世界的人気の裏に隠された、過去の経験から築かれた商標管理方法

米国のWWE(World Wrestling Entertainment Inc.)は、アメリカ合衆国のプロレス団体及び興行会社。2018年2月8日、2017年第4四半期(10~12月期)の売上高が2億1160万ドルとなり、前年比9%増となったことを公表しました。また、運営する有料インターネットテレビWWEネットワーク(WWE Network)加入者が210万人に到達したこともわかり、好調な業績が伺えます。

世界最大の商標データベース「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で、”sports”を指定商品として含んだ商標を最も多くしている団体がこのWWE。スポーツ関連の商標だけでなく、WWEの出願商標は、3,210件にも及びます。この件数は非常に多い件数です。

WWEはレスラー同士の確執や結束などの人間関係が、試合のストーリーとして前面に押し出されています。そのキャラクターや関係性が常に変動していき、連続ドラマのようなストーリー展開が魅力のひとつ。WWEの世界的人気の裏にある、商標管理方法をご紹介いたします。

エンタテイメントのプロ集団

2016年2月、日本のプロレスラーであった中邑真輔選手は、WWEと契約を交わし入団しました。「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で”SHINSUKE NAKAMURA”の商標は9件存在しており、出願で一番古いものは同年4月8日。契約の凡そ1か月後に出願をしています。

世界中に非常に多くのファンがいるWWEは、新しい商標申請の動向についても常に注目がされています。WWEと未契約である有名選手名の出願が行われると、「WWEと契約が決まったのか?」と話題になるほど。

中邑真輔選手の入団会見は、ファンに事前予告無しでのサプライズで行った形であり、商標出願時期も契約発表後にするなどの出願時期の調整をしていることから、ファンにサプライズを提供するべく、マネジメントを徹底している、世界最大のエンタテイメントのプロ集団であることが感じられます。

リングネームの登録

中邑真輔選手以外にもデータベース上には多くのリングネームやキャラ名の出願商標が確認できます。このようなリングネームの登録は、WWEでのみの使用を可能にするための契約であり、一部の例外選手以外のほぼ全ての選手のリングネームの登録管理しています。実際過去に、当時の主力選手2名が競合団体へ電撃的に移籍した事件がありましたが、WWEが登録していたリングネームだったため、移籍後はそのネーミングを使用することはできず、本名で活躍することになりました。全米で知られたリングネームが使用できなくなった選手は相当痛い思いをしたことが想像できます。

必殺技の登録

WWEデビューした中邑真輔選手は、今まで使用していた必殺技の”ボマイェ(Bomaye)”の名称を “キンシャサ・ニー・ストライク” に変更しました。これは、米国の衣類メーカーがすでに “Bomaye” を被服等が対象となる第25類で商標登録していたためだと考えられます。当初WWE.comに掲載されていた中邑真輔選手のプロフィールには、必殺技として “Bomaye” と記載されていましたが、それはすぐに削除され、デビュー戦後に “Kinshasa knee strike” に変更されました。

「F5(エフファイブ)」という名称はプロレス技の一種で、WWEが登録している商標のひとつ。そのため、WWE以外のプロレス団体は「F5」の名前を使用することができず、バーディクト(Verdict)と呼んでその技を表現します。現時点で、中邑選手の必殺技である“キンシャサ・ニー・ストライク” の出願商標は確認できませんが、WWEは必殺技の登録も積極的に行うため、今後、人気や活躍が高まれば出願する可能性が考えられます。

安全に大きな収入を確保

商標を出願する際には、その商標を使用する商品や役務(サービス)を指定するのですが、その指定された商品や役務が属する業種も合わせて指定します。 この業種のことを区分といいます。中邑真輔”SHINSUKE NAKAMURA”の商標を、区分別に見た出願件数はこちら。

ネット上でのグッズ販売サイトでは、人気レスラーのリングネームが商品に付された人形や、Tシャツ、キーホルダー、をはじめとする多種多様のグッズ販売をしていることが確認できます。WWEはネットの広告収入が年間50億円、選手グッズなどのロイヤリティ収入も約25億円ほどあると言われており、多種多様のグッズ展開をするための幅広い権利取得であることが伺えます。また全ての出願を確認すると、全45区分中38区分の権利化をしており、非常に広い範囲での権利化をしていることがわかります。

過去の経験から築かれた商標管理方法

WWEはもともと、WWF(英: World Wrestling Federation)という名称でしたが、まったく同じ略称の 「WWF(World Wide Fund For Nature、世界自然保護基金)」に名称の改変を求める訴訟を起こされて敗訴したことでWWEに改めた過去を持ちます。
この苦い経験を活かし、同じようなことが起きぬようすべてのネーミングについて商標登録するようになったのかもしれません。業績好調の裏には、過去の経験を活かした、安全な商標管理やマネジメント手法が隠されているではないでしょうか。

また、商標出願の時期についても慎重な戦略を立てている点については、アップル社やダイソン社と同様の戦略であり、ファンを驚かせたいというこだわりの気持ちであることが伺えました。

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