事例でしたね。

友利:この事例は、アンブッシュマーケティングというよりは、典型的な商標権侵害といわれても仕方がない事例でしたが、上手いことレストラン側が世間の同情を集めて反撃したという、珍しいケースですね(笑)。

オリンピックに限らずですが、「権利行使」にはバランス感覚が重要だと考えています。

大企業ほど、その行動は世間の注目を集めますから、権利行使をするにも、より注意深くなるべきと言われています。しかし、たとえ個人でも無茶をやれば社会の理解は得られませんから、実は企業規模はあまり関係がないとも考えます。

客観的に自分の権利行使の場面を考えたときに、
・権利行使によって不当に相手の自由を奪うことにならないか
・相手を説得できるロジックを組み立てられるか
・社会を納得させられるストーリーをつくれるか
・権利行使することが本当に利益につながるのか

など、様々な利益を較量するバランス感覚が必要となります。軽はずみに権利行使をして思いもしない反論や、SNSなどでの炎上で相手に同情が集まるケースが考えられるので、客観的に自らの権利行使を顧みる力はいままで以上に重要です。

 

全ての人にバランス感覚とセンスを


友利:本書のカバーデザインは「伝統的な藍染の市松模様」をモチーフにしていますが、当初実は、“五輪エンブレム騒動”に巻き込まれてしまった佐野研二郎氏に、「市松模様を使ってオリンピックの本のカバーデザインを!」とお願いするというアイデアがあったんです。

ブライツ:それは攻めていますね!(笑)

友利:今のデザイナーさんにお願いする際にも市松模様を意識してとリクエストし、その結果、法的にもデザイン的にも完成度を極めた素敵な装丁を用意いただけて、とても気に入っています。知財を心得ているからこそ、臆せず採用できました。ここまでは「OK」ここからは「NG」というセンスを読者の方々にも身に付けていただくことで、もっと表現を楽しめるのではと思っています。

(写真:盛り上がる友利先生とインタビュアー寺地(ブライツ))

 

2020年東京オリンピックをより楽しむために


本書の中で、フィギュアスケート金メダリストの羽生選手が普段から愛用している「くまのプーさん」のぬいぐるみ型のティッシュカバーを持ち込めなかったことや、フリースタイルスキーの金メダリストであるチェコのバレンタ選手が着用していたヘルメットが、「レッド・ブル」のロゴや商品名の記載はないものの、青と銀のツートンカラーであったため、競技中にヘルメットをガムテープでぐるぐる巻きにされたことが取り上げられていました。これらもアンブッシュマーケティングの一例です。

アンブッシュマーケティングを知り、この本を読み終わると、オリンピックを観る楽しさがまた一つ増えたような気がしてきます。

選手のウェアのロゴが隠されている!
応援席で非サポンサー企業の大きなロゴが入った洋服を着てる人たちが目立っているけれど、大丈夫かな…。
あの選手のヘルメットがガムテープでぐるぐる巻きってことは、きっと何かあったんだわ。
などといった、今までと違う知財が加わった新たな見方ができるはずです。

2020年東京オリンピックは、普段スポーツに興味を持ってないような方でも、アンブッシュマーケティングを通じてオリンピックを楽しむチャンスになるかもしれませんね。

 

過度に恐れることなく盛り上げていこう


著作権や商標権を悪用した行き過ぎた便乗商法の横行は、多額のスポンサー料を支払ってまでスポンサーになろうとする者がいなくなることに繋がり、結果、オリンピックの運営が成り立たなくなる恐れがあるため、規制の必要性を唱えることもある程度は理解できます。一方で、アンブッシュ・マーケティングの過剰な規制は、イベントの盛り上がりを損ねることになりも繋がります。

 

オリンピックやスポーツは、広く国民のものでもあるため、規制に過度に恐れることなく4年に1度のイベントを盛り上げていければと思います。また、この本を読んで知財に興味のなかった方が、ちょっと興味がでてきた!知財っておもしろい!となれば私たちも嬉しいです。

友利先生、貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍も応援しています!

[su_table]

前編はこちらから

[/su_table]

〈購入はこちらから〉

オリンピックVS便乗商法: まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘
*書店でもご購入可能です。

 

〈著者プロフィール〉
友利昴(ともり すばる)

著述家。慶応義塾大学環境情報学部卒業。1級知的財産管理技能士(コンテンツ/ブランド専門業務)。企業で法務知財業務に携わる傍ら、知的財産やブランド論を中心に著述活動や講演を行う。他の著書に『それどんな商品だよ!』(イースト・プレス)、『へんな商標?』シリーズ(発明推進協会)などがある。

https://www.facebook.com/plugins/like.php?href=https%3A%2F%2Fmedia.brightsconsulting.com%2Funcategorized%2F%25e5%258f%258b%25e5%2588%25a9-%25e6%2598%25b4%25e6%25b0%258f-2%2F&width=450&layout=standard&action=like&size=large&show_faces=true&share=true&height=80&appId

〈本記事ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。