人気「料理動画」4メディアから学ぶ 知財担当者が知っておきたいドメインネームや商標の重要性

「インターネットは動画の時代」であり、いまや「料理動画」全盛の時代が到来しています。

日本を代表する料理動画メディア「DELISH KITCHEN」はSNSのファン数、アプリダウンロード数ともにNo.1。数々の動画は美しく、ユーザー目線でつくられるテンポのよい演出で「簡単に作れそう」と思わせる約1分間の構成になっている事が人気の理由だと言います。
日本最大の料理レシピサービスを展開するクックパッド株式会社も、2018年1月より『cookpad storeTV』にて、料理動画メディアのトライアル配信を開始しており、競争も激化していきそうです。

これら人気「料理動画」4メディアに焦点をあて、知財担当者が知っておきたいドメインネームや商標の重要性をご紹介させていただきます。

[su_heading size=”15″]1.ありふれた商標は登録できないことの理解[/su_heading]

DELISH KITCHEN

冒頭ご紹介した「DELISH KITCHEN」を運営する株式会社エブリーが、国内に出願している商標は6件。

その内、「DELISH KITCHEN」商標は、DELISH KITCHEN(第5949470号)1件で、区分は9類,16類,35類,41類,42類,43類,44類,45類と多岐にわたる幅広い権利取得がされていましたが、一方でロゴの出願は行われていませんでした。「DELISH KITCHEN」商標は「文字商標」の出願のみで権利取得に不足はないでしょうか。

DELISH KITCHENはinstagramでフォロワー1.1百万人もの人気のアカウント。”delishkitchen.tv”のユーザー名で動画配信を行っています。因みに、「DELISH KITCHEN」は[su_highlight background=”#cdf0f1″]delishkitchen.tv[/su_highlight]のドメイン名を使用したサイト運営をしています。

画像出典:https://www.instagram.com/delishkitchen.tv/?hl=ja

instagram内”DELISH KITCHEN”で検索を行ったところ、公式アカウントと同様のロゴを使用しているものや、ネーミングが一致しているアカウントが見受けられました。

画像出典:https://www.instagram.com/delilovesh/?hl=ja(左)、https://www.instagram.com/delilovesh/?hl=ja(右)

[su_box title=”登録できない商標の理解とロゴ登録の重要性”]

「DELISH KITCHEN」のロゴの場合、あまりユニークなデザインではないため登録の可能性が低いのかもしれません。日本の制度では以下のような商標の登録は認められません。

  1. 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
  2. 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
  3. 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

参考:https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_gaiyou/mitoroku.htm

「DELISH KITCHEN」のロゴの場合、簡単過ぎる文字、図形(標章)であると判断されたら、登録できません。このように、制度上登録自体ができないロゴがあることを理解しておく必要があります。

また、「DELISH KITCHEN」がデザイン性が高く識別力の高いロゴである場合は、早い段階での出願が必要となります。日本の制度は先願主義のため、商標登録は先に使用した者に対してではなく、先に出願した者にその商標に対する権利があるとされます。そのため、商標登録せずに使用していた場合、よく似たアイコンを使用している他社が訴えてくる場合があるのです。

本ロゴの場合、登録の可能性を確認するためにも、先行類似商標があるか否かの調査を行うことがベストです。そして、登録が可能な場合は容易に権利行使が可能になるためのロゴの登録を行うことを推奨いたします。

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(こちらもご参照ください:文字商標と図形商標どちらで商標出願をすればいいの?記事はこちら)

 

 

[su_heading size=”15″]2.ブランド名を含むドメインネーム把握の重要性[/su_heading]

kurashiru

「世界で1番、料理がわかりやすい」をテーマに、レシピ動画を紹介する日本最大の料理動画サイトで、”[su_highlight background=”#cdf0f1″]kurashiru.com[/su_highlight]”というドメイン名でサイト運営をしています。画像出典:https://www.kurashiru.com/

 

一方下記は、”kurashiru.net”というサイト。ドメイン名のホスト名に”kurashiru”を使用しているサイトで、公式サイトで使用しているロゴとは違うものの、”kurashiru”というロゴを使用した料理にまつわるサイト公開がされています。

ドメイン名の権利者情報を確認することができるWHOISで権利者の確認を行うと、個人の方が権利者として登録がされていました。

画像出典:kurashiru.net

こちらのサイトは公式サイトと非常に酷似しているわけではありませんが、消費者によっては混同が起こる可能性があります。このようなサイトが運営されていることの把握及び今後定期的な監視が必要なサイトに該当します。

[su_box title=”ブランド名を含む文字列を使用するドメイン名の重要性”]

会社に関係がない第三者が企業のブランドを含むドメインネームを取得し、あたかもオフィシャルサイトのようなウェブを立ち上げる。このような事例が発生していることは珍しくはありません。

ブランド名を含むドメインの取得状況や、サイト内容の把握や監視の重要性がお分かりいただけるのではないでしょうか。

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[su_heading size=”15″]3.適切な事業範囲の権利化の重要性[/su_heading]

mogoo

InstagramやFacebookで人気の料理動画「mogoo(もぐー)」は、月間1,000万人に閲覧される料理レシピ動画アプリです。”[su_highlight background=”#cdf0f1″]mogoo.tv[/su_highlight]”というドメイン名でサイト運営をしています。

