出願商標から垣間見れる、「顔認識技術」に力を入れるある企業とは

デジカメでの撮影時に顔認識しピントを当てたり、スマートフォンのロック解除に顔認識を使うなど、私たちの生活に身近になってきた「顔認識技術」。また、2018年7月、米Amazonの顔認識技術”Amazon Rekognition”で米連邦議会議員の顔写真を犯罪者データと照合さたところ、28人の議員がマッチしたと発表されました。この発表で、法執行機関がAmazon Rekognitionを使えば、誤った人物特定に基づいて罪のない市民の家宅捜索が行われたりするかもしれないという懸念報じられ、今、多方面で「顔認識技術」が話題となっています。

Amazon Rekognitionの出願商標


世界最大の商標データベースGlobalBrandDatabase(以下GDB)で、商標名に”Rekognition”を含むAmazon社からの出願商標は16件確認できます。出願区分と指定商品・役務はこちら。

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区分 指定商品・役務(英語) 指定商品・役務(日本語)
9 Computer software for use in visual computing, namely, image analysis and identification; computer software for use in developing other software; computer software for image processing; computer software development tools; software for optical character recognition; computer software for performing image analysis including text, face, object, scenery, event, or animal recognition; computer software for performing image analysis including content classification and categorization ビジュアルコンピューティング、すなわち画像解析および識別に使用するコンピュータソフトウェア。他のソフトウェアを開発するためのコンピュータソフトウェア。画像処理のためのコンピュータソフトウェア;コンピュータソフトウェア開発ツール;光学式文字認識ソフトウェア。テキスト、顔、オブジェクト、風景、イベント、または動物の認識を含む画像解析を実行するためのコンピュータソフトウェア;コンテンツの分類および分類を含む画像解析を実行するコンピュータソフトウェア
35 Compilation of information into computer databases; database management for others of a database comprised of data collected through video and image recognition; collection and compilation of information into computer databases in the field of image and video contents; management and compilation of computerized databases; management and compilation of searchable databases for images and videos. コンピュータデータベースへの情報の編集。ビデオおよび画像認識によって収集されたデータからなるデータベースの他のデータベース管理。画像及びビデオコンテンツの分野におけるコンピュータデータベースへの情報の収集及び編集;コンピュータ化されたデータベースの管理と編集。画像と動画のための検索可能なデータベースの管理と編集。
42 Platform as a service (PaaS) featuring non-downloadable software development tools and software for use in visual computing in the nature of image analysis and identification, developing other software and image processing; computer services, ダウンロード可能なソフトウェア開発ツールと画像解析と識別のためのビジュアルコンピューティングに使用するソフトウェア、その他のソフトウェアと画像処理の開発を特徴とするサービスとしてのプラットフォーム(PaaS)コンピュータサービス

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同社が、”Image analysis(画像解析)”というワードを使用した出願を行っていることがわかります。同様の製品やサービスを出願商標から探すべく、”Image analysis”を指定商品・役務に指定した出願商標を検索してみましょう。その結果、出願件数の多い権利者TOP5は下記通りでした。

顔認識技術に力を入れるある企業とは


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順位 権利者 出願件数
1 ライカ バイオシステムズ(病理学市場に臨床診断を開発し提供するドイツの医療機器企業) 31
2 Amazonテクノロジーズ(Amazon社のグループ会社) 24
3 CAPSOVISION(アメリカの医療機器のイノベーター) 21
4 ライカ マイクロシステムズ(ドイツのカメラ製品開発・販売企業 18
5 TUSIMPLE(自律型トラック輸送テクノロジの開発を手がける中国のスタートアップ企業) 17
5 マルバーン・パナリティカル(イギリスの粒子計測・X線分析機器のリーティングカンパニー) 17
5 Sentient Technologies(アメリカの人工知能(AI)ベースのテクノロジー企業) 17

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1位と4位に、ライカグループである2社がランクインしました。世界で最も多く愛されているカメラと言われる「ライカ」。華為(ファーウェイ)社が市場シェア拡大を狙い資金を投じているのがカメラであり、最新のスマホに搭載されているカメラがライカ社の製品で、大注目のスマホとして各種メディアに取り上げられています。ただ、ライカ社が、”Image analysis”を指定した出願商標は、同社主力製品のひとつである「実態顕微鏡」の画像解析関連の出願が主であり、顕微鏡および科学機器分野における世界的なリーディングメーカーのひとつであることが伺えました。その他、出願商標からも「顔認識技術」関連と考えられる出願商標は特段確認できず、”Image analysis”はAmazon社が顔認識を表現する独自のワードであることが考えられました。

 

一般的に”顔認識”は英語で”face recognition”と表現され、世界的にも注目を集めるNEC社が誇る顔認識システム「NeoFace」の出願商標も、指定商品に”face recognition”が記されていました。続いて、”face recognition”を指定商品・役務に指定した出願商標を検索した結果、219件の出願商標が確認できました。その内、出願件数の多い権利者1位は華為(ファーウェイ)社で17件でした。また、同社の最新の出願商標の指定商品・役務は、下記通り。

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スマートフォン;スマートウォッチ;スマートバンド;スマートブレスレット;スマリングズ;スマートグラス;ウェアラブルスマートフォン。
指紋、手のひらのプリント又は手のプリントの検証のための装置;顔認識装置;音声または画像の記録、伝送または再生のための装置。

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この指定商品から、スマートフォンに留まらず、今後幅広い製品において顔認識の製品展開を視野に入れていることが予測できるのではないでしょうか。今回、2種類のワードで顔認識の出願商標を検索してみましたが、両者とも華為(ファーウェイ)社に関わる出願商標が確認でき、今後の同社の顔認識技術における展開が期待できる結果でした。

 

期待される顔認識技術


パソコンのアクセス認証やビルの入退場管理、空港の出入国管理など、既に導入が進んでいる顔認識技術。特に、顔認識の普及に積極的なのが中国だと言います。実際に中国では、Alibabaグループのファーストフード店で、顔認識技術により決済が完了するサービス提供が開始されており、近い未来、財布だけでなくスマートフォンも不要になると言われています。顔認識は今後、ITデバイスのセキュリティ向上に有力なソリューションになると期待されています。今後、顔認識が、幅広い業界におけるビジネス展開をしていくことが期待されます。

 

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〈ライタープロフィール〉
中山 礼美(なかやま れいみ)

GMOブライツコンサルティング株式会社
IPソリューション部/メディア担当
consul@brights.jp

2011年に入社後営業サポート業務に携わり、2017年5月よりメディア担当者として、商標やドメインネームの業務を学びながら記事を発信。様々な業界のトレンドを意識した記事作りの難しさに奮闘中。趣味は食べるコト、プチプラでお得感の高いものを探すこと。

 

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