農業を変える「アグリテック」 出願商標から見えてくる未来のサービス展開とは

アグリテック(AgriTec)とは、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語。従来の農業における課題をドローンやビックデータ、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーンなどの最新技術で解決するなど、農業に大きなイノベーションをもたらすと、注目されています。

 

ソフトバンクも投資する”無駄のない農業”


世界最大の商標データベース「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で、”Agriculture(農業)”と”Internet of Things(IoT)”を含んでいる出願商標は151件。その内、出願数の多い上位権利者はこちら。

[su_table]

順位 権利者名(国名) 事業内容(URL) 出願件数
1 PLENTY(アメリカ) AI技術を活用した垂直農法の作物工場を運営(https://www.plenty.ag/) 21
2 KNOWMADICS(アメリカ) データ分析に焦点を当てた技術サービス企業(https://www.knowmadics.com/) 11
3 STIHL(ドイツ) チェーンソーや送風機などのパワーメーカー(https://www.stihl.com/) 9
4 PANASONIC(日本) 電機メーカー(https://panasonic.jp/) 8
5 ARRIVAL(イギリス) 電気自動車のデザインと生産(https://arrival.com/) 5

[/su_table]

1位にランクインした「PLENTY」は、ソフトバンク社やアマゾン社などから約2億ドルという破格の資金調達に成功している企業で、大きな注目を集めています。そもそも、アグリテックの開発競争に拍車がかかっている背景には、世界的な経済停滞や人口増加、食糧不足が挙げられます。国連は、2050年に世界の人口は約100億人に増え、食糧生産を現在より7割以上増やす必要があると予測しています。この課題を解決するイノベーションへの期待から、農業スタートアップへの投資も拍車がかかっているのです。

同社のビジネスモデルは、人工知能を活用し、消費地に近い都市部での栽培を実現。少ない水や電気で作った新鮮な作物を早く消費者へ届けられるような仕組みです。

(画像出典:https://www.sbbit.jp/article/cont1/34235)

 

同社の出願商標の指定商品/役務には、”ビッグデータ分析、人工知能データマイニング農業生産、流通、販売、消費者動向および物流の統計、トレンドの可視化”というキーワードが並びます。コストを抑えた生産・配送の実現のみではなく、その後の販売や消費者動向などのビックデータを活用し、より効率的でより無駄のない農業を実現していく動きが垣間見れます。

 

もうひとつ注目したいのが、使用しているドメイン”plenty.ag”。「.ag」はアンティグア・バーブーダに割り当てられている㏄TLD(国別コードトップレベルドメイン)です。Agriculture(農業)の頭文字を意識したドメインを使用していることが伺えます。.agをこのような趣旨で利用しているサイトは初めて見ましたが、農業関連のサイトで今後このような活用が増えるかもしれません。

 

農業機械にレンジエクステンダー搭載


5位にランクインした「ARRIVAL」は、2015年設立の電気自動車(EV)専門のイギリスのベンチャー企業。

(画像出典:https://arrival.com/)

 

同社の出願商標の指定商品/役務には、”電気自動車のためのレンジエクステンダー:農業および農業機械”というキーワードが確認できます。

現在の電気自動車(EV)は1回の充電での航続距離が短い、という課題を抱えています。環境に配慮を払える電気自動車(EV)のメリットを保ちながらも、航続距離を伸ばすために開発されたのが、先ほどの指定商品/役務に記載されていた「レンジエクステンダー」。

電気自動車(EV)とレンジエクステンダーはどちらも、充電された電気のみで走行することをメインとしていますが、電気自動車(EV)は電池が切れたら走行できなくなってしまうのに対し、レンジエクステンダーはバッテリーの電力が低下した際、ガソリンを使い専用エンジンで発電し走行を続けることができます。電気自動車の可能性を大きく広げたとと言われるレンジエクステンダーは、今後更に増えていくことが予想されています。

[su_table]

エンジン搭載 モーター搭載 長距離移動
レンジエクステンダー
電気自動車(EV) ×

[/su_table]

 

また、「アグリテック」で目指す姿のひとつに「自動走行トラクターを開発と市販化」が掲げられており、農業機械メーカーなどを筆頭に開発が進められています。2018年5月9日、ARRIVAL社は、1回の充電で長距離の走行が可能となる配達用の小型電気自動車(EV)を公開したばかり。現時点で同社が農業機械に参入する情報は確認できませんが、出願商標からは、小型電気自動車(EV)開発の技術を用いて、農業機械にレンジエクステンダーを搭載し、「アグリテック」へ参入をしていく展開が見えるのではないでしょうか。

 

世界が注目し、期待をする「アグリテック」。今後、様々な業種が「アグリテック」の更なる躍進へ向け、技術開発やサービス展開をしていく姿が想像できた気がします。

 

https://www.facebook.com/plugins/like.php?href=https%3A%2F%2Fmedia.brightsconsulting.com%2Funcategorized%2F%25e8%25be%25b2%25e6%25a5%25ad%25e3%2582%2592%25e5%25a4%2589%25e3%2581%2588%25e3%2582%258b%25e3%2580%258c%25e3%2582%25a2%25e3%2582%25b0%25e3%2583%25aa%25e3%2583%2586%25e3%2583%2583%25e3%2582%25af%25e3%2580%258d%2F&width=450&layout=standard&action=like&size=large&show_faces=true&share=true&height=80&appId

〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。