画像出典:http://mogoo.tv/

「mogoo」をを運営する株式会社スタートアウツが国内に出願している商標は1件。

画像出典:J-platpat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)

料理に関するコンテストの企画・運営及び開催等を対象とし、41類での取得がされています。アプリ出願に関わる代表的な区分は下記通りです。具体的なアプリの内容により関連する区分が異なりますが、「mogoo」の出願区分は41類のみでは事業範囲に満たしていないことがわかります。

アプリに関する必要区分一覧

.tg {border-collapse:collapse;border-spacing:0;}
.tg td{padding:10px 5px;border-style:solid;border-width:1px;overflow:hidden;word-break:normal;}
.tg th{font-weight:normal;padding:10px 5px;border-style:solid;border-width:1px;overflow:hidden;word-break:normal;}
.tg .tg-baqh{text-align:center;vertical-align:top}
.tg .tg-amwm{font-weight:bold;text-align:center;vertical-align:top}

区分 対象 代表例
9 パソコン、ダウンロードアプリなどの電子コンテンツが ダウンロードアプリ
35 情報提供系サービス Hot Pepperや広告関係全般
38 通信技術を用いたサービス UberやIP電話、メッセンジャー
39 予約系のサービス じゃらん等
41 電子出版やコンテンツ配信 オンラインゲームや配信するサービス自体
42 ソフトウェアの開発やアプリや機能を提供しているもの SNSやプラットフォーム系のサービスやWEBの受託開発
45 ニュース関連のサービス供 SNSサービス
※各国毎に区分の揺れが多少あるため出願時の確認が必要です。

[su_box title=”アプリ関連区分登録の重要性”]

アプリやゲームなど、流行り廃りの早い事業については、商標を取得していないケースも最近では見受けられます。そうした場合のリスクとしては、下記の通りです。

■ 貴社ブランドの使用停止
■ 損害賠償請求

コスト、リスクとの兼ね合いかと思いますが、商標取得をしない場合には、最低限先行類似商標があるか否かの調査をすることをお勧めします。

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[su_heading size=”15″]4.展開予定の権利範囲[/su_heading]

cookpad

日本最大の料理レシピサービス。日本国内向けサイトでは”[su_highlight background=”#cdf0f1″]cookpad.com[/su_highlight]”を使用した運営を行っています。

クックパッド株式会社は世界各国のドメイン名を取得し、各国で使用される現地語でのサイト展開を積極的に行っており、世界的に見ても認知度の高いサイトであるのではないでしょうか。

画像出典:https://info.cookpad.com/service_product/overseas

国外で人気が出た際、気にするべき国は中国です。

中国で人気ECサイト、タオバオで”cookpad”を検索した結果、cookpadのロゴがパッケージに記載された料理関連のグッズが複数確認できました。しかしながら正規品か否かの判断が難しい状態。

次に気になるのは中国での商標出願状況です。中国の商標データベースで”cookpad”を含む出願は20件確認できました。その内9件赤枠内で囲んだ出願は第三者による出願でした。

画像出典:中国データベース(http://wsjs.saic.gov.cn/txnS02.do?locale=zh_CN)

上記出願の中には、料理関連商品区分である、21類や11類での出願があることが気になる点です。

画像出典:中国データベース(http://wsjs.saic.gov.cn/txnS02.do?locale=zh_CN)

国内でのcookpadグッズの販売状況を確認したところ、

クックパッド株式会社は、月間利用者5600万人超に向けて、毎日の料理が楽しみになるキッチン用品やクックパッドオリジナル商品などを販売するオンラインショップ、「クックパッドストア」(http://cookpad-store.jp/)を2015年9月9日より開始いたします。

とあるものの、該当サイトは現在閲覧ができない状態になっており、公式なグッズ販売状況を探すことはできませんでした。

 

[su_box title=”展開予定や事業に関連する区分の重要性”]

クックパッド社が、今後料理グッズ販売を予定しているかはわかりません。しかし、いざ販売をしようとなった際に第三者に商標権を取得されてしまった場合、商標を取り戻す際には多額の買収費用が発生したり、販売予定の製品名を変更しなければならない等が発生してしまうのです。

料理動画事業が、料理グッズ販売をすることは考えられやすい事業展開ではないでしょうか。国内や特に中国においては、ビジネス展開しているか否かに関わらず、早めの段階で商標出願を検討する必要があります。

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事業により異なる重要TLD

また、ご紹介した4サイトの内、2つがドメイン名に「.tv」を利用していました(delishkitchen.tv/mogoo.tv)。

.tv(ツバル)ドメインは、テレビ(TV)を連想させる単語が含まれているため、テレビ局を始め、多くの映像関連サイトで使われている人気の高いTLDです。料理動画サイトにおいて重要なTLDであることが伺え、取得検討及び監視の必要なドメインであることが裏付けられます。

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